第二章 蘭嵐 Ⅳ
今回もよろしくお願いします。
~第二章 蘭嵐 Ⅳ~
扉の向こうにはビズルが一人、王の座る椅子に堂々と一人座っていた。
「片腕どうしたんだい、姉さん?」
ジャンヌはその言葉は無視して、金の剣をビズルに向ける。
「父上はどうした?」
ビズルはふざけた調子で飲み物を口に運び答えた。
「死んだよ」
「殺したのか?」
「そうかもね」
「お前は何がしたい?」
「別に、ただ楽しみたいだけかな?一度きりの人生をさ」
ジャンヌの持つ剣が細く伸びビズルの心臓を貫く。
「もう終わりにしよう」
次の瞬間、ジャンヌは目の前に広がる光景に言葉を失う。
ジャンヌの剣に貫かれているのは国王、そして国王の横にはビズルが立っている。
「姉さんも酷いことするね」
ジャンヌは言葉を失い、剣を落とす。
「本当ね、国王は必死にあなたに語りかけていたのに」
ヴァイオレットがジャンヌの横を歩きビズルの横に行く。
「どういうことだ?」
ジャンヌは拳を握り締める。
「夢でも見ていたんじゃない?お姫様」
ジャンヌの周りにヴァイオレットの部下が現れる。ジャンヌは武器を練成しようと鎧に触れる、その時銃声が響く。
ジャンヌはわき腹と片足を打ち抜かれ崩れ落ちる。
「おいおい、殺すなよ。とどめは俺が刺すのだから」
ヴァイオレットはビズルに銃を渡す、ビズルは銃口をジャンヌに向ける。
「最後に言いたいことは?」
ジャンヌはビズルを睨みつける。
「この国をどうする?」
ビズルは大笑いをする。
「国の心配?あんたこれか死ぬんだよ?分かる?」
ジャンヌはそのままビズルを睨む。
「この国、どうでもいいよ。俺はいらないよ、姉さんはどうしたいの?」
「国民の為に国はあるものだ、だから・・・」
ビズルは面倒臭そうに話を遮った。
「わかった、わかった。民主性にするなり、なんなりさせるさ」
ジャンヌは驚いた顔でビズルを見た。
「何?俺がこの国で何かするとでも思った。する訳ないじゃん!!こんな国」
ビズルはジャンヌの言葉をあざ笑う。
「姉さんがやりたかったことはね、もっと簡単に出来たんだよ。分かる?力さえあれば簡単に出来たことだよ」
ジャンヌは唇を噛み締める。
「世間知らずのお姫様のわがまま、ただそれだけのこと」
ヴァイオレットがジャンヌを見下し言い放つ。
ビズルはトリガーに指を掛ける。
その時、王室の扉が切り裂かれ吹き飛ぶ。
血に染まったぼろぼろの着物を着た愛がそこにはいた。
「何のようかしら」
ヴァイオレットが不機嫌そうに愛に尋ねる、愛は真っ直ぐにジャンヌを見る。
愛は大刀を力一杯振り払う、剣圧が一瞬周りの人間の動きを止める。その瞬間、ジャンヌは自分の周りにUの字の壁を作り愛と向き合う。
最後の力を振り絞り立ち上がり剣を握り締める。
愛はジャンヌに向かう。
「最後まで迷惑かけたね」
「・・・・・・・・・・・」
「もう少しお話すればよかった」
「・・・・・・・・・・・」
「三人で見た満月綺麗だったね」
「・・・・・・・・・・・」
「私なにか残せたかな?」
「・・・・・・・・・・・」
「いつも私が話してばかりだね」
「・・・・・・・・・・・」
ジャンヌを覆ったU字の壁が崩れ、金の粉になり舞い上がり、日をあびてきらきらと輝き二人に降り注ぐ。
「友達だよね?私たち」
「・・・・・・・・・・・」
愛はただ頷いた。
ジャンヌの腕が愛の顔に触れる、その手を愛が握った。
「愛の手、優しい」
「ジャンヌのもな」
「やっと普通にお話できたね」
ジャンヌは幸せそうに微笑んだ。
「・・・ありがとう・・・・・・」
ジャンヌを貫いた大刀がゆっくりと抜け、愛はジャンヌを抱きしめた。
「茶番は終わった?なんてことしてくれたの」
ヴァイオレットは愛を攻める。
「なんか冷めちゃった、ヴァイオレットもういいよ」
「本当、くだらない」
愛はヴァイオレットを睨みつけて、大刀を握り締め切りかかろうとする。
ヴァイオレットは嬉しそうに笑った。
「先輩」
愛の前に少年が立ちはだかる。
「リビイ、どけ」
少年は目一杯に涙を溜めて震えた声で言う。
「嫌です」
「どけ」
「嫌です」
愛は少年の泣き崩れた顔を見て大刀を置き崩れた。
王宮内 中庭中央
「これで終わりだ」
リゼの顔の左側は殆ど黒い根のようなモノに侵食されていた。
「まだ死ねない」
ロイテルは地面に伏せながらリゼを睨みつける、リゼは黒い手を振り下ろす。
「俺は約束した・・・」
意識を失ったロイテルから黒い影が引く、その時二人の男が現れる。
男は二人とも深手を負っていた、一人は鎖を練成してリゼを襲う。リゼは難なく黒い手で鎖を迎撃し男を捕らえる。その瞬間、男は爆発する。
爆煙が辺りを包む。
「悪あがきを」
そして、ロイテルの姿が消えていることに気付く、リゼの前には男が立っていた。
「あいつはどうした?」
「わかりませんな」
リゼは頭を抱えて男に銃口を向けた。
俺が目を覚ますとベッドの上だった。どこかの部屋に俺は寝かされていた、記憶は途切れ途切れで思い出せない。ただ負けたということだけ重く圧し掛かる。ベッドのよこのテレビが五月蝿く鳴り響いていた。
テレビはジャンヌの死を告げている。
俺はただ天井を見上げていた、何も分からず、何も信じず、ただ・・・
~つづく~
最後まで読んでいただきありがとうございます。
後で洸光も編集いたします。