第二章 誡歌
今回もよろしくお願いします。
~第二章 誡歌 ~
ジャンヌが目覚めてから反政府軍の士気は戻り始めていた、どこからか新たな仲間も増えているようだった。確実に大きな戦いが迫っているのは分かった。そんな中多くの反乱軍兵に力を貸して欲しいと頼まれた、でもジャンヌだけは何も言わなかった。毎晩俺はジャンヌと十字架の立つ砂漠で戦った、少し強くなったと言われたが実感はない。
そして、動き出す終わり向けて・・・・・
ジャンヌが目を覚ましてから2週間ほどたったある日、国王が演説を行った。王宮の前で多くの国民を前に盛大に行われた。
「わが国は大きな問題をいくつも抱えている、その一つは反政府軍との紛争だ。噂ではその首謀者が行方不明となっている第三王女ジャンヌ・セルギアであると言われている。これは事実である、今このセルギア王国を苦しめているのは我が血族だ。だからこそ私自身の手でこの問題を解決せねばならん」
国王は剣を力強く上げ言った。
「ジャンヌよ、私は王宮でお前を待とう。決して逃げぬ、そなたと向き合い決着をつけようではないか」
大きな歓声が沸きあがり、そして国王の隣に男が現れる。
「国民よ、行方不明となっていた我が息子ビズルだ」
ビズルは胸に手を当て話始めた。
「まずは皆に謝りたい、国の危機に目を向けることなくこの国の離れていた自分を許して欲しい。そして我が姉がこの国を苦しめていることも、どうか許していただきたい。私がこの国を離れていなければこんなことにはならなかっただろう。だかこそ、私は父と力を合わせこの問題を解決しよう!!!」
ビズルは涙を流し訴える。
「姉さん、あなたのやっていることは間違っている。決して謝って許されることではない、でも私は姉さんを許そう。そして・・二人で命を懸けてこの国を立て直そう、あなたが奪った以上の命を救い、この国を・・・・」
ビズルは下を向いて黙り込んだ、そして涙にぬれた顔で言った。
「父と共にあなたを待とう・・・・」
そして、より大きな歓声に包まれ演説は終わりを告げた。
「王子様、なかなかの熱演で笑いを堪えるのが大変だったわ」
ヴァイオレットはビズルに近づき後ろから抱きついた。
「本来は涙を堪えるところだよ」
ヴァイオレットは耳元で囁いた。
「どうするの?」
ビズルは蛇のように微笑んで言った。
「わかっているくせに」
「あなたのそう言う顔が好きだわ・・・・・」
すでに国王に力はない、この国にビズルより強い者はもういない。
アステリオス帝国 首都アステル
地獄の特訓が始まり数週間がたった、今では箱美芽隊長の3分の1まで来た。しかし壁にぶつかった、まったく歯が立たない。ある日のこと、医務室で倒れている僕に箱美芽隊長が言った。
「自分にあった形を探せ、あの小娘は蛇かもしれんがお前はお前だ。生き物かもしれないし、違うかもしれない、お前自身の形を想像しろ。その形が見つかったら私を呼べ」
そう言って医務室を出て行った。
「僕の形か・・・・・」
ある日、訓練施設の外を歩いていると芝生で寝ている男がいた。一応、ここにいるから軍の関係者だと思うが・・・・。
「すいません、ここは軍の施設なので・・・」
男は眠そうに僕を見て言った。
「サボってないよ、休憩中なだけ・・・・・」
「えぇ・・・・・」
「あれ?君はうちの隊の子じゃないね、その腕章は四季の所の」
男は自分の枕にしていたジャケットを羽織った、そこには第三小隊の腕章があった。
「すいません、いつも人がいないもので」
男はへらへらとして立ち上がり言った。
「別にいいさ、第三小隊の子に見つかったわけでもないしね」
「はぁ」
「君が四季のお気に入りの子ね、いい子そうじゃないか」
僕はお気に入りと言う言葉に引っかかった。
「お気に入り?」
「そうさ、あいつが誰かの世話をするなんて始めてさ。正直俺もまだびっくりさ。あいつは敵を作るが仲間も友達も作らない、だから少し安心したね」
「安心?」
男は笑いながら立ち去りながら言った。
「四季の力になってやりな、あいつが認めてくれたんだからね」
僕は後ろ姿に深くお辞儀をして言った。
「ありがとうございます、あのお名前は?僕はフロル・レイサスです」
男は手を上げて振りながら言った。
「桜家さ」
セルギア王国 十字架の立つ砂漠
俺がいつものように十字架の立つ砂漠に行くと二人はすでにいた。最初に二人の姿を見た時と同じで月明かりに照らされた二人の姿は幻想的だった。
「準備は整った、明後日王宮に攻め込み決着をつける」
愛はいつも通り和菓子を食べながら話を聞いていた。
「演説の通り父がいるとは思えないけど、王宮にいくわ。もう私は迷わない」
愛は月を見ながら口を開いた。
「そうか、一応聞くが私の国の王女が力を望んでいる。だからお前も・・・」
「私は戦うわ」
愛は一度ジャンヌの顔を見て、月を眺め始めた。
「あの子はどうする?」
「ロイテルのことね、彼には国帰ってもらうわ。こんな所で失うべき命ではないわ」
愛は立ち上がり言った。
「私は王の間の扉の前にいる、警備に召喚士の黒髪の男がいる性格は悪いが実力はある、敵であろうと命は奪わない甘ちゃんだ」
そして姿を消した。
「ありがとう」
その日、ジャンヌに国に帰るように言われた。
「ロイテル、データはもう十分取れたはずよ。国に帰りなさい」
「まだ不十分だ」
「今度の戦いは今までとは違う、もう子供の出て来るような戦いではないの」
俺はこの時、初めて自分自身の弱さを悔やんだ。もし一度でも彼女に勝てたなら、俺は俺の望む言葉を彼女の口からもらえたかもしれない。
「俺が弱いからか?」
「そうよ」
俺はジャンヌに挑んだ、そしてまた砂漠に横たわり月を見上げている。
~つづく~
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回より戦闘が多くなるかと思います。
なるべく早く投稿できるようにがんばります。