第三章 4 bys 2 Ⅳ
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今回もよろしくお願いします。
~第三章 4 bys 2 Ⅳ~
真っ白な部屋に横たわるノークは儚く今にでも割れてしまいそうだった。エスナとリシアは彼女を見つめていた。
「間違いないわ、祖母の症状と同じよ」
ステラスは静かに目を閉じた。
初めてノーク・シャーレスタに会った時、彼女はすでに多く発明でこの国を救っていた。
「もし軍の研究に力を貸してくれるのなら、今以上の施設や研究費を約束する。悪い話ではないはずだ」
私が初めて彼女を見た時の印象はまさに花だった。その花は真っ白で弱々しく簡単に折れてしまいそうだった。私は彼女の目に強く魅かれた、とても美しく青く輝く目は希望を真っ直ぐに見つめ、奥には灯りがあるように思えた。
「良いお話だと思います。私もこれ以上の研究を行うには、より良い施設と費用が必要だと思っていました」
優しい声は私に届くと直ぐに消えてしまう。
「貴方の噂は聞いております。我が国の英雄で、部下思いの優しい人だと」
ノークは私を見て笑った、私はその笑顔を今でも憶えている。
「英雄、優しい人。どちらも違うよ」
ステラスは近くの机の上にあった花を眺めて言った。
「私の力は戦うことでしか、仲間を救うことは出来ない。人を傷つけずに救うことが出来る君こそが英雄と呼ばれるべきだよ」
ノークはステラスに近づき机の上の花に水をあげた。
「私の力はこの花と同じ、誰かが水をくれて、守ってもらえなくは生きていけない。だから今ね、私がこうやって研究出来るのもあなたがいるからなんだよ」
私は今でもその言葉が支えになっている。あの日の彼女の言葉なくては、私はもう潰れていた。
「あなたがいてくれたから、今の私が、みんながいるんだよ」
彼女の一言は私を救った…‥
ステラスはそっとノークの手を握りしめていた。微かに感じる暖かさ、彼女の優しさは今も彼を救い続けている。
「ノーク、次に君が目を覚ましたら聞いて欲しいことがあるんだ。だから、少し待っていてくれるか?」
返事のないノークをステラスは見つめ続ける。そっと手を離し、彼は戦いへ向かう。
「待ってるわ、ステラス。行ってらっしゃい」
ステラスは振り返り、横たわったままのノークに言葉を返した。
「行ってくるよ」
アステリオス王族専用機内部
エスナとリシアは隣会って座っていた。二人の間に言葉はなく、二人ともイヤホンをしてた。
「お互いに盗み聞きとは、お互いにどんな育ち方をしたのかしらね」
リシアが先に口を開いた。
「そうね、きっと考えていることも同じよね」
二人はクスクスと笑い始めた。
「ノークの件はあなたも、もう分かっているのでしょ?」
リシアはエスナに尋ねた。
「そうね、彼には伝えるの?」
「彼が生きて戻れたら教えるつもりよ」
「生きて戻れたらか」
二人はニヤりと笑い、黙り込んだ。
大商業国アルファルド
ティールはパーティーを抜け出し、一人部屋で寛ぎながらさっきの出来事を思い出していた。幻想の道化師のこと、スティーグ・フェニシアのこと、自身の戦いへの迷い。
「ティール!!無断でいつの間にか帰るなんて最低よ!!!」
ティールの部屋にアルルが入って来た。少し酔っているようで足元がふら付いていた、アルルはそのままティールの部屋のベッドに倒れ込んだ。
「アルル、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないわよ!!友達に裏切られた・・・」
アルルは涙を浮かべてティールを見つめた。
「この酔っ払いが」
「酔っ払ってないもん!!ティールが私のことをおいてくから」
ティールはアルルの隣に座った。
「そのことは謝るよ、すまなかった。どうもこの手のことは苦手でね」
ティールは恥ずかしそうにアルルに謝った。アルルはティールに抱きついた。
「やっぱりティールは可愛いわ」
ティールはアルルの顔を見るとすっかり酔いは覚めていた。
「アルル」
