表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

ルール・ザ・ワールド #2

 難読漢字等でルビを多用しています。

 その為、読み辛いと思われる向きもあるかも知れませんが、ご容赦下さい。

 眼が覚めたら、そこは病院だった。

 もとい。正確には、病室だった、か。私は右足をつられて、頭は包帯でグルグル巻き、首にはギプスみたいなやつが付けられ、ほっぺや身体のいたる所にガーゼがあてがわれた、ザ・ケガ人って感じの見た目でベッドに横たわっていた。

(りん)()……? 凜乎っ!!」

 声を上げたのは、李緒(りお)だった。

「んぅ……あ、あれ……? 李緒、何で?」

「お母さんから連絡もらったの! 凜乎の! 『凜乎が車にはねられたみたいだから病院に行ってくれないか?』って!!」

 李緒は、泣き顔だった。泣き顔で、混乱していた。

「えっと、お母さんに連絡して……、あっ、医師(センセー)も呼ばなきゃ? んーと……ナースコール使っていいのかな?」

「ねぇ李緒、何で泣きそうなの?」

 李緒は、ほんの一瞬だけ全ての動作(うごき)を停めた後、まくし立てるように言った。

「そりゃ、凜乎が眼ぇ覚ましたからに決まってるでしょ?! 親友が事故にあって、意識取り戻して、嬉しくないワケ無いじゃんか! ホッとしたし……。あたし、病室(ここ)来た時、凜乎見て『死んじゃったのかな』って、思ったんだよ?! 手術室から出て来たばっかりだったし! もうこのまま起きないんじゃないか、って本気で思ったんだから!! だから、泣きそうなの……。てか、泣いてるんじゃんか……」

 李緒は号泣していた。他人(ひと)を泣かせたのなんて、何年(いつ)ぶりだろう。と思いながら、私もつられて、いつの間にか、泣いていた。

「何か、心配かけちゃって、ゴメン……。そんなに私の事、思ってくれてたんだね……。ゴメンね……」

 私も最後の方は、かすれて声がちゃんと出なかった。李緒は、ただうつむいて、私の手をにぎりしめて泣き続けていた。

 何やら騒々(そうぞう)しい、と思ったのだろうか、看護婦さんが部屋に入ってきて、

「あ、眼を覚まされたんですね? 先生呼んできますんで、ちょっと待っててもらえますか?」

 とあわててまた部屋を出ていった。ボーイッシュで、可愛らしい人だった。

「あたし、凜乎のお母さんに電話してくるね」

 李緒が、なごり惜しそうに私の手を離し、病室から出て行った。おそらく、病室内で携帯を使う事をためらったのだろう。李緒のそんな常識的な所、というか、配慮を忘れない所が、私は好きだ。と同時に個室を使ってしまっている事に今さら気づき、入院費がかさみそうだな、と両親に申し訳ない気持ちになった。

 そして何よりも。私は思い出した。一番謝らなくてはならないのは、車を運転していた、あのお兄さんだ。私の不注意のせいで彼の車は前の所が変形してしまっていたし、多分彼は警察につかまってしまうのだろう。そう思うと今すぐ謝りたい、と思った。出来れば、彼を無罪放免して欲しい。悪いのは私なんだから。そう云う事はよく分からないけど、もし警察の人が来たら、なるべく減刑して下さい、出来れば無罪にして下さい、ってお願いしてみよう、と決めた。彼は、良い人なのだ。私がしたドジの後始末を、嫌な顔一つせずに手伝ってくれた。しかも、二度も。あのお兄さんが悪人なワケがない。優しそうで、ちょっとカッコ良かったし……。

 少しだけ、ほおが熱を帯びるのを自覚して、私は何やら、自分がよこしまな考えに至っているのではないか、と、顔を強く左右にふって、頭からその考えを追いやった。


 ……結果、ちょっと、気持ち悪くなったけど。

 本作は架空の創作物(フィクション)です。

 文中に登場する人物名、団体名等は、現実のものとは関係ありません。

 また、文中に実在する著名人名、企業名、商品名等が描写された場合も、()れ等を批評・誹謗する意図は一切ありません。


 今後の描写に関わりますが、幸か不幸か自分自身は何らかで入院した経験がありません。また、医療従事者でもないので、心苦しくはありますが、病院内の描写は正確ではない事も多々有り得ると思われます。(あらかじ)めご容赦下さい……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