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アメリアの中の人

第二章、はじまりました!

ここからは短編の続きとなります。

よろしくお願い致します(*´∇`*)

 

 私は、気が付いたらアメリアの中にいた。


 まるでテレビでも見ているかのように、アメリアから見えるものが私にも見えた。でも、それだけ。

 どんなにアメリアがつらい想いをしても、悲しんでいても、何もできなかった。 

 指をくわえ、アメリアの中から見守ることしかできなかった。


 けれど、今は私がアメリアの表に出ている。

 つらくて、悲しくて……。限界を超えたアメリアは、休んでいる。交代したのだ。



「疲れないか?」


 アメリアに美しいものを見せるために一緒に旅に出たロズベルト(ロズ)が声をかけてくれる。


 そんなロズの背中に向かって「大丈夫」と答えながらも、少しだけ腰が痛い。

 馬車には乗ったことがあるけれど、乗馬は初めてだ。普段使わない筋肉が悲鳴をあげている。

 とは言っても、ロズの後ろに乗せてもらっているだけなのだが。


「……少し休もう」

「えっ? 大丈夫だよ」

「急ぐ旅じゃない。普段、馬に乗りなれていないんだ。今は平気でも、後でつらくなるぞ」


 アメリアに話しかけていた時と違って、口調は少しだけ雑だ。けれど、同じように声は優しい。


 うーん。気遣いができるなんて、ポイント高いな。

 ロズにならアメリアを任せられると心から思えるようになるかもしれない。

 アメリアの気持ち次第ではあるけれど。



「ねぇ、ロズはどうして私がアメリアじゃないって分かったの?」


 木陰に腰を下ろし、おやつのクッキーをかじりながら問いかける。

 あ、このクッキー美味しい。サクサクのホロホロで、優しい甘さだ。


「ハレ、こぼしてる。ほら、お茶もここに置いておくからな」

「ありはほー!!」


 口角についたクッキーをロズは親指でぬぐってくれ、ぼろぼろとこぼす私の膝にハンカチを敷いてくれた。

 しかも、頼まなくてもお茶まで淹れてくれるなんて……。


「急いで飲むなよ。熱いからな」


 見た目はイケメンなのに……。なんて、完璧な──。


「おかん属性なの!!」

「はぁっ?」


 物凄い怪訝(けげん)な顔で見られている。それに、どことなく機嫌も悪いような……。


「おかんって、母親ってことだよな?」

「あれ? 声に出てた?」

「出てた? じゃねーよ。俺がおかんなら、ハレは小さな子どもじゃねーか」

「そんなことないよ。今も昔も立派な大人ですー!!」



 そう。私はアメリアの中に来る前も大人だった。二十四歳で、社会人二年目。

 お酒も飲めるし、車の運転もする。きちんと納税だってしていた。


 最後の記憶はかなり怪しいけれど、多分、私は死んでいる。痛いとか、つらいとかはなくて、それでも遠ざかる意識の中で、あっ! 死んだな……って思った。

 あれだよね。一ヶ月、仮眠だけって無理があったよね。


 私の勤めていた会社は、世にいうブラック企業というやつだった。

 それでも辞められなかったのは、次の就職先を見つけられないかもしれない……という不安からだった。


 もうね、辞めれば良かったのにね! 健康があって、はじめて何にでも取り組めるんだからさ。

 心身ともに、健康第一!! これに尽きる。


 薄れていく意識の中で思ったことは、次の人生は働かなくていいくらいのお金持ちに生まれ変わってみたいなぁ……何て言う、しょうもないものだった。


 それで、目が覚めたらアメリアの中にいた。

 アメリアの中にいて気が付いたのは、お金持ちの美少女だからって幸せになれるわけではないということ。

 私はお金持ちでも、美人でもなかったけれど、人並みには幸せな人生を送っていたから。……過労死したということを除いては。



「あっっつい!!」

「気を付けろって言っただろ!! 自分のことは治せないんだろ? 気を付けろよ」

 

 考え事していたからか、うっかりお茶を流し込んでしまった。

 ううぅ……、痛い。皮むけちゃったよ……。

 さっさと治癒しよう。この痛みは色々としみるやつだ。ご飯が美味しく食べれなくなっちゃう。

 

 意識を集中して、両方の手で唇をおさえる。

 ほわりとした、ぬるま湯のような温かさに上顎(うわあご)、舌、のどが包まれた。

 

「ごめん、ごめん。考えごとしてたら、熱いってこと忘れちゃった。折角、教えてくれたのにごめんね」

「ん? 謝ることなんかないだろ。普通に話してるけど、大丈夫なのか? 結構、熱かっただろ? 次からは冷めてから渡すからな」

 

 うぅっ。やっぱり、おかんだ。包容力がすごい。

 おかんを騙したままなんて、駄目だよね。仲間になるんだから、ちゃんと伝えないと……。

 

「あの……さ……、ロズに謝らないといけないことがあるんだよね……。騙すつもりはなかったんだけど……」

「うん? どうした?」

「自分に治癒……できるんだよね」

「……え? できないって言ってたよな? (まぶた)の傷も治せないって……」

「それ、嘘なんだ。本当にごめん!!」

 

 手を合わせて謝れば、ロズは何回か瞬きを繰り返した後、ホッとしたように笑った。

 

「なんだ。自分にも治癒は使えたのか……」

 

 ぼそりと呟かれた声は心の底から安堵したもので、申し訳なさが加速する。

 

「アメリアの傷がなくなれば、皆がまるで何事もなかったかのように罪を忘れてしまうと思ってさ。だから、治さなかった。治すにしても、それは私が決めることじゃないと思って……」

「そうか」

「……それだけ?」

「ハレがアメリア嬢のことを誰よりも近くで見てきたことも、想っていることも知っている。俺から言うことは、何もない」

 

 流石、アメリアファースト代表。

 

「ありがとう」

「礼を言われることじゃない」

「うん。それでも、嬉しかったから。ロズはおかんであり、おとんだね!!」

「何でだよっ!!」

 

 おぉっ! ナイスツッコミ!!

 ロズとは本当に良い関係が作れそうだ。

 この関係に名前をつけるとしたら──。

 

「私たち『アメリア親衛隊』だね!!」

 

 親指を立てて笑顔を向けたら、盛大な溜め息をつかれてしまった。()せないわぁ。

 

 

「……ハレといると、気が抜けんなぁ。……話を戻すぞ。どうしてハレがアメリア嬢じゃないって、気が付いたか聞きたいんだったよな?」

 

 そうだった。それが知りたかったんだよ。

 一回だけやらかしたけど、ほぼ完璧だったと思うんだよね。

 

「確信したのは笑った表情だけど、最初から違和感はあった」

「最初から?」

「視線が合ったからだよ。一瞬じゃなくて、しっかりと」

お読み頂き、ありがとうございます(*´∇`*)

な、なんと!!ブックマーク400人を越えました!

ブクマ、★の評価、本当にありがとうございます(((o(*゜∀゜*)o)))


第二章からは、明るい内容が増えます。皆様に楽しんでもらえるのか……、ドキドキしています。

少しでも皆様の読書ライフに色を添えられますように!!!!

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