第閑章 Daily Daily Ⅰ
お久しぶりです。
一度完結した作品ですが、再び書かせていただき大変嬉しい限りです。
この話は三章と四章の間のハウンズの日常を描いた話になります。今の所、戦闘パートなどは考えておりませんが、普段とは違う彼らのやり取りに楽しんでいただけると嬉しい限りです。
~第閑章 Daily Daily Ⅰ~
「とっ言う訳だ、後は頼んだよ」
フロルは肩を落とし、大きくため息をついた。その様子をニヤニヤとクロアは眺めていた。部屋全体が白に統一された第一小隊の住処は以前の冷たい感じから変化していた。クロアは椅子の背凭れへ寄り掛かり、机の前に立つフロルへ再び目を向けた。
「いやー私も本業が忙しくて、すっかり忘れていたよ。今年の士官学校への模擬授業が第一小隊だったなんて」
「クロアさん、あなたの本業がハウンズです」
クロアはフロルの指摘をさらりと流し話を続けた。
「悪く言えばハウンズは基本的に問題児のお預かり所だからね。あんまり問題児ばかり集めると問題だ。そこで士官学校へ出向いて優秀な子に早めから唾をつけておくのさ、その為の視察の一環として私達が直に士官学校に出向き品定めをする訳。それを毎年、各小隊で順番に行っている。うちは今までは二人しか居なかったから、外されていたんだけど君達が入ったからねぇ・・・・」
「それで僕に士官学校に行って授業を行えと?」
クロアは軍服の胸ポケットのささっていたペンを抜き、書類の裏へ何かを書き始めた。
「これが士官学校のデータベースへのアクセスIDとパスワード。いい子が居たらしっかり唾つけて来てよ」
クロアは紙を渡すと再び、ルーのマネージャーとしての副業へ専念し始めた。フロルは深くため息をつき部屋を後にした・・・・・。
部屋を出たフロルは日付と場所以外の情報を、何一つ与えられていないことに気付いた。
「きっとクロアさんに聞きに戻っても、『私もやったことないんだから、分かる訳ないでしょ』とか言われるだけだよなぁ。どうしようかなぁ」
フロルは頭を抱え考えた。するとフロルのお腹から鈍い音が響いた。
「そう言えば今日はまだ何も食べてないや」
フロルは携帯の時計を見ると(PM)1時過ぎを時計針は指していた。
「昼食にしよぉ」
フロルは王宮の高層階に位置するカフェテリアへと向かった。フロルはよくこのカフェテリアを利用する。いや、どちらかと言うと四季がこのカフェテリアを好んでいたのだった。王宮の高層階に位置するこのカフェはこのアステルの中で最も高い位置に位置する飲食店だ。四季曰く『この店で食べられるのは優れた人間の特権』と言っており、特に町を見下せる窓際の席は四季のお気に入りであった。フロル自身も窓際の席は好きであった。ただ四季のように見下すのが好きなのではなく、そこから見える風景が好きなのであった。
「いらっしゃいませ」
フロルはいつも通りの店員の少女に出迎えられた。ミディアムの丈に明るめの茶髪、一日毎に左右で束ねる髪を変えるこの少女とは軽い顔見知りであった。
「今日は一人ですか?」
フロルは軽く笑い頷いた。すると少女は嬉しそうに笑い、普段通りの窓際の席へと案内した。店全体はピークを過ぎたようで客はフロルを含めて4組ほどであった。
「決まりましたら私をお呼び下さい!!!」
店員の少女の気迫にややフロルは驚いていた。大抵フロルがこの店に来るといつもあの子が接客してくれていた。しかし、今日の態度は明らかに普段よりも浮かれている?
