第二章 天纏
今回もよろしくお願いします。
良いBGMに恵まれるとはかどります!!!
~第二章 天纏~
聖痕祭数日後 首都アステル中央王宮内 大ホール
ホールの中央には大きな楕円状のテーブルがあり、実に多くの色が席についていた。
「皆さん、元気そうでなによりです。」 とエスナ王女が言った。
楕円状テーブルの端にエスナが座り、片側にはハウンズの各隊長とヅバイが、反対側には犯罪者達が顔を並べていた。
「今回お集まり頂いたのはお願いがあるからです。この世界は今多くの問題を抱えています、しかし誰もそのことに目を向けず何もしない、だから誰かがこの世界を変えていかねばなりません・・・・」
紫の長い髪をした女が王女を睨みつけて言った。
「これが人にものをお願いする状況かい?」
「その通りだよ!!姉さん」
「そこのバカ、早く手錠を外せ!!!」
紫の髪の少年と赤い目の少女が続いた。
「すいません・・・・・」 少年と少女は黙り込んだ。
紫の髪の女の喉元には刀が、少年と少女には銃口が向けられた。
「二人ともやめなさい、私はこの人達と話したいの」
リゼは錠を下ろし、着物に軍服を羽織った女は刀をしまった。
「第三小隊の隊長は何でいつも会議に顔をださないのかしら」
ハウンズ側の顔ぶれは王女側からヅバイ、四季、リゼ、着物の女、空席、細目の男。
反対側は青い目の少年、赤い目の少女、紫髪の女、紫髪の少年、全身を鎖で繋がれた男、口元を塞がれた赤髪の女と並んでいた。
場が静まった所で王女が話しを再開した。
「私は力が欲しいのだからあなた達の力を貸してもらいたい、もし力になってくれるのなら十分な見返りを約束するわ」
「強い奴と戦えるのか?」 全身を鎖で繋がれた男は王女に問いた。
「もちろんよ、戦争をするのだから」
全身を鎖で繋がれた男は黙り込んだ。
「私は地位も欲しい、例えばハウンズの隊長とか」と紫の髪の女は言った。
「いいわ、あなたが本当に力を貸してくれるなら」
ヅバイは驚き王女を見つめた。
「そこの二人はどうする?」 四季は青い目の少年と赤い目の少女に尋ねた。
二人は顔を見合わせ、小声で話して少年は言った。
「二人一緒なら・・・・」
「この二人は第一小隊に入隊させてよろしいでしょうか?お姫様」
突然の四季の行動の誰もが驚いた、王女は四季に押され頷いた。
「それでは二人は頂きます、後のことはお任せします」
四季は二人を連れ去るように部屋を出た、それに続き細目の男も立ち上がって言った。
「第五小隊には君達のような化け物はいらないよ、私も失礼させてもらう」
そして、細目の男も部屋を出た。
「何故こうも身勝手なのだ」 ヅバイは大きくため息をついた。
「まあいいわ、皆さん力を貸してくれるようだしね」 王女は満足げに笑っていた。
口元を塞がれた赤髪の女は何か言っているようだったが誰も彼女を見なかった・・・・
セルギア王国 収容所付近
「作戦は昨日伝えた通りだ、私達が正面から襲撃して守備隊をひきつける。そのうちに別働隊が仲間の解放を行う。ハウンズとか言う奴らが出てくる可能性が高い、十分に気をつけてくれ」
金色の目の女ジャンヌは通信を終え、ドーム型の収容所へ向かう。
「昨日の夜、うちの女神とやりやったらしな、小僧」
監視役の男は望遠鏡を覗きなが話しかけてきた。
「あぁ」
ロイテルは昨日のことを思い出した・・・・・
「ロイテル、君は確かに強い。でも動きが単調すぎだ」
ロイテルは地に伏せ、喉元には剣先が突きつけられていた。
「何て言うか、攻撃が正直すぎだ」
ジャンヌは剣を砂に戻してロイテルの頭を撫でていった。
「明日も待っているよこの場所で」
負けたことはそんなに気にならなかった、でも俺は今もあいつを倒す方法を考えている。リシアと同じくあいつのことが気になるのか?誰かに勝ちたいと思ったのは初めてかな・・・
「うちの女神が久しぶりに嬉しそうだったよ、俺達じゃぁ相手にならないからさ。小僧、良かったら相手してやってくれよな。あの人は他人に弱みを見せない、全部自分で解決しようとする人さ」
「あぁ」
収容所最深部
「ここにいるのね」
紫の髪の女ヴァイオレットは厚い扉の前に部下と共に立っていた、鈍い音と共に扉が開く、部屋の奥には両手を鎖で繋がれ壁に貼り付けられた男がいた。
「あなたがビズル?」
男は長く伸びた髪の隙間から眩しそうにヴァイオレットを見た。
「久しぶりの来客がこんな美人とは、俺の人生も捨てたもんじゃないね」
「私と一緒に来ないかしら?悪いようにはしないわよ」
男は大きなあくびをして言った。
「そうだな、そろそろ退屈してきたことだしな」
その頃、収容所の外は戦火に包まれていた。
