第五章 奇節 Ⅰ
こんにちは。
今回もよろしくお願いします。
~第五章 奇節 Ⅰ~
「俺達はさ、普通の人が羨むような力を持ってる。その力をさ、俺はみんなの為に使いたい。四季はどう使いたいんだよ、その力を?」
四季はゆっくりと振返った・・・・
リオルは歯を喰いしばり第二防衛線から後退していた。リビイは目一杯に涙を溜め、炎に包まれる防衛線を見つめる。
桜家は半身を焼かれ少し離れてビルの中に姿を隠していた。冷たい壁にそっと背中をつけ煙草に火をつけた。桜家の魔眼を持ってしてもフォークトを止めることは出来なかった。それは桜家には炎そのものに、ダメージを与える手段を持っていなかったからだ。桜家の持つあらゆる武器も炎には通用しなかった。彼の持つ魔眼は相手の体感時間を操作する。いかに不意をつこうと、彼の攻撃は通用しなかった。
「もう武器はこれだけか」
桜家は小さな拳銃と一本の小さなナイフを見つめた。桜家は短くなる煙草を見つめる・・
「咲也、何していたんだよ?」
透き通った声が屋上に響いた、声の主は華奢な体に端正な顔つきをした青年だった。桜家は屋上の物置の上から顔を出した。
「ちょっと眠くてね、あの講師居眠りすると五月蝿いから」
桜家は眠そうに目をこすり、青年を見つめる。
「あんまりサボると卒業、出来なくなってもしらないぜ」
青年は桜家のいた物置の上へ軽く飛び乗る。屋上にある物置からの眺めは整備されたグランドと並ぶ木々達の緑がよく映えていて美しかった。二人を爽やかな風が突き抜ける・・
「確かに教室より全然いいや」
「そうでしょ」
桜家は煙草を取り出し火をつけようした。すると煙草が二つに切れ、地面へと落ちる。
「俺の前じゃ、吸わない約束だろ。てか未成年!!」
青年は桜家の持っていた煙草を屋上から投げ捨てた。桜家はその煙草を寂しそうに目で追う。
「勘弁してよね~」
青年は物置から飛び降りた。
「俺、これからバイトだから。明日はちゃんと授業出ろよ」
青年は手を振り屋上から姿を消す。桜家は制服に隠してあった煙草に火をつけた・・・
「本当に退屈だ」私はより強い相手と戦う為に士官学校に入った。しかし、ここは実戦よりも授業、授業、授業と何も面白くない。四季は気だるそうに士官学校の校舎を出た。すると目の前に小さな箱が落ちてきた。四季はそれを拾い上げ見つめた。
「煙草か・・・」
四季は空を見上げ、屋上の方へ目をやった。
「箱美芽さんよ、先輩を潰して天下を取ったら今度は煙草ですか?」
四季の前に数人の男達が現れる。彼らは四季の二つ上の先輩にあたり、入学してすぐに四季に声をかけひねり潰された。それ以来、四季は士官学校では最も有名は一年生になった。
「上から落ちて来たの」
四季は煙草の箱を投げ捨て、男達の間を通り抜けようとした。すると男の一人が四季の肩を掴んだ。
「待てよ」
四季は男を睨みつめる。
「手加減しませんよ」
四季は男の腕を掴み、投げ飛ばそうとする。そこへ一人の青年が現れ、男へ跳び蹴りを放った。
「先輩方、女の子を複数で囲むなんて男のやることじゃありませんよ」
四季は青年の姿をぼーっと眺めていた。男達の一人が何かの能力を使おうとした時、青年は動いた。一瞬で決着はついた、青年の舞うような動きに四季は目を奪われた。青年は軽く息を吐くと四季を見た。
「危なかったね、礼におよばないよ。じゃね」
青年はそれだけ告げて四季の横を通り過ぎようとする。四季は楽しそうに笑った。
「待てよ」
青年は立ち止まり振返った。すると四季の鞄が青年の顔を目掛けて飛んでくる。青年はそれをかわす、続けて四季は拳を振るう。その拳を青年が受け止める。
「俺、何かしちゃった?」
四季は笑った。
「あぁ」
「何をしたか分からないけど、謝るよ・・・」
四季は青年に向けて蹴りを放つ、青年はその蹴りを受け止める。
「俺、急いでるんだけど」
「じゃぁ、私を倒すか倒されるのが一番早いと思うよ」
青年は苦笑いをした。
「倒されちゃうと、バイト行けなくなっちゃからさ」
青年は体を回転させ攻撃を払い、四季へ拳を放った。四季はそれをかわす。
「時間ないから手加減しないよ」
「手加減する余裕があるといいな・・・」
二人の拳が交わる・・・・・
四季は地面から真っ青な空を見上げていた。
「負けたのか・・・・・」
四季この時、初めて負けた。人生初の敗北を味わった。
「君は箱美芽さんだね」
四季の視界に制服を着たおっさんが現れた。
「彼の名前は茅離 楓」
~つづく~
最後まで読んで頂きありがとうございます。
少し編集しつつ、物語を練り直しているので今週はあと一回ほどしか投稿出来ないかもしれません・・
暫しお待ちください。すいません。