第三章 Turning Ⅰ
こんにちは。
残りあと2話ほどになるかと思います。
今回もよろしくお願いします。
~第三章 Turning Ⅰ~
スティーグは不自然に造られた丘から、豪華な椅子に座り観戦していた。
「スティーグ様は参加しないのですか」
隣にいる二人の女の一人が空になったグラスへ飲み物を注いだ。
「そうだね、ステラスが出てきたら挨拶くらいはしようと思っていたけどね」
スティーグは飲み物を口に運んだ、もう一人の女が口元に果物を運ぶ。
「ノエルを呼んできてくれ、挨拶にでも行こう」
怪しく微笑む道化師は腰を上げ動き出す。
自身の攻撃で串刺しとなるシャウト、それを冷たい目で見つめるバース。
「これで死んでくれれば嬉しいんだけどね」
シャウトは全身を貫かれながら笑っていた。
「みんな、こんなに気持ちいい思いをしていたんだ」
シャウトは突き刺さった棘を消しバースを見つめる。
「こんなに早い転移者は初めてだよ」
シャウトの言葉に困ったようにバースは答える。
「ばれちゃったか、いつもは一撃で死んでもらうから僕の力は秘密だったのにな」
ティールは二人の次元の違いに反応することも出来なかった、そして自身が持っていた剣がないことにも気付いていなかった。
「本当に不死身なの?」
バースは後からシャウトの心臓をティールの剣で貫いていた。シャウトの動きが止まる。
「逃がさないよ」
シャウトの体から有刺鉄線が飛び出す、バースは姿を消す。鉄線は何かを追うように動き蛇のようバースを追う。蛇の先にバースが現れては姿を消す、バースの姿が現れるたびにその場所に棘や針が現れる。
「逃げろ、逃げろ」
シャウトは笑いながらバースの動きを捉えていた。
「普通の人間なら僕の動きは追えないんだけどな」
バースはシャウトに近づき隠し持っていたナイフで首を切りつけた、シャウトは何もなかったようにバースに迎撃する。
「最高だよ、もう4回は死んでるよ」
「違うよ、6回だよ」
バースの笑顔と共にシャウトの腕が落ちる、シャウトは何が起きたか理解出来ていない。そしてシャウトの額に弾丸が打ち込まれる、シャウトは一瞬よろめき立て直す。次の瞬間、シャウトは爆発に包まれる。
バースはティールの横に姿を現す。
「逃げるよ!!あんなの相手してたら、命がいくつあっても足りないよ」
バースがティールの腕掴んだ時、二人を無数の棘が現れ襲う。バース達は転移しかわす。
「まったく困ったよ」
「お前」
ティールはバースの腕から流れる血液を見た。
「痛いのは嫌いなのにな」
「転移者なら遠くまで転移すれば」
「それが僕は出来ないんだよ。僕の能力は速度とかは世界で一番だと思っているけど、総合的に考えたらAの下だよ」
二人は爆煙の中を見つめる。
「僕の最大火力は今の攻撃、どうやら僕の攻撃じゃ殺しきれないみたい」
爆煙の中から不気味に笑う道化師が姿を現す。
「ねえ、君は死ぬの?」
バースはシャウトに語りかける。
「どうだろうね」
シャウトの叫びと共に様々な攻撃が二人を襲う・・・・
ロイテルの攻撃を赤い道化師は嘲笑うようにぎりぎりでかわす、そしてロイテルのことを軽く指で触った。
「一回目だよ、もう一つルールを加えよう。君は僕に三回触れられたら死んじゃうからね」
「咲雷」
ロイテルが黄色く光る、近くにいた道化師は感電し動きを止めた。ロイテルはすかさずブレードで腹部を切り裂こうとする。道化師はブレードが体の半分くらいの所でロイテルに手を伸ばす。
「さわっちゃうよ」
「咲雷」
ロイテルの体が光り、道化師の動きが一瞬鈍る。
「駄目だよ、同じ攻撃ばかりじゃ。流石に慣れちゃうよ」
道化師は自身の体が両断されたにも関わらず、ロイテルに手を伸ばす。
手が触れる寸前に道化師の顔へ蹴りがめり込み、上半身が吹き飛ぶ。
「君の電撃で体が重いよ」
フロルはロイテルの横に立つ、ロイテルは一瞬フロルを見ると道化師の体へ手を伸ばし内臓を探った。
「残念、解毒剤はまだそこまで行ってなかったみたい」
地面に転がる道化師の上半身が普通に話す。下半身は無数の蛾に変化し上半身のもとへ集まる。
「残り時間はどんどん減っておりますよ、さあもっと、もっと」
フロルはロイテルに話かけた。
「君一人では勝てない。僕の目的は彼女を守ること、だけど今の僕は能力を使う事は出来ない」
