第三章 4 bys 2 Ⅱ
こんにちは。
どうにか投稿出来ました。もう少し彼らのことを書きたかったと思いつつも、今回はここまでかな??
~第三章 4 bys 2 Ⅱ~
旧デルガナ領土 エグルガルム仮設基地 演習場
演習場は多くの観客によって熱気に包まれていた。二人はお互いの力を探りながら戦っていた、シールの蹴りが愛の体に直撃した。
「ひらひらとうざったい子ね」
愛はシールの蹴りに押されただけだった、シールのどの攻撃も愛にとって決定打にならない。
「その能力最悪よ」
シールは剣銃を放ち、距離を詰め寄る。愛は一閃を放つ。シールが後に引くと軍服の胸の部分が裂ける。
「ちっ」
「能力はもう使わないよ、おばさん」
「小娘が舐めるなよ」
シールがさっきの倍以上の速度で距離をつめる、愛は反射的に迎撃する。互いの一閃が弾きあう、愛は崩れた体勢を立て直し、刀を振るおうとする。しかし弾かれたはずのシールの剣銃が愛に迫る、それを愛がかわす。それた剣銃は剣筋を曲げ愛にまた迫る、剣銃の攻撃にシールの打撃が混ざる。シールの拳が愛を捕らえ、愛は壁に叩きつけられた。
「小娘が」
シールの剣銃が蒸気を吹き出す。愛は刀を支えに立ち上がる。
「これが本気?」
「いいえ、小娘ごとき出すわけないわよ」
愛は刀を持って構える。
「本気で来ないと後悔するよ」
「誰が後悔するのかしら」
愛とシールは再び距離をつめる。その時、熱気に包まれた観客が静まる。
二人の間をバースが遮り、壁へ叩きつけられた。バースは壁にめり込み、崩れ落ち煙の中を見つめる。
「手加減ないなぁ、死ぬよ。普通はさぁ」
「二人ともやめろ、シールもこんなグズの話を聞くな」
リオルが煙の中から現れる。
「リオル、ごめんなさい。でもね、私は…‥」
シールは恥ずかしそうにリオルに話かけるが、リオルは愛に近づいた。
「うちの奴らはどうだったか?」
愛は赤くなっているシールを見て言った。
「悪くない」
「本当に、包刃ちゃんが満足して…」
突然、愛の横に現れたバースにリオルの拳が食い込み歪んで消える、リオルは直ぐに向きを変え拳を振るう。愛には何が起きたのか分からなかった、今度はバースは倒れ込む。
「痛いなぁ、何でリオルは僕を殴れる。ステラスだって僕を捕らえられないのに」
「カスの気配がするんだよ」
バースは身の危険を感じ、観戦席へ紛れ込む。
「僕はもう満足だよ、包刃ちゃん。またねぇー」
愛は目の前の光景に驚いていた、リオルは確かにバースの動きを捉えていた。私には捉えきれない動きを捉えていた。愛にとってのリオルの印象は、キースとの戦いだけだった。目の当たりにした一撃は速く、無駄のない身のこなしは美しかった。愛はある程度の武術の知識を持っている、だからこそリオルの強さがすぐに分かった。
「私と戦ってくれ」
愛は自分の思いを素直に言葉にした。リオルは軽く返事をして構えた。
「いいぜ、ただし手は抜くなよ」
愛は直ぐに先制の一閃を放つ、リオルの一撃は愛を捕らえる。愛はリオルにぐったりと倒れ込んだ。
「悪くないか」
リオルの腕から血が滴る、リオルは胸の辺りから切り裂かれていた。リオルは自身の傷を眺めて言った。
「いい一撃だ」
愛が目を覚ますと自分の部屋だった、窓際にはリオルが座って拳を見つめていた。
「起きたのか、大丈夫か」
愛は腹部に少し痛みを感じたが、たいした怪我ではなかった。
「大丈夫だ」
「そうか、お前の名前。包刃でいいのか?」
「そうだよ」
二人の会話はぎこちなく、不思議な間を持っていた。
「リオルでいいのか?」
「あぁ」
少しの沈黙が続いた。
「お前もステラスの為に戦っているのか?」
「せっかく名前聞いたんだから、名前で呼べよ」
リオルは少し笑っていた。
「すまない」
「結局、呼ばないのかよ」
リオルは拳をゆっくりと閉じたり開いたりしながら話始めた。
「俺は違うな、戦うのは自分の為だよ。俺は今を失いたくない自分の為に戦ってる。守れる者はすべて守りたい、俺の体がどうなろうとかまわない」
愛は静かに話を聞いていた。
「動きや切った感覚で分かったと思うが、俺の体の半分以上は機械だ。血を流す機械さ」
リオルの言葉はどこか悲しく感じた、私より明らか人間らしい者は、私より遥かに人間から遠い。
「お前は人間だよ、私なんかよりさ」
リオルは愛の言葉に驚いていた、リオルは突然上着を脱いで背中を見せた。傷だらけの背中には金属が見えた、確かに人間の背中ではなかった。でも僅かな肌に残った傷はとても人間らしかった。