第二小隊と第三小隊を中心とした部隊が反政府軍と交戦していた。
ルイは収容所から狙撃していた。
「隊長、反政府軍の動きがおかしいです。これじゃまるで時間をかせいでいるみたいですよ」
リゼリには通信に気を配る余裕がなかった、二人の大男の能力者に苦戦していた、二人は砂を金属に変えて襲い掛かる。
「でかい図体で動きまわるな」
ジュラルは障壁で収容所を守っていた、ユウも砂を金属に変える大男と戦っていた。
「あなた、やるわね」
ジャンヌは着物を着た女と戦っていた、着物を着た女は自分の背丈と同じ位の大刀を軽々と振るう。
着物の女は第三小隊最強包刃 愛、彼女は重さを支配する、自身の重さ、刀の重さ、彼女の触れるすべて重さを支配する。
二人の戦い方は対象的だ、ジャンヌは様々な武器を造り使う、愛はひらひらと攻撃をかわしただ大刀を振るう、ジャンヌは地の利や戦法を持って武器を使う、愛は反射のみで動く作戦?戦法?そんなもの彼女にはない、だが強い。
愛の攻撃は確実にジャンヌを追い詰めて行く。
「私の国ではね、命のやりとりをする時は名を名乗るのよ。ジャンヌよ、悪いけどあなたの力は危険よ」
ジャンヌは大量の砂を空へ巻き上げる、それらが無数の剣となり辺りに降り注ぐ、黄金の風がジャンヌを包み込む。
愛はそれらを簡単にかわしジャンヌを見て言った。
「包刃 愛、参る」
聖痕祭数日後会議後 王宮内ハウンズ第一小隊の住処
王宮の上層階に位置するこの部屋は広く、ガラス張りで白に統一された部屋はどこか冷たく感じられた、そこには眼鏡の女が一人コンピューターと向き合っていた。
「クロア、戻ったよ。新入りだ、よろしく頼むよ」
クロアと呼ばれた眼鏡の女はチラッと三人の姿を確認して言った。
「いやです」
「そう言うなよ、この年齢で能力に関してはAクラスだぞ」
「私は戦い嫌いですから」
四季は特に気にせず、話を続けた。
「まぁ一応自己紹介をしよう。私は箱美芽 四季第一小隊隊長だ、あっちの眼鏡はクロア・クロスでAクラスの拒絶する者で事務だ。以上二名が第一小隊だ」
赤い目の少女は思わず突っ込んでしまった。
「二人って何よ!!!」
「少数精鋭だ、お前らも自己紹介しな」
少女は嫌そうに口を開いた。
「私はルー・レイサス、炎を操る者よ」
青い目の少年も続いて口を開いた。
「僕はフロル・レイサス、氷を操る者です」
四季は軽く拍手をして言った。
「二人ともまだ子供だ、クロア面倒をみてやれよ」
四季はそう言って部屋を出ようとした。
「私、今日で辞めますので」
「えっ・・・・」
四季も流石に足を止めた。
「本気なのか?」
「確かにこの仕事は給料もいいし、楽ですが、子守はごめんです」
「こいつらはいい子だよ!!!たぶん・・・」
「私が聖痕祭の報告書を読まないと思いますか?」
「もう更生したよ」
クロアは部屋から出よう、三人に近づいた。そしてルーを見た。
「ルーでしたっけ、この子だけならいいわ」
四季は驚き、ルーはフロルの顔を見た。
「本当か?」
クロアはルーをじっと見つめ微笑んだ。
「よろしくね、ルーちゃん。隊長、今日は帰りますこの子のこともあるので」
「わかった・・・」
そう言って、クロアはルーを連れて部屋を出た。
「僕は?どうなるんですか?」
四季は天井をじっと見つめて言った。
「一人で生きて・・・、私の家に来い」
「よろしくお願いします」
フロルは深々とお辞儀をした、四季は何だか笑ってしまった。
「家事はできるか?私は何も出来ないものでな」
「多少はできると思います」
収容所最深部
ビズルは鎖から解き放たれた。
「腕は鈍ってないかしら?」
ビズルは両手を胸の前に持ってきた、両手の間に小さな黒い玉が現れ、それを壁に飛ばした。
壁に大きな穴があく、綺麗に丸く壁が消滅する。
「この通りでございます」
ヴァイオレットは満足そうに微笑んで言った。
「最初にこの建物を消してしまってくれる?」
「問題ないがみんな死ぬよ?」
「私はヴァイオレット・サーヅよ、世界最強の空間操作者よ」
「ジャンヌ様、収容所内部に到着し・・・・・」
黄金の風の中からは黄金の鎧をまとった騎士が現れる、そして手には大きな黄金の槍が握られていた。
二人が距離を詰めた時、轟音と共に収容所が崩れ始める。
リゼリ達も反政府軍もその光景に動きを止めた。
収容所だった所は丸く窪んだ大きな穴が出来ていた・・・すべては消え去り深淵へ繋がる穴が現れた。
~つづく~
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次の投稿もすぐ出来そうな勢いです、がんばるぞーーー!!!
活力の原因は澤野弘之様です、サントラとかに興味がある方はググってみてくださいね。