冬の女王の落とし物と精霊の愛し子
「あぁ、困ったわ、困ったわ」
ルミナス王国の辺境にある森の奥地にある精霊の神殿にて
今回の季節の当番である冬の女王は一人大変あせっていた。
「一体どこに片付けたのかしら?
あれがないと冬のコントロールが雑になってまたお姉さま方に叱られてしまうわ」
深いため息とともに吐き出した言葉には悲壮感が漂っていた。
それを見ていた水や氷や雪の精霊たちはみなそろってこう思った。
(女王様は凛として見える割におっちょこちょいだから来る途中に落してきたんじゃなかろうか)
精霊たちは話し合いの元 (おもにじゃんけん) にて外に探しに出ることしました。
ところかわって森に一番近くの村では朝から雪が多く降ったこともあり
子供たちは大喜びで雪合戦やかまくらづくりなどをして大はしゃぎしていました。
その子供たちの中にゼナという少女も
雪だるまを作りながら子供たちの輪の中にいました。
そうして遊んでいるとゼナのもとに声が聞こえてきました。
「あった、あった女王の探し物でもどうやって運ぼうか?」
ゼナが声のほうにを見てみると精霊たちが集まって氷でできた
雪の結晶の飾りがきれいな杖の上をくるくる回っていました。
ゼナは気になって精霊たちに聞きました。
「ねぇ、せいれいさんなにがあったの?」
そうすると
「あなた、私たちの声が聞こえるの?」
と精霊たちから聞き返され
「うん、聞こえるよ」
と返したら精霊たちが
「愛し子だ、これで運んでいけるね!」
と大層喜んでいたが当のゼナはさっぱりついていけずにまた聞きました。
「ねぇ、わたしはなにをしたらいいの?」
精霊たちはこう答えた。
「そこにある杖を冬の女王様に届けてほしいんだ」
ゼナは杖を持ってみるとあまりの美しさに
「すごい、きれい」
感嘆の声をこぼした。
すると精霊たちは
「でしょ、それを森の奥の神殿にいる冬の女王様に返しに行こう」
と言われゼナは
「わかったわ、じょおうさまのところまでつれていって」
こうしてゼナと精霊たちは雪の多い中一緒に森の奥に向かうことになった。
ゼナは精霊たちに聞いてみた。
「ねぇ、じょおうさまのところまでどのくらいかかるの?」
精霊たちはこう答えます。
「半日ぐらいかな」
ゼナはその答えに
「えっ、そんなにかかるならおかあさんたちにゆってくればよかったな」
とつぶやきましたが精霊たちが
「大丈夫、女王様の所に行けば帰りは簡単だから」
と言われて雪の中てくてくと森の奥まで歩いているとふと目の前に白い毛並みの狼が三匹現れた。
「わぁ!スノーウルフだ、どうしよう」
ゼナは急に出てきた狼に腰を抜かしかけたが精霊たちが
「大丈夫だよ、その杖を狼に向けて振ってみて」
言われた通りにゼナはスノーウルフに対して杖を振った。
するとスノーウルフの周りにだけ吹雪が吹き始め三匹すべてを吹き飛ばしてしまいました。
精霊たちは言いました。
「君は特別だからその杖の力をちょっとだけ使えるんだよ」
とまるで当たり前のように言いました。
さらにはこんなことも話します
「でもあのウルフは若かったんだね、普通は杖の力におびえて出てこないよ」
と言われゼナはそうなんだぁと思いながらまた森の奥へと歩いていきました。
この後は何事もなくというよりは杖の力を感じた猛獣たちが一目散に逃げていったことで
ゼナは森の奥地にある精霊の神殿までやってくることができました。
「えっと、我らの愛し子は何の用事でここまで入ってきちゃったのかな?」
冬の女王が困り顔で出てきてそう聞いた。
「あのね、せいれいさんたちにつえをとどけてほしいってたのまれたからとどけにきたの」
とゼナが言いつつ冬の杖を冬の女王へ渡しました。
「この杖をずっと探していたの、我らの愛し子よ本当にありがとう
これは感謝の気持ちです私の加護と祝福を授けましょう。」
と女王はゼナのおでこにキスをしました。
女王は言った。
「私の力で森の入り口まで送り届けましょう、
気を付けてお帰り我らの愛し子よ
本当にありがとう」
またお礼を言われたゼナは気が付いたら日暮れの森の入り口にぽつんと立っていた。
「ゼナ、どこだー!?」
「ゼナ、どこにいるの?」
父と母が呼んでいた。
「おとうさん、おかあさんただいま」
父ゼノンが言う
「一体どこに行っていたんだい?」
母ミリアも
「本当にどこに行っていたの?」
と聞いてきたのでゼナは今までのいきさつと女王から加護と祝福を得たことをそのまま伝えました。
そして父母に聞いてみたかったことを聞いてみました。
「ねぇ、おとうさん、おかあさん、いとしごってなあに?」
父はこう答えた
「精霊さんたちに特に気に入られている人のことだよ」
母は
「精霊さんみんなと仲良しさんになれる人のことよ」
笑顔で答えました。
「まさかゼナが愛し子なんてすごいわね」
母はそう言ったが父は少し厳しい顔で
「でも一人で森の奥に行くのは感心しないな、ちゃんと私たちにも伝えなきゃだめだよ
危ないからね」
と少し叱られたゼナは
「は~い、ごめんなさい」
と反省したかよくわからない返事をして父母とともに仲良く家路についたのだった。
おしまい
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