最終章 FINALE
最後までお付き合いくださりありがとうございます。
~最終章 FINALE~
「俺は・・・」
少年は少女の膝の上で目を覚ました。少女は少年の綺麗な青い目を見つめ、両手で少年の頭を抱え込み、自身の胸へ押し付けた。少女の目からこぼれ落ちる涙が、少年の頬を静かに流れた。
「よかった、本当に良かった・・・・」
少年は少女の手をそっと払い、少女の胸から顔を話し少女と向かいあった。
「ロイテル、私は気付いたの・・・私が・・・」
少年は涙を流しながら話す少女の話を強引に遮った。
「君は誰?」
少女は唇を噛み締め、ただ少年を抱きしめ泣き続けた・・・・・
―神は再び眠りへとついた。神は眠りにつく前に一つだけ言い残した―
『我はこの世界に大変興味を持った。この世界が今までの世界と同様に終わりを迎えるのもよかろう。しかし、私は今までと異なった結末を見てみたい。貴様らに三年の猶予を与えよう、三年後私が再び目覚めた時、貴様らが私の前にいることを楽しみにしているぞ』
―神は再び眠りへつく、三年後の目覚めの時へ向け・・・―
エスナは洗面所の鏡に映った自分の顔を見つめた。エスナは洗面所に置かれていたハサミへと手を伸ばした。真っ黒に染めた自身の髪へとハサミを入れる。長く美しかった髪の毛が音をたて切られていく。エスナの目に鏡に映った銀色の拳銃が留まった。エスナはハサミを置き、拳銃へ手を伸ばした。
―共に夢を追う あなたに幸あれ―
この一文はエスナが銀色の拳銃に彫り込んだものだった。ハウンズへの入隊が決まったリゼリへエスナが送った、最初で最後のプレゼント。そして、リゼリはこの拳銃を一度も戦場で使わなかった。
「エスナ、これは?」
エスナは嬉しそうに笑い、リゼリへ渡したプレゼントを開けるように急かした。リゼリは恥ずかしそうにプレゼントを開けた。中には高級感を程よく感じさせる装飾のされたリボルバータイプの拳銃が入っていた。
「これは私からのプレゼント」
リゼリは少し頬を赤くして囁いた。
「ありがとう・・」
エスナはただニッコリと笑顔をだけを返した。リゼリは拳銃に彫られた文章へ目を向けた。
「共に夢を追う あなたに幸あれ・・・」
エスナはリゼリの握っていた拳銃へ手を伸ばし、ゆっくりと彫り込まれた文字を読み返しながら指でなぞった。
「私は父の夢を継ぐ、この世界を必ず一つにするの」
エスナは真っ直ぐな目でリゼリを見つめた。リゼリは何も答えずにエスナから視線を逸らした。するとエスナは寂しそうに顔を下げた。
「俺には夢なんてものはない、だから付き合うよ。エスナの夢に、最後まで」
エスナは嬉しさのあまりリゼリへと抱きついた・・・・
「別人みたいだな」
洗面所から出てきたエスナの髪は真っ黒に染められ、ショートヘアへと変化していた。
「そうね、きっと別人よ」
エスナはリゼリの拳銃をしっかりと握り締めていた・・・・
―過去から現在へ名の無い物語は動き始める―
untitled END
next to unbeinged・・・・・
最後まで読んでいただきありがとうございます。
これでuntitledは完結になります。
この続きはすでに投稿されており、unbeingedという作品で投稿させていただいております。よろしければまたお付き合いください。
この物語に最後まで付き合ってくれた方、本当にありがとうございました。
鳴谷 駿