4、チートが貰えるタイプの異世界転移ね!
神様にタメ口で話す彼はクラスメイトの影野 王子君だ。王子なんて名前からもわかるように彼も 間違いなく主人公側の人間だ。
僕のクラスには、わかりやすいTHE主人公みたいなクラスメイトが2人いる。一人は神条 正義君。彼が王道の主人公だとしたらもう一人の主人公、影野 王子君は最近流行りのダークヒーローだ。いつもクールで自分から前に出ることはないが何故か皆から一目置かれている、そういうひとだった。ちなみに言うまでもないが彼もかなりのイケメンだ。
彼が自分から前に出るところは始めてみる。
「まず第一にどうして俺らを選んだ?」
『『そりゃ神の溝知るところさ。』』
「ちっ!答える気はないってことか。」
『『ははっ!ぶっちゃけた話世界中見て回った結果お前ら一番個性的でおもしろいと思ったからだ。』』
「ふざけた理由だがまあいい。でだ、あんたが俺らに何を期待してんのか知らないが、俺らは平和な島国で育ったただの高校生だ。あんたが今から連れていこうとしている剣と魔法の世界?魔王なんかがいるようなところに連れていかれても呆気なく死ぬだけだと思うが?それはあんたの本意じゃないだろ?」
『『ふっふふふ!お前、おもしろいな!
お前の言うとおりせっかく連れていったのにすぐに死なれちゃあ俺も困る・・・だから。』』
『『お前ら全員に生き残るための力を与える。』』
チートキタァァァァァァァ!!!!
神たまぁ!!ありがとうぉぉぉ!!!
仏たまぁぁ!!!サンキュウゥゥゥゥ!!!!
僕の興奮は最高潮だった。
よかった!な〇う小説のなかでは何のチートも貰えずに送られるパターンもあったがやはり異世界転移と言えばチートがなければ!!
ってかさっきのやりとりかっけぇな!
羨ましい!!あれが主人公なのかっ!!
僕もクール路線でいったほうがいいんだろうか?そしたら僕もおまろい(お前おもしろいな)が出来るかな?
『『向こうじゃユニークスキルと言われる力だ。その力の核を一人に1つずつ授ける。核はそいつの性格や本質、趣味思考に影響を受けて自分だけの力になる。』』
『『この力を使えば魔物とだって渡り合える。力を磨き続けりゃ魔王にも届くかもな。』』
"ユニークスキル"めっちゃいい響きだ!
特に自分だけのというのが最高だ!
「モブだった僕が異世界チートで主人公します!」・・・見えたな。僕が主人公として輝く道が!!
『『じゃあ早速力を渡そう。死にたくねぇなら上手く使いこなせよ!』』
神様は右手を上げたような仕草をすると、さっき教室で見たような光の玉が神様の手から放たれる。
「うおっ!?」
つい驚いて声を上げてしまった。神様から放たれた光の玉を胸にモロに食らったがどこも痛くはない。むしろ気持ちがいい!そして体中が輝きだした!僕の人生史上最高に輝いている!今まさにっ!物語の中心は僕であり、皆の視線を一斉に浴びてっ「なっ、なんだこれ!?体光ってっぞ!?」
「うそー!何コレ!?鬼光ってんだけど!?」
「くふーー!!ついに我の秘められし力が目覚めよったわ!!」
辺り一面光っている。み~んな光っている。
・・・・・わかってたさ。わかってはいたけど、あんなに光輝くんだもん。自分だけの特別な力を与えられたって思っちゃうじゃん・・・。
『『今、力の核を渡した。向こうにつく頃には自分だけの力が目覚めてるだろうよ。』』
『『さぁこれで準備が整ったな。まだ説明してないこともあるがそこら辺はいずれわかるだろう。』』
いよいよだ!ついに僕の冒険が始まるんだ!チートを得たモブの成り上がり冒険譚が!
『『おっと、そうだ。最後にもう1つ話があった。』』
何だよ!もういいじゃん!もう行く流れだったじゃん!行かせてくれよ!
『『最後の話ってのはお前らにやる気を出して貰うためのオマケみたいなもんだ。』』
やる気?やる気なら体中に漲っているが・・・。ここまでやる気が出たのは地元でまぁまぁの地震が起きた中2の夏、近所の山にダンジョンが出来てないか探しに行ったとき以来だろうか。
あの時は、自分は物語の主人公で絶対に見つけられると信じていたが、結果は2日ほど遭難しただけだった。いや~あの頃は若かったな~!
『『さっきのデブには魔王は倒さなくていいと言ったが、せっかく用意したラスボスなんだ。もし倒すことが出来たら願いを1つなんでも叶えてやるよ!』』
・・・ん?今、なんでもって言った?
神様の言葉を聞いて一気に周りがざわつきだした。
「何でも!?」
「じゃあ家に帰れるの?」
「お母さんとお父さんに会えるっ!」
「ネコと話せるように・・・。」
「メジャーリーガーに・・・。」
「超金持ちのセレブ社長に・・・。」
「主人公に・・・。」
「ホモとBLが溢れる世界に・・・。」
皆願望が駄々漏れだった。特に最後のやつは絶対に阻止しないといけない。
『『あぁ、なんでも叶えてやるぜ!神に二言はねぇ。』』
ここまで言って冗談でした!なんてことはないだろう。チートで無双したあとに神様からのご褒美もあるなんて。もう勝ちしか見えない。Win&Win!!
『『ククッ!さぁ異世界に行く時間だ。準備はいいか?』』
そう言って神様は影野君の方を見てにやっと笑った気がした。
「・・・俺の願いはあんたをぶっ潰すことだ。いいんだよな?神に二言はねぇんだろ?」
『『くははははっ!いいねぇ!楽しみにしてるぜ!』』
痺れるぜぇぇぇ!!今のやりとり堪らねぇぇぇ!!!ぼっ僕も何か言ってやりたい!何か言って神様に一目置かれたいっ!!
テンション爆上げで興奮した僕は、おもむろに立ち上がり眉間に力を込め劇渋の顔を作り神様に向かって指を指す。
「・・・I'll be back!」
『『えっ?・・おっおう。』』
・・・・・し~~ん・・・・・
僕はゆっくりと座り直した。
恥ずかしいぃぃぃぃ!!!!
やっちゃった!!完全に調子に乗っちゃった!!絶対に僕が出る幕じゃなかったのに!!神様も「誰こいつ?」って顔してたし!!セリフも絶対にアレじゃなかった!!思いつくまま言っちゃった!!あぁもう嫌だ!一旦解散して一週間後に再集合とかダメだろうか?
僕が恥ずかしさから悶え死んでいる間に神様が仕切り直す。
『『あーまぁなんだ。今からお前らを異世界アルテマに飛ばす。俺が楽しむ為に作った世界だがお前らも存分に楽しんでくれ。』』
『『そして、俺を楽しませろ。』』
その言葉を最後に体が淡い光に包まれていく。視界が徐々に白く塗りつぶされ、意識も遠のいていく。
薄れていく意識の中で僕は・・・さっきのセリフなんて言えばよかったかなぁと考えていた。