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僕が失敗作になった日

かなり辛い描写があります。

codeHM(コードヒュミナ)1016-BDv(ブリードバージョン)25、お前は失敗作だ。廃棄する」


「……え?」


 何を言われたのか理解できず、僕は首を傾げしかなかった。


******


 魔法で世界を支配してきたヒト、【エルナ族】。彼らには2つの人種がある。どちらも長寿で少し尖った耳をしている。文化の違いはあれど見た目に差があるわけではないそうだ。僕の周りは【黒エルナ】族の人ばかりで【白エルナ族】を見比べたことはないけども。

その繁栄は永遠に続くと思われた。しかし、問題は起きる。ある時から男性が産まれなくなってしまった。長寿故にいつでも子供を産めると胡坐をかいていて、生殖に関する機能が劣化していることに気づかなかったらしい。時すでに遅し、子孫を残せる男性はほぼいなくなってしまったらしい。


 ならば、魔法で自身らの遺伝子から新たなヒト族を作り出し、少なくなった人口の穴埋めをすればいい。

そうして生まれたヒト族。万能な【ヒュミナ】、力の強い【ドワナ】、小柄だけど器用な【フォビナ】、魔法が得意でエルナ族に姿が近い【エルフィ】、主だったところはこんな感じか。目的に応じた種族が作られ、目的に合った分野で活躍しているのだとか。


その中の一人である僕は、繁殖用ヒュミナ、エルナ男性の代用として作られて18年、ずっと必要な知識を学んできた。そして、最終試験に合格。出荷前検査をパスすれば、完成品として認められるのだ。


 あともう少しで、自身を必要とするエルナ族の女性の元へ行ける。そして、この体はエルナ族の繁栄のために使うのだ、と期待を胸に膨らませていた僕の前に突然現れた男はそう言い放った。


「もう一度言う。codeHM(コードヒュミナ)1016-BDv(ブリードバージョン)25、お前は失敗作だ。廃棄する」


「し…失敗作? 廃棄?」


 廃棄ってどういうことだろう?


 座学も、実技も優秀だと何度も褒められるぐらい頑張ってきた。魔法に関しては、共に学んできた同型達よりも頭ひとつ抜けているとのお墨付きだ。そんな僕が失敗作?信じられない。


 目の前の男の言葉を受け止めることができずに、僕は困惑していた。そんな僕を男は無理やり押し倒し、服をまくり上げる。まずは背中と、あらわになった背中に真っ赤になった熱い棒(焼き印)が押される。肉が焼ける嫌な臭いとともに、激しい痛みに襲われた。


「ああぁ! 痛いっ!」


 悲鳴を上げる僕のことなどお構いなしというように、それ(焼き印)を今度は僕の左肩に押し当てる。二度目の激痛に悲鳴も大きくなる。激しい痛みから逃げるすべがない。


「やめてっ……うぅ……助けてぇ!!」


 必死に懇願するが、男は何も言わずにただひたすら僕に焼き印を押し当て続けた。その行為にはなんの感情もこもっていないようで、それが余計に恐ろしかった。

そして、痛みに耐えきれなくなった僕は意識を手放した。


******


 気づいたら、何かに閉じ込められていた。


がたがたと、僕のいる狭い世界……おそらく箱だろうそれは何かに乗せられ移動しているようだ。時折右へ、左へと抑えられつけそうな力にあらがうこともできず、箱に体をぶつける。体を支えようにも、腕と背中がじくじくと痛んでそれどころではない。


時々、揺れが収まる時間があるので、タイミングを見計らって、自身に回復魔法をかける。≪治癒≫(マギ・リカバー)っと。よしよし、やけどの傷が少し癒え、痛みも引いていく。


 魔法を使えるようになっていてよかった。完全に治すことはできないけども、痛みはだいぶ引いてきた。


 何回目かの静寂の後、誰かが近づいてくるような足音がする。どうなっているんだろうと思っていると、誰かの声が聞こえてきた。


「ねぇ、これ大丈夫なの?」


「問題ありませんわ。廃棄処分ですもの。」


女性の声だ。


「えー!? あんなに綺麗な子だったのに勿体無いよぉ~」


「仕方がないでしょう。この子は欠陥品ですもの。」


「でもさぁ……」


 この声を知っている。僕を育ててくれた女性の声だ。


そして、もう一人は繁殖の仕方を教えてくれた少女の声だ。彼女たちは、僕をなんだと思って話しているのだろうか。欠陥品とはどういうことなのか。


 聞きたいことはたくさんあるけれど、二人の名を呼んでも気づく気配はない。どうやら、どれだけ叫んでも、こちらの声は届かないようにできているらしい。


「この個体は魔物指数が高すぎるのです。いつ魔物化してもおかしくないのですよ?このまま出荷してしまえば、依頼主を危険な目に合わせるでしょう。そもそも、私達では手に負えないかもしれないわ。」


「そっか。そうだね。じゃあ、しょうがないかな。」


魔物指数?魔物化?……一体何なんだ?


「えぇ、そうなんです。だから、諦めてくださいまし。」


「うん……。分かった。ごめんね、バイバイ。」


 少女が遠ざかっていく気配を感じる。


 待ってくれ。行かないでくれ。そう叫んでも、やはり向こうには届いていないらしい。無情にも、箱を乗せた何かは移動を再開したらしい。再び箱が揺れ始めた。

設定:

【エルナ】 ハイエルフ

【ヒュミナ】 人間

【エルフィ】 エルフ

【ドワナ】 ドワーフ

【フォビナ】 小人


イメージとしては大体こんな感じ。

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