第五章 Encounter Ⅱ
こんにちは。
今回は全く戦闘がないだと・・・・
今回もよろしくお願いします。
~第五章 Encounter‐Ⅱ~
「母さん・・・・、待って・・・」
目を覚ますと僕は真っ白なベッドに寝ていた、部屋には窓から日の光が差し込んでいた。部屋は木造で何だか不思議な香りがする、僕はゆっくりとベッドを降りた。
「僕は確か・・・・」
頭の中で記憶を呼び戻す、ぼんやりとした意識の中記憶が戻る。
「隊長!!!」
僕は部屋の扉を開けた。扉の外は広いリビングが広がっていた。大きな窓から光を受け、部屋は明るく、窓の外には真っ白な浜辺と青い海が広がっていた。
「ここは・・・、僕は死んだのか?」
リビングにあるカウンターから笑い声が聞こえた。カウンターにはグラスを持った女性がいた。女性は長くふわふわとした黒い髪に少し焼けた肌をしていた。
「ここは残念ながら天国じゃないの」
女性はクスクスと笑っている。僕は自分の置かれている状態を理解しようと必死に頭を働かせていた。
「フロルくん」
カウンターにいた女性が僕の名前を呼んだ。
「ちょっと来てくれる?」
女性は僕に向かって手招きをしている、本能的に彼女が敵でないことは分かった。
「ほら、はやく」
僕は言われるがまま彼女に近づいた。彼女はカウンターにグラスを5つ並べ。
「氷、作ってくれるかしら」
僕は彼女の名前も何も知らない、でも彼女は僕の名前も能力すらも知っていた・・・。僕は言われるがまま氷を造りグラスの中へと入れた。
「綺麗な氷、ありがとう」
彼女は優しく笑い、グラスへと飲み物を注ぎ始めた。すると外から人の声が聞こえる、声はだんだんと大きくなり家の中へと響き始めた。
「ただいま、今日はとびきりいい魚とれたよ」
声の主は男だった、不思議な形をした帽子を被り、釣竿を型にかけていた。男は僕を見ると嬉しそうに笑った。
「ようやく起きたかい、調子はどうだい?」
「あっ・・・、大丈夫です・・・」
僕は何となく答えを返してしまった。すると男の影から二人の女性が現れた。
「箱美芽隊長!!」
僕は隊長の姿を見てとっさに声が出た。そして隣にはあの女いた。
「隊長、何でその女と!!!これはどういうことですか?」
隊長は特に答えることもなく、リビングの木製の椅子へ腰かけた。僕はその姿を目で追った・・・・突然、頬に冷たいものが触れる。とっさに振返るとカウンターにいた女性がグラスを持っていた。
「どうぞ、とりあえず座ったら?私達が敵じゃないことは何となく分かるよね」
僕はゆっくりと頷きグラスを受け取った。
ヴァイパーは新しくなった手を動かし感覚を確かめていた。愛は医務室の壁に寄りかかり腕を組んで黙り込んでいた。
「おい、ハウンズの、腕はこの通りだ。それに先に仕掛けたのは俺だ、もう戻れ」
「すまなかった」
愛はヴァイパーのことを見て呟き医務室を出て行く。ヴァイパーはその姿を見て微かに笑った。ヴァイパーは近くにあったコンピュータの電源を入れ、エグルガルムのデータベースを開いた。
[包刃 愛]
ハウンズ第二小隊に所属し、Bクラス以上の質量操作者。自身の能力よりも刀を使った戦闘力に秀でており、能力の応用性も高い。
「包刃ねー、使えるね」
ヴァイパーは通信機を取り出した。
「ノーク、俺だけどMMAの装備全部使えるようにしてくれ、試験段階の物もすべてだ」
「一号機ほどの重装備は出来ないわ、長時間稼働用のバッテリーも積まなくちゃいけないから・・・・」
「大丈夫だ、考えがある。二時間後のアステリオスとのミーティングは俺も出る。あとミラとベガも参加させてくれ、あと捕まったらバースの奴も頼む」
通信機からノークのため息が聞こえる。
「報告書くらい読んで・・・・・」
ヴァイパーは医務室にいる看護士を見た、看護士は「バースさんは行方不明です」と書かれた紙をヴァイパーへ見せた。
「ノーク、バースの奴が見当たらないと思ったら行方不明って。まぁあいつの能力じゃ大した戦力にならないが、お前の旦那は何やっているんだか。とりあえず二時間後に作戦室で、ミラやベガも呼んでおいてくれ」
「私はシロエ、よろしくね」
僕は隊長の隣の椅子へ腰掛けてカウンターにいた女の話を聞き始めていた。
「どこから話したらいいかな?とりあえず、どの程度私達のことを知っているかだけど・・・」