「私をおいてった仕返しですこと」
二人は楽しそうに笑った。
「それよりも・・・・」
「あなたの聞きたいことは分かっていますわ、幻想の道化師、スティーグ・フェニシアのことですわね」
二人の表情を固くなり、笑顔が消えた。
「そうだ、私も幻想の道化師の噂は知っていた。道楽でしか動かない能力者の集まり、そして大半がSクラス以上の能力者。本当に実在していたとは」
「私も最初は驚きましたわ、でもあの殺戮ショー。信じるしかないわ」
「私も全くどの様な能力か分からなかった、何故私が生き残れたかも分からない」
アルルは部屋にあったワインを手に取った。
「でも一つだけ分かったことがありまして、気に入らない奴だということが」
「私もだよ」
アルルはティールにワイングラスを渡し、ワインを注いだ。
「乾杯・・・・・」
エグルガルム 大広場演説会場
国民の大半が今、一つの場所に集まっていた。これからステラスによる演説が始まろうとしていた。盛大な拍手と共に真っ白な服に包まれたステラスが現れた。演説は大きな戦車の上に作られた式場で行われていた。ステラスの後にはリオル達が立っていた。ステラスは簡単に挨拶を済ませていた、その姿は神々しく尊敬や憧れの眼差しが彼に集まっていた。
「皆さんに謝らなくてはならないことがあります。今回の侵略の理由は私個人の意思によるものです」
会場は微かにざわめいた。
「この戦いは私が一人の女性を救う為に行ったものです。この戦いで大切な人を失った者もいるでしょう、すべて私の責任です。私を憎み、恨んでもらってかまわない。私はそれだけのことをしてしまった。如何なる報いは受けるつもりです、私の命も差し出す決意も出来ていま…‥」
ステラスの演説が続く中、リオルはステラスに向かう。ベガやミラは焦り止めに行くが間に合わない。リオルはステラスの肩を掴んだ、そしてステラスの顔を殴り飛ばした。ステラスは倒れ込んだ、会場はざわめきに包まれる。リオルはマイクを掴んだ。
「こいつは馬鹿だ、俺達を信頼していない。お前達、今回の侵略の理由知っていたよな?」
会場から響き渡る様々な声達。
「ステラスは隠し事が苦手だからな」「言ってなかったけ?」「今さら何言っているんだか、俺達はお前の一途な所にも憧れてるだぜ」「あんたは誰にも嘘なんてつけないよ」
響き渡る多くの声、どの声もステラスを貶すものはなかった。
「俺達は何故軍に入った?俺は仲間をこの国を守る為に入った。一人だろうと関係ない、俺達が戦う理由には十分じゃねえか!!」
響き渡る歓声。リオルはステラスにマイクを渡した。ステラスがマイクを持つと会場は静まり彼の言葉を待っていた。
「どうやら私は本当に人の上に立つのが向いてないらしい」
最大の歓声が響き渡る。愛はこの映像に感動していた、隣にいるリオルは私を見て言った。
「これが俺のすべてだ。俺には勿体無いくらいだろ」
愛はリオルが、ステラスが、この国が羨ましかった。そして愛はこの人達の為に力を振るうことに誇りを持った。
「今回の作戦において一つだけ守って欲しいことがある。決して死ぬな、私は世界最強名をここに掲げ、この約束を守ろう。だから君達もこの約束を守ってくれ」
歓声が響き空気が震える。
「ステラス、遂に世界最強を名乗ったね」
バースは嬉しそうに笑っていた。リオルはステラスの横に並び雄叫びを上げていた。
愛はこの二人を守りたいと心から思い誓った。
「包刃ちゃん、リオルは頼んだよ。彼はステラスと違って無茶苦茶だからさ、自分をきっと簡単に犠牲にしてしまう。でも君なら彼に違う道を見つけさせることが出来るはずだからさ」
バースはいつの間に愛の後に現れ、それだけ言って姿を消した。
両軍の開戦は間近に迫っていた。そして戦いは始まり、多くが終わりに向かい始める…‥
~つづく~
最後までありがとうございます。
次回からは戦いです、なるべく分かりやすく表現できるように頑張ります。
三章も終盤に向けて動き出しました、私もなるべく時間を見つけて少しでも早く皆さんに読んで頂けるよう頑張ります。
次回もよろしくお願いします。