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Acht;untitled  作者: 鳴谷駿
最終章 untitled
102/103

最終章 FINALE

最後までお付き合いくださりありがとうございます。


~最終章 FINALE~

「俺は・・・」

少年は少女の膝の上で目を覚ました。少女は少年の綺麗な青い目を見つめ、両手で少年の頭を抱え込み、自身の胸へ押し付けた。少女の目からこぼれ落ちる涙が、少年の頬を静かに流れた。

「よかった、本当に良かった・・・・」

少年は少女の手をそっと払い、少女の胸から顔を話し少女と向かいあった。

「ロイテル、私は気付いたの・・・私が・・・」

少年は涙を流しながら話す少女の話を強引に遮った。

「君は誰?」

少女は唇を噛み締め、ただ少年を抱きしめ泣き続けた・・・・・


―神は再び眠りへとついた。神は眠りにつく前に一つだけ言い残した―


『我はこの世界に大変興味を持った。この世界が今までの世界と同様に終わりを迎えるのもよかろう。しかし、私は今までと異なった結末を見てみたい。貴様らに三年の猶予を与えよう、三年後私が再び目覚めた時、貴様らが私の前にいることを楽しみにしているぞ』


―神は再び眠りへつく、三年後の目覚めの時へ向け・・・―



 エスナは洗面所の鏡に映った自分の顔を見つめた。エスナは洗面所に置かれていたハサミへと手を伸ばした。真っ黒に染めた自身の髪へとハサミを入れる。長く美しかった髪の毛が音をたて切られていく。エスナの目に鏡に映った銀色の拳銃が留まった。エスナはハサミを置き、拳銃へ手を伸ばした。


―共に夢を追う あなたに幸あれ―


この一文はエスナが銀色の拳銃に彫り込んだものだった。ハウンズへの入隊が決まったリゼリへエスナが送った、最初で最後のプレゼント。そして、リゼリはこの拳銃を一度も戦場で使わなかった。

「エスナ、これは?」

エスナは嬉しそうに笑い、リゼリへ渡したプレゼントを開けるように急かした。リゼリは恥ずかしそうにプレゼントを開けた。中には高級感を程よく感じさせる装飾のされたリボルバータイプの拳銃が入っていた。

「これは私からのプレゼント」

リゼリは少し頬を赤くして囁いた。

「ありがとう・・」

エスナはただニッコリと笑顔をだけを返した。リゼリは拳銃に彫られた文章へ目を向けた。

「共に夢を追う あなたに幸あれ・・・」

エスナはリゼリの握っていた拳銃へ手を伸ばし、ゆっくりと彫り込まれた文字を読み返しながら指でなぞった。

「私は父の夢を継ぐ、この世界を必ず一つにするの」

エスナは真っ直ぐな目でリゼリを見つめた。リゼリは何も答えずにエスナから視線を逸らした。するとエスナは寂しそうに顔を下げた。

「俺には夢なんてものはない、だから付き合うよ。エスナの夢に、最後まで」

エスナは嬉しさのあまりリゼリへと抱きついた・・・・


「別人みたいだな」

洗面所から出てきたエスナの髪は真っ黒に染められ、ショートヘアへと変化していた。


「そうね、きっと別人よ」


エスナはリゼリの拳銃をしっかりと握り締めていた・・・・



―過去から現在へ名の無い物語は動き始める―


untitled END



next to unbeinged・・・・・


最後まで読んでいただきありがとうございます。

これでuntitledは完結になります。

この続きはすでに投稿されており、unbeingedという作品で投稿させていただいております。よろしければまたお付き合いください。


この物語に最後まで付き合ってくれた方、本当にありがとうございました。

鳴谷 駿

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