「触ってもいいのか?」
「あぁ、俺の能力は発熱だ、でもこの力に体が耐えられなかった。だから俺は力を手にするために、体を改造した。後悔はしていない、でも時々思うんだよ。いつか本当に機械になってしまうのかなってさ」
愛はそっと背中に手を触れた、体はとても温かく不思議と気持ち良かった。
「機械か、私はな戦う理由が見つからないのさ。軍隊に入ったのも頭を使うのが嫌だったくらい。力をいくら求めても、必ず上がいる。私は戦うだけの人形だよ。こないだ初めて友人が出来た、彼女は国のために戦った。私は作戦に従い彼女を討った。私は今になって考えてしまう、私は正しかったのかと」
愛はリオルの大きな背中に額を当てた。リオルの体が僅かに震えた。
「そいつはお前に託したんだろ」
「託す?」
「あぁ、託すものは人による。形のある物、形のないモノ、でもそれは託された奴にしか分からない。」
愛はそっとイヤリングに触れた。リオルはその様子を見ていた。
「見てられないってさ」
愛はリオルを見つめていた、リオルは立ち上がり上着を着ていた。
「そいつがさ、心配そうで見てられないってさ。俺は多くの仲間を失っている、でもそいつらはきっと俺を見ていると思う。だから俺は迷わない」
その言葉は愛にとって特別だった、震える心が涙となり現れる。リオルは愛を見ることなく部屋を出た・・・・・・
次の日、私はリオルに演習相手を頼んだ。リオルは軽く返事をして私達は作戦に向けて訓練を始めた。
バースは演習をする愛とリオルを退屈そうに眺めていた。
「はーあ、何かここまで仲良しさんだとつまらないな。シールちゃんも何かするかと思ったらショックで寝込んじゃってるし~、はーぁ」
演習場では複数の攻撃が二人に向かっていた、それを愛の能力がリオルを助け攻撃をかわし続ける。愛の反応速度はリオルに引っ張られ確実に上がっていた。
「包刃ちゃんも俺を切れるようになったら困るなぁ、しかも噂によると夜二人でコソコソと出かけているみたいだしさぁ~」
その時、後から物音した。そこにはシールが倒れていた。
「あちゃ~、また倒れちゃったよ。全く見た目は強そうなのに、中身は可愛い限りだよ」
バースはシールを観戦席に寝かせていた。
「全くだよ、シールがいると分かっていて言うのだか」
バースはそーっと振り返るとそこにはステラスがいた。
「帰って来ていたのかい、ステラス。僕に気配を悟られずにこんな近くまで来るなんて怖い、怖い」
ステラスは観戦席に座り、愛達を眺めていた。
「私がいない間に、二人ともだいぶ強くなったな」
「そうかい、僕は面白くないけど」
「そうかもな、包刃くんは以前に比べて反応速度などが上がっている。彼女はもともとの能力が高い、だから見える、聞こえることに敏感で自身の直感的なモノが生かせてなかった。それが感でお前を殴るような男と一緒にいるんだ、自然と分かってきている。そしてリオルは動き柔らかくなった、彼女の動きの影響だろう」
ステラスは楽しそうに二人の話をしていた。
「わかってるよ、そんなことはさ。それより、アステリオスとはどうなの?」
「事実上の同盟関係を結んだ、こちら側の依頼で表だった支援は控えるようにしてもらった」
「そうかい、まぁ味方は多いにこしたことはないよ。あえて深いことは聞かないからね」
ステラスとバースもまた長い付き合いの関係だ、二人の会話はどこか互いを疑うような雰囲気に包まれていた。
「でも、僕はリオルみたいに君に従わないよ。この命は僕のものだからね」
ステラスは愛達を見たまま話続けていた。
「かまわないよ。でも今の君じゃ、二人に勝てないかもよ」
バースは睨むように愛達を見つめた。
「かまわないさ、僕は力なんかに執着しないからさ。僕はもう戻るよ、君が戻ったってことはそろそろ戦うんでしょ」
「あぁ、明後日に仕掛ける」
「了解、じゃーねぇ」
ステラスは観客席から演習場に降りた。
「二人とも手伝おうか?」
愛とリオルはステラスに向かった・・・・・・・・・・・
~つづく~
最後まで読んで頂きありがとうございます。
主人公が愛になりつつある・・・・、いや彼女は主人公でない!!!
今回、本当はリゼリとロイテルが登場する予定でした。とある事情から延期へ。
三章にロイテルの出番がまだ・・・・・
次回もよろしくお願いします。