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Acht;untitled  作者: 鳴谷駿
第零章 Past DayS
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第零章 Past dayS Ⅴ

こんにちは。

これで特別企画はひとまず終了です。Past DayS自体は不定期ですが更新していきたいとは思っています。

ではよろしければ最後までお楽しみください。

~第零章 Past dayS Ⅴ~

 美華は手が引かれる方へと足を進めた。店を出て楕円型をしているショッピングモールの中央に向かって進み、中央の吹き抜けの付近で手を引かれる感覚がなくなったのに気付いた。

「ロイテルくん?」

美華は周囲を見渡す。確かに感じていた感覚は消え去り、急に一人になったように思えた。すると手に何かを握らされたことに気付く。手の中には小さなメモがあった。

『一度吹き抜けから一階を見てくれ その後一階を能力で見てくれ』

ただそれだけが書かれたメモだった。美華はペンを取り出しメモへ何かを書いた。

『ロイテルくんだよね?』

メモを自分の目へ手で持ち突き出した。すると美華が書いた文字が丸く囲まれた。

「わかった!!やってみる!!」

美華は吹き抜けから一階を見下ろす。そこにはいつも通りにイベントスペースに。美華はすぐに能力を使った。

「えっ・・・」

能力で感じた一階には、明らかに見た数より多くの人が感じられる。美華はもう一度吹き抜けから一階を見た。そこに広がるのは武装した集団に囲まれた客達の姿だった。

「これってどういうこと?」

美華は周囲を見渡した。ロイテルからの返事は返って来ない。

「ロイテルくん?」

その時、美華は一発の銃声を耳にした。美華は驚きで固まる。しかし、周囲の人には変化はない。

「私にしか聞こえていない」

美華の表情が変わり、美華は店へと走り出した・・・


道化師の姿をした男の笑い声を遮るように女性の声が響いた。

「耳障りな笑い声だな」

ステージの上の男が周囲を見回すと、声の主は堂々とステージの前に集められた客達の中に立っていた。客達を包囲していた十人程度の武装した男達が一斉に銃口を(四季)へと向けた。

「いつからそこにいた?」

ステージの男が声を張り上げた。四季は手で頭を抱え、大きなため息を吐いた。

「そんなことにも気付けない三下の為に私の貴重な時間を・・・」

ステージの男の声がやや大きくなった。

「お前は自分の立場を分かっているのか?」

男は拳銃を取り出し四季へと向ける。そして引き金を引いた。弾丸は四季の真横を通り過ぎる、周囲の客達から悲鳴や鳴き声が上がる。

「おい、拳銃は人を殺すものだよ。威嚇に使うものじゃない、撃つならしっかり狙いな」

ステージの男の顔が真っ赤になり怒鳴り声が響いた。

「あの女を殺せ!!!」

男達は一斉に引き金を引いた。弾丸は真っ直ぐに四季へと向かう・・・


イベントスペースの一番奥の柱の影から、一人の男がステージで行われるやり取りを眺めていた。

「面白い能力ね?」

男は反射的に振返る。護衛として連れていた二人は地面に倒れ込んでいる。

「お前は何者だ!!」

そこには両手一杯に荷物を持った眼鏡の女性(クロア)がいた。

「私は通りすがりのお客様よ」

男はとっさに拳銃を抜きクロアへ発砲した。しかし、弾丸はクロアに届くことなく見えない壁に阻まれた。

「くそ、能力者か」

「えっーーー、油断したぁーーー!!」

クロアの前から男の姿が消えていた。

「もーう、普通に見つけられたから自分には能力使えないと思ってた」

男が姿を消してからすぐにクロアの背後から銃声が響いた。弾丸はさっきと同様に見えない壁に阻まれた。

「困ったなぁ、私の能力じゃ見つけられないよ」

その時、クロアの横を人影が横切る。そして、その影はクロアから数メートル離れた所で大きく拳を振り、その拳から一瞬青い光が見えた。すると先ほど男が現れ、白目をむいて倒れた。

