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モブな僕が主人公になるまで  作者: 大海老フライ
5/6

5、モブはやっぱりモブだった。

 


 目が覚めるとそこは知らない部屋のベッドの上だった。ボーッとした頭のままキレイな部屋だなぁと辺りを見回していると部屋の出入口らしき扉の横に人が立っている。アニメなんかで見覚えがあるメイド服のような服を着ている。寝起きの頭で少し考えてみる。・・・・・!把握。


「異世界キタァァァァァァァ!!!!」


「ひぃっ!!」


 僕の突然の奇声にメイドさんが驚きの声を上げる。僕はお構いなしにメイドさんをジロジロと観察する。キレイな茶髪後ろで束ねてポニーテールなっており、クリッとしたおめめに少し怯えた表情。かわいい!もう好きかもしれない。


「あのぉ、勇者様?」


 メイドさんがおそるおそる声を掛けてきた。

 勇者?


「目覚められたばかりでいろいろと混乱されていると思います。全てご説明させて頂きますので私と一緒に大広間まで来て頂けませんか?先に目覚められた勇者様方もそこに居られます。」


 何てこった!僕は早速出遅れているらしい。すぐに起き上がりメイドさんに案内を頼み、大広間に連れていってもらう。やらかした!こういうのは最初の行動が肝心だというのに!


「今、大広間では勇者様を召還されたエマ・リュミエール王女様から今回の召還についての説明がなされております。その後鑑定の魔法具による勇者様方のステータス確認を行う予定です。」


「ステータス!?」


「ひっ!」


 ぐいっと詰めよった僕にメイドさんが驚いて声を上げる。まずい、また恐がらせてしまったかもしれない。けど今はそんなことよりも気になることがある。


「はっはい!勇者召還の儀により召還された方々は皆様特別な力を与えられると言われています。なので勇者様方の力を確認するために"鑑定"の魔法具で・・」


「ステータス!・・・あれ?ステータスオープン!・・・ステータスチェック!・・メニュー!メニュー!オ~プンッ!・・・気合いが足りないのかな?ステータスっ!!ステ~~タスッ!!!」


「ゆっ勇者様っ!?」


 おかしい全然ステータスが確認できない。何かコツでもあるんだろうか?僕が考え込んでいるとメイドさんが声を掛けてきた。


「あっあの勇者様!ステータスを確認するには"鑑定"の魔法を受けるか、鑑定の魔道具で確かめるしかありません。自身で鑑定の魔法を掛けて確認することも出来ますが、それをするには鑑定の魔法が使えなければなりません。」


 なるほど、そういう感じなのか。神様がゲームを参考にして作ったと言っていたからてっきりいつでもステータスが確認出来るものかと思っていた。っていうか普通なら出来るだろう。あいつ(神様)本当に地球のゲームを参考にしたんだろうか?おかげでまた恥をかいた!どうしよう!恥ずかしい!!どうにか誤魔化せないだろうか。


「あっなるほど、そうなんですね!僕の地元ではああやってステータスを確認したもんで。へへへっいやぁお恥ずかしい!」


 自分で言っておきながらよくわからない言い訳を並べつつ、あとはへらへらして誤魔化しておく。メイドさんは何か気持ち悪いもの見るような目で僕を見ながらも気を取り直して案内を再開してくれる。

 その後は下がってしまったメイドさんの好感度を少しでも上げるべくお城の内装何かを適当にヨイショしながら歩いていくと、大きな両開きの扉の前にたどり着く。


「こちらが大広間でございます。どうぞお入り下さい。」


 そう言ってメイドさんが大広間へのドアを開けてくれる。その瞬間。


「おお~~~!!!なんと!!"勇者"のユニークスキルをお持ちとはっ!!」


 勇者!?


