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やめろといわれても、ヒデキー

作者: 瀬川潮

 ペンギンのヒデキ・ペンギンペンギンは中年に差し掛かったが、それでも日々「素晴らしいY・M・C・A」の気概で、妻のローラ・ペンギンペンギンとともに悠々自適の生活を送っていた。ペンギンとはいえ、そんじょそこらのペンギンとは違い精悍な面立ちにちょっとハスキーな絶唱系の歌声と長身から繰り出す激情のアクションが魅力のアイドルペンギンなので所在地は内緒。しいていうなら、ペンペン草も生えないような肌寒い気候のいつも空がブルースカイブルー(1978年8月25日リリース、以下同)な場所であなたと愛のために(78年3月5日)暮らしている。

 とはいえ、愛の園(80年3月21日)というわけではなく妻のローラは恋する季節(72年3月25日※デビュー曲)はまだまだとばかりにちょっと欲求不満。かつての情熱の嵐(73年5月25日)や激しい恋(74年5月25日)はどこへやら。ちぎれた愛(73年9月5日)はそのままで、この愛のときめき(75年2月25日)を抱きやるかたない眠れぬ夜(80年12月21日)をかさねている。恋の暴走(75年5月25日)よ、ブーメランブーメランブーメランブーメランきっと、あなたは戻ってくるだろう(「ブーメランストリート」より、77年3月15日)と願いながら。

 そんな妻の願いはつゆ知らず、ヒデキはヘッドフォンからの音楽を聞きながら右翼をペンペン、ペンペンと右膝に打ちながら半分くちばしを開けて上げた顔を左右に振りリズムに乗っている。時折、「ギャランドゥ」(83年2月1日)とかつぶやきももれる。こんなに元気なのに夜は元気がないのよねぇ、私に魅力がなくなったのかしらと傷だらけのローラ(74年8月25日)はため息を漏らす。その間にもペンペン、ペンペンと右翼。ため息。

 そんなローラは、一枚の新聞チラシに気付く。かつて人体ならぬペン体にもやさしい除草剤として大量に出回った「ペン抜き」の広告だ。このあたり一帯をペンペン草1本も生えないような大地にし当時の地球の重量バランスを崩していわゆるポール・シフトと呼ばれる極ジャンプを引き起し氷の世界にしたという、環境破壊の代名詞的な除草剤で、なぜ草も生えないような世界でそんな広告が新聞折り込みされているのか謎だった。興味を引かれじっくり見ると、な、なんとペン体に影響がないとされていた「ペン抜き」は、実はペンギンが大量摂取するといわゆる媚薬としての効果があることが判明したのだという。

「本当かしら?」

 とかなんとかいいつつも頬を染めて注文するローラ。

 はたして、ヘッドフォンからの音楽を聞きながらペンペンやってたヒデキに騙して飲ませたところ、ペンペンしなくなった。うまいことペンペン気分が抜けたようだ。

 すると、突然がばりとローラを押し倒すヒデキ。

「あ、あなた。一体どうしたの?」

 言葉とは裏腹に期待しながらローラ。ヒデキの方は一言だけ。

「ヒデキ・ギンギン!」

 つまり、「ペンギン」がペン抜きを摂取すると、「ギン」になるということか。

 それはともかく、君よ抱かれて熱くなれ(76年2月25日)。この氷に閉ざされた大地も、やがて愛の熱でとろけ緑に芽吹くだろう。愛の温暖化は、地球を救うに違いない。違いない。


   おしまい(※ペンギンフェスタ2007出展作品)

 ふらっと、瀨川です。


 知人の企画「ペンギンフェスタ」に出展した2007年6月の過去作品です。

「ああ、昔は比較的に給料日に合わせて新曲発表をしていたのだなぁ」

 と思っていただければ幸いです(本当か?)。

 昔は確か銀行振り込みではなく全額手渡しだったはずです。ついつい魔が差して使ってしまっても仕方ない面もあったのだろうなぁとか。

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