シロエは首をかしげあの女の方を見た。あの女、それはアーニュ・ワーリュヌス。僕達はこの女に負けてここにいる・・・・
「私は何も話してないし、説明もしない」
あの女は椅子の上に体育座りで座り、ストローで飲み物を飲んでいる。その姿からは決してあの時の姿は想像できない。
「そうよね、四季さんも話す気なさそうだし、イータに関しては・・」
シロエが帽子を被った男を見ると男は帽子で顔を隠した。
「私が説明するわ」
シロエは飲み物を軽く飲み話を始めた。
「私達は名も無き者」
フロルはきょとんとした顔でシロエを見つめていた。
「名も無き者を知らない?」
「ナンバーズ?」
「普通は知らないわよね。名も無き者とはこの世界の管理の為に造られた人?いや人とは言えないかしら、まあその辺りのことはどうでもいいわ」
フロルは突然のことに訳が分からなくなっていた。
「私も最初は信じられなかった、でもこいつらは人を超えた存在だ」
四季がフロルを助けるように一言だけ言った。
「まぁ、すごい能力者程度に思ってくれればいいわ。ちなみに私の力は未来を見ることが出来るの」
「待ってください、まずあなた達がSクラス以上の能力者だというのは分かりました。僕もそこにいる人の力は体験しています。でも未来を見るって、本当にそんな力が」
シロエはフロルを一瞬するどい目で見た。
「あなたが知りたいなら、どう死ぬかも私は分かっている」
フロルはシロエの言っていることが事実であるとすぐに理解した。
「フロルくん、僕等は世界の管理、いや維持の為に創られた者達だ。でも今は何もしていない、僕達はもうこの世界に興味がないからね」
帽子を被った男が口を開いた。その言葉の言い方自体が軽く、彼の言ったことは言葉通りの意味であることがよく分かった。
「それで僕等二人はこの小さな島でひっそりと暮らしていた訳。そうしたらラム、いや君達はアーニュって呼んでいたね。アーニュが何十年ぶりかに顔を出したかと思えば、君達を連れてきたのさ」
フロルはアーニュを見た、アーニュは椅子に座ったまま寝てしまっていた。
「ようするに私達はこいつらに助けられたってことだよ」
四季はそう言うと椅子を立ち、部屋を出で行った。僕は何となく隊長の機嫌が悪い理由を分かった。きっと隊長は自身の死を覚悟していた、自分の死に場所だとあの場を受け入れていたのだろう。
「今日の夕食は宴会だ、もう少し食材を採ってくる」
帽子を被った男もグラスを空にし、部屋を出で行く。僕はただ椅子に座り二人を見送る。
「フロルくん、ちょっとおいで」
僕はシロエさんの後を追って二階へと上がった。家は木造でたくさんの窓から不思議な香りと日の光を取り込んでいた。とても優しい家だった、時の流れがゆっくり温かく自分の今までいた世界とは別ものだった。
「きれいだ・・・・・」
二階には大きなバルコニーがあった。目の前に広がる真っ白な浜辺、青くどこまでも続く海、僕は今までにこんなに綺麗な世界を見たことがなかった。
「世界はこんなにも綺麗なの、でも多くの人達はそれに気付かず生きていく。それってとても悲しいことじゃないかしら?」
シロエさんが僕の頭を優しく引き寄せた。
「え・・・・」
「いいの」
僕は言われるがままシロエさんに抱きしめられた、とても優しくいい匂いが彼女からはする。
「私の力は未来を見ることが出来る。でもね、その人の今までに歩んできた道も見えてしまうの。今までよく頑張ったね」
「そんなことないです」
「いいの、子供は無理しなくて」
僕はいつのまにか泣いていた、この涙が何故流れたのかは分からなかった。でもこんなに安心出来たのはいつ以来だろか?
「あなたが望むのならずっとここにいてもいいわ」
四季は浜辺からフロルの姿を見ていた。
「フロルくんが元気になって良かったね」
イータが四季に話しかけた、四季は何も言わずにフロルを見ている。
「彼といるのが怖いのかい?自分なら彼を守れると思っていた、でも実際は守れなかった。彼は自分と共に来ることを君は分かっている、でもそれが彼を殺すかもしれない」
四季はイータを悲しい目で見た・・・・・・・
~つづく~
最後までありがとうございました。
今回はゆっくりなお話でした、次回もこんな形になってしまうかもしれません。
開戦までしばらくお待ちください。
だんだんと寒くなって来ました、皆さんも体調に気を付けてください。