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精霊と聖獣と魔族と魔王と……


 ロズは少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。


「精霊は、誰もが見えるわけではない。見えなくても、感じられなくても、確かに存在している。俺たちと同じく生きている。ただ、見えない人間が多すぎるだけなんだ」

「……いっちゃんは精霊だけど、(わし)みたいでしょ? 私みたいに見えているけれど、気が付かない人はいないの?」


 もし、精霊だと教えてもらえなかったら、確実に私はいっちゃんを普通の鷲だと思っていた。

 私の他に、そういう人がたくさんいても不思議じゃない。


「精霊は、ハレたちみたいに治癒能力といった聖なる力や、魔力がないと見えない。皆が見えていないのに、自分だけ見えることになるから、違和感を覚えるはずだ。だから、気付いていないという人は少ないかもな。周囲の人も、放っておかないだろうし……」

「それだけ、魔力持ちも珍しいってこと?」


 ロズは頷いた。

 そして、いっちゃんの方へと視線を向ける。

 

『人間からしたら、大昔のことになるわね。みんなが精霊が見えて、魔法も使えて、人間と精霊が仲良く暮らしていた時代もあったのよ』


 いっちゃんは遠い目をした。まるで懐かしむように。


 仲良く暮らしいてた人間と精霊。

 けれど、欲深い人間がひとり、またひとりと精霊を利用した。


 互いを尊重することはなくなり、人間は精霊を売買したり、飼い慣らそうと躍起(やっき)になった。

 精霊は狙われる度に、必死になって逃げた。他の精霊(仲間)がやられないようにと、手当たり次第に人間の魔力を抜けるだけ抜き取りながら。

 こうして、魔力がない人間が増え、魔法を使えなくなった。精霊も見えなくなっていった。


 人間と精霊の間には、大きな溝ができた。もう埋められることはないであろう、大きな大きな溝だ。

 ほとんどの精霊は人間との共存を諦め、別の場所で暮らし始めた。


 魔力がなければ、魔法は使えない。魔法に頼りきって生活をしていた人間たちは困り果てた。

 そして、魔法が使えないのであれば、精霊の力で何とかしようと考えた。

 自分たちの力で精霊を増やそうと、人間が好きだからと残ってくれた精霊を捕まえた。無理矢理、精霊同士での子を成させようとしたのである。


 そのことで、精霊を怒らせた。

 無理矢理、新しい命を宿されてしまった精霊だけは人間を許したが、他の精霊の怒りを沈めることはできなかった。


 そして、ひとりの精霊が人間を殺した。

 その精霊の魂は真っ黒に染まり、魔へと身を落とした。これが魔族の始まりである。


 闇が深く深くなると、そこには光が生まれた。

 魔族と対抗するかのごとく、聖なる力で魔を払う聖獣が現れたのだ。

 その聖獣は人間の手によって、無理矢理、命を宿されてしまった精霊の子どもだった。



「……それって、無理矢理にでも精霊に子を成させれば、聖獣が生まれるってことにならない?」

『なったわよ』


 いっちゃんの鋭く、低い声。

 先程までの明るい雰囲気はない。いっちゃんも人間を憎んでいるのだと、その声は言っている。


「そして、魔王が生まれたんだ」

「えっ? 魔王!? ちょっと待って。私、魔族も見たことないよ!?」

「生活区域を分けているならな。あったことがないのも当然だ」

『ロズベルトちゃんは、魔族側との外交を主に(にな)っていたのよ!!』


 鋭い空気は、なくなっていた。いっちゃんは、自慢げに胸を張っている。

 その様子に少しホッとしながらも、私の頭の中は大変なことになっている。

 精霊に、聖獣、魔王……。情報過多で頭がパンクしてしまいそうだ。


「えっと……、精霊を見るには魔力か聖なる力が必要で、この世界には精霊と魔族に魔王、聖獣がいる……ってことだよね? それで、魔族と人間は住む場所が違う……。あってる?」


 頷くふたりを見て、ホッと胸を()()ろす。

 折角、詳しく説明をしてもらったのに、理解が追い付かなくて申し訳ない。


「精霊は、見えない人が多いんだよね? 魔族と聖獣も魔力がないと見えないの?」

『見えるわよ』

「精霊は見えないのに、魔族と聖獣は見えるのは、何が違うの?」

『精霊に実体がなく見えるのはね、あたしたちが魔力の塊みたいなものってところかしらね』


 よく分からず、首を傾げた。

 だって、物凄く不思議だ。元をたどれば、魔族も聖獣も、精霊だったんだよね?

 それなのに、こんなにも違うのは何故?


『魔族の体は人間だったのよ。殺された人間の魂と、殺した精霊が混じりあったの。そして、死んだ肉体は魔族に生まれ変わったというわけ。今は、魔族同士の間に子を成せば、魔族の子が生まれているわよ』


 なるほど? 魔族は、人間と精霊が合体した存在ってことか。じゃあ、聖獣は? 


「聖獣も、精霊と何かが混じり合ったものなの?」

『聖獣に関しては、あたしたちも分かっていないわ。分かっていることは、聖獣を生んだ精霊が、とても人間を愛していたということね。魔族になった仲間たちのことも、人間のことも(うれ)いていた優しい子だから、神様からとても愛されていたの。神様は、心のきれいな生き物すべてを愛してらっしゃるもの』


 神様から愛された精霊だから、聖獣が生まれたってことか……。

 聖女と聖獣は、神様から愛されるということが必要条件かぁ。ということは、魔王はその逆?


「それじゃあ、魔王は神様から見捨てられたってこと?」

『いいえ。無理矢理、精霊同士の子を成させれた精霊が人間を呪って魔に落ちたの。その精霊が生んだ子があまりにも強い魔物だったのよ。その子が大きくなった時、魔族の頂点に立ったわ。魔族の王様ってことで、魔王と呼ばれるようになったってわけ』




 

お読み頂き、ありがとうございます!

分かりにくかったら、すみません。


かなり読み直して訂正も入れていたので、昨日は投稿できませんでした(´Д`;)

投稿が遅くなり、申し訳ありません。


少しでも、楽しんで頂けたら嬉しいです(((o(*゜∀゜*)o)))

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