第零章 Past DayS Ⅱ
こんにちは。
これが今年最後の投稿になると思います。
本編とは異なる物語ですがよろしければお楽しみください。
~第零章 Past DayS Ⅱ~
私が士官学校に入学した最初の年が終ろうとしている。学校内は士官学校最大のイベントである模擬戦の話で持ちきりだ。私にはあまり興味がないことだった。私の能力は完璧な補助系、能力の質も決して優秀とは言えない。私は今、自分のクラスの席から一人の子を見つめている。ロイテル・アーガマ、 彼はどこか不思議な雰囲気な子だった。くすんだ金髪に綺麗な青い目、私には彼がとても神秘的だった。いつから彼にこんな感情を抱くようになったのだろう、でもいつも彼を見ていてしまう。
「どこか寂しそう・・・・」
「美華、どうしたの?」
突然の声に私は驚いた。私の机の横には二人の女の子がいた。
「寂しそうって、何かあったの?才色兼備のお嬢様にも悩み事があるとは・・」
「私達みたいな庶民とは違うから大変なのよ」
二人は私の友達の子、由記とカヤ、どちらもいい子で今はこんなことを言っているけど普段は私を何一つ特別扱いしない、それが私は一番嬉しいこと。
「二人ともまたそんなこと言って!!あと私の名前は美華」
三人の少女は楽しそうに笑いあった。
「今日の午後暇?遊びに行かない?」
「いいね、私は空いてるよ」
「美華は?」
「ごめん、私ちょっと予定があるの」
「なに?もしかして彼氏できたの?」
美華は顔を少し赤くして答えた。
「違う、違う、バイトの面接・・・」
「えぇーーーー!!!」
突然、教室が静かになり教室のドアが吹き飛び少年が転がり込んで来た。
「喧嘩だって」「隣のクラスのクロスだって」「あのクロス財閥の・・」
美華達の教室に転がり込んだ少年を追うように二人の少年が教室に現れた。一人は短髪に堂々とした風貌だった。もう一人は召使のようで静かに立っているだけだった。
「俺を模擬戦のチームに入れたい?自分のチームの立場を考えろ」
地面に倒れ込んだ少年が起き上がり能力使おうとした。
「腕がぁぁーーー」
地面に倒れていた少年の腕が捻じ曲がる。
「せっかく手を抜いてやったのにな」
私は三人の姿をただ眺めていた。クロス財閥、アステリオスの中でもトップクラスの財閥。そして彼はトゥウィス・クロス、クロス財閥の次男ですでにBクラスの能力者。彼の能力は物体を捻ること。その時、私の横にいた由記が教室から出ようとするクロス君達に声をかけた。
「教室、直していきなさいよ!!」
クロスはゆっくりと振返り由記を睨んだ。
「俺に言っているのか?」
由記はこのクラスの学級委員だった。もとから正義感の強い由記は黙っていられなかったのだろう。
「そうよ、そんなことも分からないの?」
クロスは鼻で笑い教室を出ようとした。由記はクロスに近づき肩を掴み振り向かせた。
「調子に乗るなよ」
クロスは由記の手を掴み上へと上げた。クロスは由記の手を強く握り、由記の顔は痛みで歪んだ。
「やめてください!!」
私は無意識に立ち上がり言葉を発していた。クロスは美華を睨みつける。クロスは美華の顔を見つめ、由記の手を放し美華へ近づいて行く。
「君は神花財閥の神花 美華さん」
クロスは美華に近づいた。美華は怯えながらクロスを見つめていた。その時、クロスの前を一人の少年が横切った。彼の行動は明にクロスを侮辱するような行動だった。クロスはすぐにその少年に声をかけた。
「お前、何様のつもりだ?」
少年は無視して教室の出口を目指す。クロスは少年に近づき思い切り肩を掴み振返らせる。少年は無表情でクロスを見つめる。
「いい度胸してるな」
少年は何も答えない。すると別の少年が二人に近づいた。
「クロスさん、すいません。こいつ変わった奴なんです。悪気はないので許してください、ロイテルも謝っておけって・・」
仲介に入った少年の言葉を遮るように、クロスは仲介に入った少年を突き飛ばす。
「お前には聞いてない」
クロスがロイテルを睨みつける。
「何か言えよ」
ロイテルは顔を上げクロスを睨みつけた。クロスの腕がロイテルに伸びる・・・
教室の中は静まり返った、集まっていた野次馬達は目を丸くしていた。
「よわ」
教室の床にはクロスがのびていた。ロイテルは一言だけ言って教室を出て行った。
「ロイテルくんが強いって本当だったんだ」
隣にいたカヤが呟いた。私はすぐに状況に気付き教室を出た。廊下を歩くロイテルくんをすぐに見つけ近づいた。
「さっきはありがとうございました」
ロイテルは少し驚いた様子で美華を見た。
「二回目ですね。助けてくれたの・・・」
私ははっきりと思い出した。この人は前にも私を助けてくれた。入学してすぐに先輩達に絡まれている所を同じように助けてくれた。
「気にしなくていいよ」
ロイテルはそれだけ言って廊下を進み始める。美華はロイテルの背中に深くお辞儀をした。
「二回目?」
ロイテルは何も覚えていなった。今の彼にとってこの世界は興味のないものだった・・・
私は今、第五区の小さな喫茶店の中にいる。面接はただの顔合わせ程度ですぐに採用と言われた。店長は気さくそうな人で、和風な店に私の雰囲気が良く似合うと喜んでくれた。私はバイトしなくてもお金に困らない、でも親のお金でただ楽しく生活することが嫌だった。だから両親を説得してバイトを始めることにした。この店は新しく出来るショッピングモールに移転するらしく、その為に新しいバイトを募集していた。私は店長に言われたまま書類に目を通していた。すると店の扉が開いた。
「遅くなってすいません、学校で呼び出されて」
入り口にいた人物を見て私はここが現実か疑った。
「ロイテルくん、そこにいる子が新しいバイトの子。可愛い子でしょ?」
彼は私を静かに見つめていた。私も彼を見つめ続けた・・・。
「ロイテルくん、よろしくお願いします」
この時の私はどれほど幸せそな顔をしていたのだろう、そしてこれからの生活にどれだけ夢と希望を膨らましていたのだろう・・・
~つづく~
この作品を描き始めてから10ヶ月ほどたちました。自分の書きたいことをただ書く作品が少しでも皆様を楽しませることが出来れば大変嬉しい限りです。
まだまだ未熟な作品ですがこれからもよろしくお願い致します。
鳴谷 駿