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物語修復機構 -パロディ洪水伝説-  作者: いずも
『旧約聖書』 ノアの方舟 篇
15/51

014WARNING

なんか良いキーワードやジャンルあれば教えてください。。。

「――え」

 わたしは言葉を失った。

 そこに居たのは年端もいかない少年だった。褐色の肌が多いこの世界において珍しいほど肌は白く、金色の短髪がわんぱくさを引き立てている。

 絵画によくある白い衣を身に纏い、布が余ったのか足元で引きずるその様子がますます背の低さを表していた。

「なっ、なんだよその態度はっ。これでも本当に神様からの予言を聞いた預言者だぞ! スゴイんだぞ!」

 ノアといえばいわば人類の父といえる存在である。厳格なる父としての姿は脆くも崩れ去った。

「さっきの台座はそういうことッスか」

「……ああ」

 合点がいき、ぽんと手を叩いた。

「なっなんだよ! 威厳があるように見せないと馬鹿にするだろ! これでも必死になって背伸びしたんだぞっ」

 しかも声変わり前の少年ボイス。

「もしかして、ウーウァやカベルネが口を濁していたことって、このことだったのか……」

 二人共ノアのことを話すときに歯切れの悪い印象があったけど、まさか預言者ノアがこんな金髪ショタっ子だとは誰も思うまい。

「予言少年ノア。これはアニメ化待ったなしッス」

 モチーフが多すぎてわからない。魔法少女か? 南国少年か?

「うるさーい! 預言者だぞー! えらいんだぞー!」

 両手を上げて怒りのポーズを取るが、まったく丈の合わない白い布がなんだか白衣に見えてくる。

「新感覚癒し系予言少年ノアちゃん。これは休載待ったなしッス」

 やっぱり魔法少女だった。違うから、気が向いたらまた復活するから。

「さっきまで敬意を払って損した気分だ」

「これで女の子だったら文句なしだったんスけどね」

「性別まで変わったら色々とおかしくなっちゃうよ。子供の姿だったっていうのなら、まだ間違ってはいない……かな」

 これをティンカーと判断するには時期尚早だ。

「そもそもお前たちはなんなんだ! 俺に何か用があって来たんじゃないのか! さっきから好き勝手言いやがって」

「もー、大人ぶって俺だなんてますます可愛いッスねー」

「頭を撫でるなー!」

「シショー! この可愛い生物お持ち帰りしていいッスか?」

「ぎゅって抱きしめっ……もががー!」

「希少生物だからあきらめなさい」

 持って帰ったらコーハイが歓喜のあまり倒れそうだ。あいつも自分より小さくて可愛いものには目がないからな。

 しかし困った。

 冷静になって考えてみたら、ノアに対して何と尋ねればよいものか。方舟作ってますかなどと聞くわけにもいかない。下手なことを言って怪しまれでもしたら、ますます彼は口を噤むだろう。もう十分に怒らせている気もするが。

「はー満足したッス。それじゃあ今日はこのくらいにして帰るッスか」

「……もう日が暮れるじゃないか。本当に今日はもう時間がないな、さっさと帰れ。この辺は夜になると獣の咆哮も聞こえてくる。骨だけになりたくなければ早く丘を下ったほうが身のためだ」

 彼はそう言って、あっちにいけといわんばかりに手で追い払う仕草をする。

 見た目は子供、態度は大人。この時点でノアは約六百年も生きてるし、十分大人だろう。

「俺ももう帰るぞ、じゃあな」

「また明日ッス~」

「もう来るな!」

 足早にノアはその場を立ち去った。

 ずいぶん陽も落ちてきてすっかり暗くなり、すぐに姿が見えなくなってしまったという方が正しい。

 追いかけたところで今は何も出来ないので、これ以上何かするのは得策ではない。

「……帰るか」

「そうッスね。でも、どこにッスか?」

「……あ」

 そうだ。

 わたし達にはこの世界に帰るべき家は無いのだ。


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