「何かいいことでもあったのかなぁ?」
フロルはメニューを開き、ランチタイムが終っていることに気付いた。フロルがいつも食べるのがパスタか、ベーグルのセットだった。
「たまには違うのも食べてみようかな」
「こちらはいかがでしょうか?」
フロルの眺めるメニュー突然、腕が割り込みパエリアを指していた。フロルは驚き、分っていながらも腕の持ち主へ顔を向けた。
「どうしてここに?」
フロルは少女の方を向いた。少女は嬉しそうに笑って答えた。
「私の仕事はフロルくんをおもてなすことですから!!」
「え・・・」
「あっ・・・・・」
少女は一瞬顔を赤め真っ直ぐにフロルを見つめて言った。
「第三小隊日比形 望です」
フロルは望の突然の自己紹介に驚き一言だけ返した。
「パエリアでお願いします」
二人は凍りついたように暫くの間固まっていた・・・・・・
「いやー、何か若いねぇ」
ジャスはフロル達のやり取りを少し離れた席から眺めていた。
「本当ですね、何か士官学校時代を思い出しますね」
ちょうど昼食を取り終え、お茶をしていたジャスとルイは二人の姿を眺めていた。第二小隊は外から見るとリゼリとジャスの勢力に二分されているように思われがちだが、実際はジャスとルイは仲が好く二人でよく昼食を取っていた。
「それにしてもあの第三小隊の子、望ちゃんだっけ?何でここで働いているのかしら?」
「第三小隊は他に比べて人数が多いうえに、隊長の桜家があれだから追加の予算とか下りなくて辛いらしいよ。でも確かあの子、もとはハウンズ志望じゃなかった気がするんだけど」
ルイは「へーぇ」と頷きながら二人のやり取りを眺め続けていた。
「でも第一小隊のあの子、第一小隊には勿体無いよね。顔もけっこう可愛いし、能力も優秀、人柄も良さそうだし、第二小隊にくれば良かったのになぁ。うちの小隊って派手な能力者いないから」
ジャスはルイの言葉を聞いて笑っていた。
「この前の任務で一緒に戦ったけどいい子だったよ。でもあの子は四季のお気に入りだから手を出したら殺されるかもよ」
「だよねぇ~、箱美芽隊長、時々でいいから貸してくれないかなぁ」
ルイは眉間に皺を寄せフロルへ厚い視線を送っていた。
フロルは自分の何故このような状況になってしまったのか全く訳が分らないでいた。フロルが座っている席の正面には望の姿があった。フロルから注文を聞いた望はなんと軍服へ着替え、フロルへパエリアを持って来た。それも二人分のパエリアをテーブルへ並べ、フロルの正面に座り『いただきます』と言って食べ始めたのであった。
「早く食べないと冷めちゃいますよ」
フロルは言われるがままパエリアを口へと運んだ。フロルは猫舌だった。しかし、フロルが中々食事へと手を付けられなかったのは別の理由だった。
「何故、君はそこに座っているの?」
望はパエリアを食べきり、スプーンを置きナプキンで口を拭き答えた。
「詳しく話すと私の貴重な休憩時間が終ってしまうので、要点だけ言わせていただきます。士官学校への模擬授業の件でお困りだと聞いて」
望はニッコリと笑い首を傾けた。
クロアは電話を肩と頭で挟みながら器用に通話しながら、パソコンで仕事をこなしていた。
「そう、ありがとう。ヘルト」
クロアはフロルが部屋を出てすぐに第三小隊のヘルトへ電話していた。
「流石に士官学校出ですらないあの子一人に模擬授業を任せるのは可愛そうでね。前回の愛ちゃんとのゴタゴタの件もあるし、そっちで都合つけてくれないかなーと思って。でも本当に仕事早いわね、事務の能力なら間違えなくうちに来れるわよ」
クロアは通話をしたまま笑った。
「ただはやだ?」
クロアは大声で復唱した。
「自給を払えってこと?あんたこっちが下手に出れば調子に乗りやがって、別に他の小隊に頼んだって」
ヘルトがクロアに何かを言った。
「そうね。第二小隊に、いやリゼリに借りを作るくらいなら安いモノよ。一人当たり日給1でどう?」
クロアは眉間に皺を寄せた。
「わかった、1.2出すわよ。でも第一小隊に恥をかかせるようなことになったら、第三小隊がどうなっても知らないわよ」
クロアは勢いよく電話を受話器へと置いた。
「ねぇ、四季。あなたが行けばこんな無駄な手間はかからないのだけど」
クロアはソファーで寛ぐ四季を睨みつけた。
「フロルの奴にも息抜きは必要だろ、私達と一緒じゃあいつは気を使いぱなしだ」
クロアは呆れながらも四季の意見に賛成でもあった。
「でも四季、知ってる?フロルってけっこう人気あるんだよ」
四季は『そうか』とだけ言ってソファーの前のテーブルに置かれた雑誌へ手を伸ばした。
「確か二人でよく行くカフェの店員の子、フロルのことが気になるとか・・・。いやー若い子達はいいねぇ~」
「あれ四季?どこへ行くの?」
クロアは一人になった部屋の中でクスクスと笑っていた。
~つづく~
最後まで読んでいただきありがとうございました。
久々に会話を多く書いたように思いました。たぶん四話構成くらいになるかと思いますが、何となくでいいので読んでくだされば嬉しい限りです。
また暫くの間、よろしくお願いします。