「ユニークスキルでさえ1000人に1人しか持ち得ないというのに!これで大陸では()()()!我が国では()()()の勇者を迎えることが出来ましたな!」


 大広間から聞こえてきた素敵フレーズに反応した僕はすぐに大広間へと入る。そこには見慣れたクラスメイト達がおり、その周りに鎧着て腰に剣を差したいかにも騎士っぽい人達、そして奥にはローブを纏ったこちらもいかにも魔法使いっぽい人に、豪華な服を着た絶対に偉い人達がいた。

 そのお偉いさんの近くに置いてある意味ありげな水晶に手を(かざ)しているのはもちろん神条 正義君だった。状況から察するに彼が今騒いでいた勇者だったんだろう。


 ・・・・・。


 まぁまぁまぁ、こんなのはお約束みたいなもんだ。何の問題もない。彼は根っからの主人公なんだから、そりゃ皆が驚くような力ぐらい持ってるさ!

 それに異世界チートっていうのはそうじゃない。一見使えないような力が実は使い方次第では恐ろしく強力な力だった!というのが大事なんだ!だから大丈夫、全然羨ましくなんてない。神条君が間違いなく王女様っぽい人から手を握られたりしているけど羨ましくなんてない!あんな金髪碧眼で、今まで見たことないくらい可愛くてめちゃくちゃタイプだとしてもウラヤマシクハナイ。


「モブ!モブ!」


 嫉妬から歯ぎしりをしていた僕に声を掛けたのは、鼻くそを筆箱に溜め込むことでお馴染みの友人、田中君だ。


「目が覚めたんだな!お前だけなかなか目を覚まさないから心配したぜ!お前がいない間にこの国の王様からこっちの世界のこととか、俺たちを呼んだ理由とかいろいろと話があったんだぜ!」


 田中君は興奮した様子で話し続ける。


「まぁその話は後で教えてやるよ!それよりお前も早くあの水晶で自分の力を確認してこいよ!」


 やっぱりあれがメイドさんが言っていた鑑定の魔道具というやつみたいだ。


「俺も見てもらったんだけどよ!俺の力はすげーぞ!〖塵も積もれば山となる〗っていっていくらでも物が入れられる空間を作れるんだ!」


 そう言って田中君はポケットから取り出したハンカチを何もない空間に手をつっこむと手首から先が見えなくなった。そして手を引き抜くとハンカチが消えていた。


「おお~~!!」


「なっ!スゲーだろ!?」


 確かに凄い!初めて目にした魔法のような力にテンションが上がる!改めて本当に異世界に来たんだと実感する。田中君のこのユニークスキルは間違いなく、鼻くそを筆箱に溜め込む彼の謎性癖からきているのだろう。彼のこの力、塵も積もれば山となる(鼻くそボックス)と名付けよう!


「やべーよ俺!この力使ったら最強じゃね!?」


 何をもって最強と言っているのか分からないが、僕はこの力って正直微妙じゃね?って思ってる。だってこれって異世界ものでよくあるアイテムボックスじゃん。便利なのは間違いないが戦闘では使えないだろうし、もしもこの世界に異世界ものでお馴染みの魔法の鞄(マジックバック)(実際の見た目以上に物が詰め込める魔法の鞄)みたいなやつがあろうものなら田中君の存在価値がなくなってしまう。


 僕は今なお興奮している田中君の肩にそっと手を置き優しい微笑みを浮かべる。


(どんまい田中君。君の存在価値が失くなっても僕が君を荷物運びとして使ってあげるから。)


 僕はきょとんとする田中君を後にして水晶の方へと歩きだす。水晶の前では自分の力を確認するクラスメイト達の列が出来ていた。

 皆がどんなユニークスキルなのかめちゃくちゃ興味があるが、ここからでは確認できない。大人しく自分の番を待とう。


 そしてその時はきた!

 ついに!ついに僕の番だ!

 ここから僕の異世界チートが始まるんだ!


「さぁ勇者様。こちらの水晶に手を(かざ)して下され。」


 ローブを着たお爺さん魔法使いに促され僕はドキドキしながら手を(かざ)す。

 すると水晶が青く輝く。


「でっ出ましたぞっ!」



 ~ドキドキドキドキドキドキドキドキ~



「勇者様のユニークスキルは〖異世界ヤッホイニュース〗です!」


「・・・・・・・は?」



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