オリジナルイラスト『マンガみたいって言われたって、だって好きだもん』
物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには、1つずつ名前と物語があります
手にとって下さった方が、楽しく笑顔で物語の続きを作っていってもらえるような、わくわくするリボンを作っています
関西を中心に、百貨店や各地マルシェイベントへ出店しております
小説は毎朝6時に投稿いたします
ぜひ、ご覧下さい♡
Instagramで、リボンの紹介や出店情報を載せておりますので、ご覧下さい
hhtps://www.instagram.com/iroit0
ギラギラと照りつける太陽は、私の体力を、これでもかというくらいに削ぎ落とす
ゆらゆらと立ち上る湯気が見えるのは気のせいだろう、いや気のせいではない
アスファルトは、肉が焼けるんじゃないかと思うくらいの温度になり、打ち水をした場所からゆらりと蒸気が昇っている
まるでフライパンの上を歩いているようだ
少し先にある木の陰に早く行こう
私はフラフラと汗を拭いながら前を進む
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『えー!今日、学校来ないの?なんで!寂しいじゃん』
電話の向こうからは寝ぼけた声で、ごめんと一言
せっかく今日も会えると思って楽しみにしていたのに、一瞬で周りがどんより暗く見えてくる
『うん。うん。うーん。じゃあね』
着信画面から、仲良さそうに彼氏と二人寄り添う待ち受け画面に変わる
『何?どうしたの?』
『今、起きたし今日は来ないってさ』
『サボりか。良い身分だねぇ』
同じ部活の彼女とは、学科も同じなので次の講義を受ける為、教室で一緒に座っている
大学に入り、初めて出来た彼氏は一つ上の先輩
部活でも人気があり、他大学からも彼に熱を上げる女の子は数しれず
もちろん私も、そのうちの一人だった
何をどう気に入ってくれたのか分からないが、今はこうして彼氏彼女になって幸せな大学生活を過ごしている
なのに、どうしてかいつまで経っても片想いのような気がしている私は、大きなため息を一つ
『ふぅ。じゃあ、ちょっと行ってくるわ!』
『え?は?どこ行くの!』
『彼氏んち!』
バタバタと私は机の『うさぎイラスト』のノートを片付け、授業の合図が鳴る前に彼女に別れを告げた
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じりじりと照りつける太陽は、私の全体力を奪いにかかる
学校から歩いて20分程にある彼の家
山の上に住む彼の家は、この鬼の坂道を抜ければすぐなのだが、どうにもこうにもこの暑さで足が思うように進まない
愛する人の元までたった20分、されど20分、あぁ私を阻む恋の坂道はなんて酷なの
片想いの自分に酔いしれながら、くくくと心でニヤリと笑う
それにしてもこの坂道は、しんどい
目を細くしながらゆっくり歩く私の隣を、ブオーンと軽く坂を駆け上がる車
少し先で止まったトラックの窓から、ひょっこり顔を出したおじさんが心配そうに私に声をかけた
『嬢ちゃん大丈夫か?乗るか?』
『だ、大丈夫です。ありがとうございます』
フラフラと歩く私は、自分が思うよりも危なげに歩いていたのだろう
気にかけてくれる優しいトラックの方、ありがとうございます。私は愛の為この試練を乗り越えます。と軽く頭を下げながら私は鬼の坂道に再度挑む
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やっとの思いで辿り着いた私は、汗を拭うのも後にして、携帯を取り出し彼に電話をする
『もしもし?どした?』
『起きてる?ねぇ外見て?』
『は?なに?外?どこの?』
『ベッドの横の窓』
2階の窓がガラリと開き、目を丸くした彼が私を見つめる
『来ちゃった』
『おまっ・・・』
窓を乱暴に閉め、靴下も履かず、かかとを踏み、勢いよく階段を降りてきた彼は、私の元へと立つ
『来ちゃったじゃねーわ!マンガみたいなやつだな、ほんと』
『漫画?』
『ったく』
嬉しそうに私の頭を撫でてくれていると思ったのは、やっぱり気のせいか
『ごめん、迷惑だった?』
『え?なんで?めっちゃ嬉しいに決まってんじゃん!』
頭を撫でる手が、今度は優しく頬をなぞる
『うん。お前のそういうとこも可愛い』
人目を気にせず抱きしめる彼の温度を感じた私は、両思いで良かった。とホッと胸を撫で下ろした
·
終
最後まで読んで下さり、ありがとうございます
色々なお話を書いておりますので、どうぞごゆっくりとしていってもらえると嬉しいです
また明日、6時にお会いしましょう♪