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Acht;untitled  作者: 鳴谷駿
第二章 洸光の日
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第二章 朽丘

今回もよろしくお願いします。


 ~第二章 朽丘~

  ジャンヌの傷は思った以上に深刻だったらしい、拠点に着いて意識を失いしばらく意識が戻らなかった。反政府軍は多くの犠牲を払い、ジャンヌの負傷により士気は低下しているように思えた。俺は幹部の男達に兵器の追加や兵士を提供出来ないかなど色々尋ねられたが、どうすることも出来なかった。

 俺はジャンヌの意識が戻らない間も毎晩砂漠に立つ十字架のもとへ行った。

 収容所の襲撃から二日後位のことだ、俺がいつも通り砂漠に立つ十字架のもとへ行くと先客がいた。先客は着物を着た女だった、美しい桜色の着物に不釣合いな大きな大刀を持っていた。砂漠の盛り上がってできた丘の様な所で、十字架と月を眺めていた。近づいてみると女は小柄で華奢だった、色白な肌に丹精な顔は月明かりに照らされて幻想的だった。

 「もう少しで満月だね」

 女は突然話かけてきた、一応気配を消して近づいたつもりだったので少し驚いた。

 「はい」

 女は晩酌をしているようだった、特に何も語らず月を眺める。俺は何だかこの人の雰囲気が好きだったのかもしれない、少し離れた所で一緒に月を眺めていた。

 「どうだい?」

 「遠慮しておきます」

 女は一度月を見て言った。

 「これは酒じゃないよ、茶さ。良い物が手に入ってね、甘い物には茶が一番さ」

 確かに女の近くには黒い塊があった、さっきからそれを口に運んでいた。女は手招きをして俺を呼んで、黒い塊を切って差し出した。俺は黒い塊を口に入れた、少し硬くとても甘かった。進められるままお茶も頂いてしまった。

 「いい味だろ?ようかん」

 「はい」

 その後、二人の間に会話はなかった。女はただ満足げに月を眺めて去っていった。

 

  翌日も女は現れた、今度は葉っぱの巻かれたモノを食べていた。女は毎晩同じ場所から月を見上げていた(毎晩甘い物とお茶を持って)、俺も特に会話をする訳でもないないのに毎晩一緒に月を眺めた。お互いに興味がないのか名前も分からなかった。一つだけ知っていることは、女は旅人だと言っていた。小さい頃から世界を見て回るのが夢だったと言っていた。俺は運び屋の仕事をしていると嘘をついた、ジャンヌが目を覚ました次の日のことだった。

 「ようやくお目覚めかい」

 女は月を見上げながら突然言った、後ろを振り向くとジャンヌが立っていた。

 「ロイテル、暫く席を外してくれないかい」

 俺はジャンヌに言われるがままその場を離れた、遠くから見た丘の上に立つ二人の姿は対照的でとても美しかった、まるで何かの絵を見ているように幻想的だった。

 「何故ここにいる?」

 ジャンヌは愛を睨みつけた。

 「月を見に来ただけさ」

 愛はさらりと受け流した、と言うより彼女に殺気や警戒心はまるでなかった。

 「そうか、いい眺めだろ」

 愛はそのまま月を眺めていた、ジャンヌは近くにあった十字架を触り言った。

 「こいつらにはせめて、この眺めだけでも見せてやりたくて・・・・」

 ジャンヌは十字架の前に崩れた。

 「私は何をしているのだろうな?こんな事をして自分だけ救われようとしている、ただこのままじゃいけないと思い剣をとった。でも増えるのは死ばかりだ、私は間違っているのか?」

 ジャンヌはただ十字架に語りかけた。

 「私には分からない、何も分からない」

 ジャンヌはそのまま十字架に頭をつけて黙り込んだ。

 「死者は何も言わないさ」

 ジャンヌは顔を愛に向けた、愛は近くの十字架の前に持っていた白い塊を置いた。

 「でも見てはいるさ。今のお前を」

 愛はそのまま姿を消した。

 俺は十字架の前で泣き謝るジャンヌに声をかけられなかった、何を言えばいいか分からなかった。むしろ今の俺はかけるべき言葉を持っていないから。

 「リシア、もう少しセルギアにいるよ」

 「わかったわ、大丈夫だと思うけどあなたの任務はデータの収集よ」

 「分かっているよ」

 翌日ジャンヌは最初に会った時に戻っていた。その日から毎晩、ジャンヌと戦った。その姿を着物の女は眺めていた、毎晩必ず大刀を持ってきているのにいつも見ているだけであった。二人はあの日以降話さなかった、時々丘の上で二人が月を見ていることがあったが会話はなかった。ちなみに俺は一度もジャンヌに勝つことが出来なかった。

 

 

 聖痕祭(せいこんさい)数日後 第四区 軍部演習施設

  箱美芽(はこびめ)隊長の車に乗って大きな建物中に入った、そして今いる部屋?はとても大きく窓一つないドーム状の部屋だ、そこに僕と箱美芽隊長が向かい会っている。

 「最初は軽めにする」

 「何をするんですか?」 

 「カッコ良く言うと特訓だ、THE GAME演習モード」

 突然、箱美芽隊長の前に画面が現れ操作を始めた。

 「今回の設定はこんな感じでよしと」

 次の瞬間、竹刀を持った剣道着の箱美芽隊長が10人現れ真ん中の一人が話し始めた。

 「ルールは簡単だ、どれでもいいから私を一人殺せ。一応、10人だから力は普段の10分の1だ。特別にお前が受ける痛みの感覚をいつもの半部にしてある、あまり調子に乗ると死ぬかもしれんが気をつけろ」

 そして僕は思い知った箱美芽 四季という人の力を、10分の1でも明らかに僕より強かった。ほとんどめった打ちだった、いったいどの位の時間で意識を失ったかは分からない。ただ起きると医務室で全身が痛かった。

 「明日はもう少し頑張ってくれよ」

 そう言って箱美芽隊長は医務室を出た。

 そして、僕の地獄のような特訓が始まった・・・・・・


                               ~つづく~


最後まで読んでいただきありがとうございます。

投稿早くてすいません、朽丘に収めようと思っていた内容が多くなりすぎた為二つに分けます。すいません。次回は活動報告の方では蘭嵐でしたが1話間に入ると思います。頑張って今日中にでも投稿します。

次回もよろしくお願いします。

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