ふにゃふにゃ人
星屑による星屑のような童話。
お読みいただけるとうれしいです。
「ふにゃふにゃという名前の不思議な生き物は、とてもやわらかくて伸び縮みができます。彼は自分の形を自由に変えることができるので、色々なものに変身したり、隙間に入ったり、ひものようになって飛んだりすることができます。彼はとても好奇心旺盛で、世界中の色々な場所を旅したいと思っています。
ある日、ふにゃふにゃは空港にやってきました。彼は飛行機に乗って遠くの国へ行きたいと思いましたが、チケットもパスポートも持っていませんでした。そこで彼は、人間の姿に変身してチェックインカウンターに並びました。しかし、彼は人間の言葉を話せなかったので、係員に怪しまれてしまいました。彼は慌てて逃げ出しましたが、警備員に追われることになりました。
彼は走りながら、荷物を運んでいるカートを見つけました。彼はカートの上に飛び乗って、荷物の中に隠れました。カートは飛行機の方へ向かって走り出しました。彼はラッキーだと思いましたが、その時、荷物の中から猫の鳴き声が聞こえてきました。彼は驚いて荷物から顔を出しましたが、そこにはたくさんの猫が入ったケージがありました。彼は猫が大好きだったので、嬉しくなってケージの中に入りました。猫たちは彼を仲間だと思って優しく迎えてくれました。
やがてカートは飛行機の中に入りました。彼は猫たちと一緒に飛行機に乗ることができたのです。彼はどこへ行くのかわかりませんでしたが、楽しい旅が始まると感じました。彼は猫たちと仲良くなって、一緒に眠りました。」
――うーん。
白壁に囲まれた、とある閉鎖空間。
そこにある、100型サイズはあろうかという大きなテレビ画面のようなものに映しだされた文字を読み切ったひとりの男が、うなるような声を出してため息をつきました。
それを横目で見ていたもう一人の男が、彼に声を掛けます。
「ん? どうしたのさ、ため息なんかついて」
「いや、実はね……。最近このあたりで流行っているという『生成系AI』なるものを使ってみたんだ。『ふにゃふにゃしたものが大活躍するお話をきかせてください』って書き込んだら、こんな話が数秒で出てきたんだよ。キミ、どう思う?」
「どれどれ……ふむふむ。まあ、数秒ってことなら、それなりに起承転結もあって馬鹿にはできないかもね。ただし、これがネット上のどこかにある文字をただコピペしたものではないという、前提ではあるけれど」
「そうだよね……。ツッコミどころ満載だし、話の内容もあんまりたいしたことないなあ、っていう感じだな。まあ、創作系の人なら、お話書く時のヒントというか、プロット書くときの原案くらいにはなるかもね」
「うん、確かに!」
二人は、頭のてっぺんに生えた、アンテナのような細長い突起物を揺らしながら、緑色の顔の中にある紫色した口を大きく開けて笑いました。体全体がゼリーのように柔らかいせいか、大声を出すと体が崩れ、床の上にだらりと広がってしまいます。
元の体の形に戻るのに、少し時間が必要でした。
「でも、よかったよ。『ふにゃふにゃ』で検索したり地球人の作ったAIに探らせてみても、これくらいのことしか、今のところは出てこないんだ。オレたち『ふにゃふにゃ人』のことが地球人にバレていないかと不安だったけど、それは心配しすぎだったよ」
「ああ、そのとおりだ。これからも、安心して地球人の社会に潜入できるな」
二人を乗せた銀色の宇宙船は、一時的な母星への帰還のために地球周回の軌道から外れ、暗黒の宇宙空間へと飛び去ったのでした。
おしまい
お読みいただき、ありがとうございました。
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