ロイテルは隠し持っていたショートブレードをフロルに渡す。
「使え」
「ありがとう、これであいつをばらせるよ」
二人は道化に向かう・・・・・
バースとティールはすでに十回以上シャウトを殺していた。バースの的確な判断とティールの攻撃でシャウトを殺す。
「もうこれで13目だよ」
「まったくきりがない」
漆黒の炎に焼きつかされるシャウトを眺めながら二人は話す。
「まだ武器はある?」
「私には72種類の悪魔がついている」
「それは頼もしい!!」
漆黒の炎の中から道化師は姿を現す。
「次はどう殺す?」
「召喚 魔杖 ロノウェ」
ティールの手に漆黒の杖が現れる。
「あいつの注意をそらしてくれ」
「りょーかい」
バースは転移を繰り返しシャウトに迫る。
「ねーえ、君の名前ってなんだっけ?」
「マーク・シャウトだ」
「えっ聞こえないよ」
バースはわざと遠くと近くに転移を繰り返した。
「もっと大きな声でさっ」
「マーク・シャウト」
「ごめん、ごめん。もっと大きくしないと聞こえないよ」
シャウトは口を大きく開き、攻撃と共に叫ぶ。
「マーク・シャウトだあぁ!!!!」
「ありがとう」
バースはシャウトの目前に現れ、大きく開いた口へ手榴弾をねじ込んだ。
「じゃっ!!」
バースが姿を消すと共にシャウトの頭が吹き飛んだ。頭を失くしたシャウトの体がふらふらと動く。漆黒の檻が現れシャウトを捕らえる、シャウトの頭はもとに戻る。
「何だよこの檻?」
シャウトは漆黒の檻にナイフを振るう、ナイフは檻を簡単に通過する。しかしシャウトの体を通すことはない。
「なんだよこれ、出せよ」
ティールとバースはシャウトを見つめる。
「これで逃げる感じ?」
バースはティールに尋ねる。
「まさか、召喚 ダンタリオン」
ティールの前に無数の顔を持つ黒い影現れる。
「我が主よ、我になんなりとご命令を」
黒い影はバースを無数の顔で見た、バースは目を輝かせ黒い影を見渡す。
「主よ、この男との愛を望むのですか!!」
「馬鹿はよせ、違う」
ティールは驚き顔を赤くしていた。
「そうですか、失礼いたしました」
「そうだよ、僕達二人の愛には悪魔の力なんていらないさ」
ティールはバースを睨みつける。
「そうですか!!たいへん失礼しました。我が主は少し気が強く冷たい所もありますが、実際はとても優しく、可愛いところも多く・・・」
バースは笑いをこらえながら話を聞く。
「・・・本当に、あっ。ついこんな話を、申し訳ありませんでした」
ティールは頭を抱え、大きなため息をついた。
「あいつに無数の死を」
ダンタリオンは漆黒の檻に捕らえられたシャウトを無数の顔で見る。
「あいつがお二人の恋路の邪魔を」
「そうそう、あいつのせいで」
バースがダンタリオンを煽る。
「許せぬ!!」
黒い影はシャウトを包み込み、シャウトの体の中へ流れ込んだ。シャウトはぐったりとして意識を失う。
「すごい、こんな殺し方があるなんて!!」
シャウトは突然、叫び始め体は不自然に動く。
「こんなの気持ちいい死に方があるなんて」
二人はシャウトの姿を見つめる。
「彼、すごく嬉しそうだよ?」
「本当はもがき苦しむはずだが・・・・」
「とりあえず、逃げようか?」
「あぁ、だが私はアルルのもとへ向かわせてもらう」
バースはにっこりと笑った。
「たぶん、大丈夫だよ」
ティールは不思議そうにバースを見た、バースは姿を消してティールの後に現れる。
「僕達は悪魔公認の中さ、君を危険な目には合わせられないよ」
ティールは一瞬顔を赤らめ振り向こうとして意識を失う。
「ごめんね」
バースはティールを抱え、通信機を手にした。
「目標を確保、戦線を離脱します」
バースはエグルガルムの軍服を脱ぎ燃やす、そして通信機を踏み潰した。
「楽しかったよ・・・・」
スティーグは堂々と三人の部下と共にジークフリードに正面から近づく。
「ステラス様、正面に人影がしかしレーダーに反応がありません」
司令室の大きな液晶にスティーグ達の姿が映される。スティーグは液晶からステラスを見つめる、そして微笑み指をならした。そこで映像は消えた。
大きな揺れがジークフリードを襲う、ジークフリードの下の地面が裂け始める・・・
~つづく~
最後までありがとうございました。
次回の投稿は休みのうちに何とか出来ると良いのですが!!
では第三章もあとわずか皆さんよろしくお願いします。