「ありがとう、助かったわ」

クロアは振返ったロイテルに礼を告げた。ロイテルは何も言わずにステージの方へ目を向けた。


「お食事中すいません!!私と一緒に来てください!!」

美華はルイ達のいるテーブルの前で大きく頭を下げていた。

「どっ、どういうこと?」

ルイは突然のことに驚き美華の顔を見つめていた。愛はちょうど最後の和菓子を完食したところで、横目に美華に目をやった。

「説明はします。時間がないんです、私と一緒に来てください」

すると愛はテーブルに置かれたお茶を飲みほし立ち上がった。

「行くよ、ルイ」

ルイは立ち上がった愛を戸惑いながら見上げていた。ルイは美華の顔を見て立ち上がった。

「可愛い子は嘘つかないからね、行こう!!」

二人は美華に連れられ店を後にした。


四方から四季に向けられた弾丸は見えない壁に阻まれた。武装した男達は驚きながらも能力者であることはある程度予測していたようで、すぐに落ち着きを取り戻していた。

「クロアの奴、障壁を張ってくれたのか。別に必要なかったのに」

ステージ上の男は拳銃を捨てライターを取り出した。

「いくら障壁があっても熱は遮断でき・・・・」

男がライターの火を点火させようとした時、男は宙を舞っていた。

「それは困るな、一応民間人もいる訳だからな」

男は地面へ激しく叩きつけられ大きくむせていた。四季はライターを持つ男の腕を踏みつけ、ステージの上から大声で言った。

「今の私の動きを目で追えた奴はいるの?」

イベントスペースを囲む男達は周りの仲間達と顔を見合わせていた。

「せっかく幻想の道化師アンティック・イマジネイション絡みの情報が入ったて言うから来てみれば、ゴミみたいな連中しかいないよ。ましな能力者もいやしない」

四季は更に力を入れ男の腕を踏む。

「あたしが誰かわかる人いる?」

四季の声に一階全体が静まり帰る。

「はーい!!!」

イベントスペースの一番奥から元気な声が響いた。声の主はクロアだった。四季は声の主がクロアだと分かると、上のフロアを見上げた。吹き抜けから多くの者がイベントスペースを見ていた。三階にはルイや愛の顔もあった。

「何だよ、これじゃ見世物じゃないか」

周囲を囲む男達の顔には焦りが見える。男の一人が動こうとした時、四季の声が響いた。

「人質とかやめてよ、今そんなことされたら全員殺す」

ショッピングモール全体が氷ついた。

「私はハウンズ第一小隊隊長箱美芽 四季、死にたくなければ全員武器をおきな」

四季が名を言った瞬間、再びショッピングモール全体が氷つく。男達は全員顔を真っ青にして武器を下ろしていく。四季に腕を踏まれている男は仕切りに「死にたくない」と言い続けていた。

「はい、お仕舞い」


ロイテルはクロアの隣で静かにステージに立つ四季を見つめていた。

「どう、四季の動きは見えた?」

ロイテルは顔を横へと振った。

「あれがこの国で一番強い女よ。あなた士官学校の生徒でしょ、四季はあなたの先輩よ」

「あの人が俺の先輩・・・」

「性格とかは少し歪んでるけどね」

クロアは再びロイテルの頭に触れた。

「それじゃ、私はこれで」

クロアはそっと姿を消して行く。クロアが姿を消すと同時に美華が現れた。美華は顔を真っ赤して息を荒くしながらロイテルに近づきロイテルの手を握り締めた。

「心配したんだから・・・もう・・・・」

美華はロイテルの手を握ったまま泣き始める。

「ごめん・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

美華はそのまま泣き続けた。その時、ロイテルの視線はステージの上の四季へ向けられていた・・・・・・

この後すぐにステージにルイが駆けつけ、ルイが呼んだ軍部と第二小隊により犯人達は捕まえられた。


あの時、私が見たロイテルくんの目は輝いていた。いつも寂しい雰囲気ではなく、あんなに活き活きとした彼の顔を見たのはあの時が最初で最後だった。

そして二週間後に行われた聖痕祭(せいこんさい)の日、私はロイテルくんや友達と一緒に聖痕祭をまわるはずだった。でも彼は集合場所に現れなかった・・・・

そして私は急募のかかった第四小隊へ入隊した。

「彼を探す為に・・・・」


~第四章 E7-0140523-Ⅱ~

「いや、まだ死にたくない。私にはまだ・・・」

美華へアーニュが近づく、その時に無数の氷柱が襲い掛かる。美香の目の前に第一小隊の腕章を付けた二人が現れる。 青い目をした少年が美華に優しく話かけ、ハンカチを渡した。

「もう大丈夫だよ、ここは僕達に任せて」

美華は自分が泣いていることに始めて気がついた。美華は目の前にいる青年の背中を見つめた。その青年の背中はとても大きく感じ、見ていて安心するものだった。

「あっ、ありが・・・・」

美華がお礼を告げようとした時、隣にヴァイオレットが現れ美華は転移した。

そして彼もまた消えてしまった・・・・


美華はエグルガルムに向かう飛行船の中、ロイテルから渡されたメモ、フロルに渡されたハンカチに綺麗に包み、軍服へとしまった・・・・・


                  ~Past DayS 終~


最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回の主人公は美華になってしましましたね。もう少しルイや愛も活躍させようかと思ったのですが、この話は戦闘がメインではないのでやめました。終り方もあっさりとしてしまいましたが、個人的には最近本編では四季の強さが・・だったので彼女に締めてもらいました。ちなみにロイテルは四季の強さに憧れただけですよ。

後日にルイと美華とクロアの紹介を追加するかもしれません。

今回は突然の企画でしたが、皆さんに少しでも楽しんでいただけていたら嬉しいかぎりです。

改めて今年もよろしくお願いします。  鳴谷 駿

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