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2014年/短編まとめ

指先にkiss

作者: オミ

机に伏せられた顔、俺はじっと彼女のつむじを眺めていた。


死んだように眠っている彼女は俺の幼馴染みで、隣の家に住み互いの部屋を行き来する。


まるで漫画みたいな関係だ。


彼女の部屋は…年頃の女の子としてはどうなんだろうか。


ハッキリ言ってしまえば汚い。


ものすごく汚い。


白と黒を基調にしたシンプルな部屋には、ペットボトルやカロリーメイトの空き箱が積まれている。


彼女が突っ伏している机の上には、ビタミン剤や栄養剤の入ったビンが置かれて、本人は紙の中で埋もれて眠っていた。


ベッドと机とPC用の机や機材、大きな本棚が二つと小さなテーブルに座椅子が置かれた部屋は、本当に彼女が必要とするものしか置いていない。


過去にテレビを置かないのかと聞いたところ、ラジオを聞くので問題ないと答えた彼女。


年頃の女の子がこれでいいんだろうか、と疑問を抱いたのは言うまでもない。


割と広めの部屋だが、その部屋中にバラ撒かれた紙を俺は拾い集めて歩けるスペースを確保する。


部屋に入ってきた時点で少しは集めたのだが、一体何枚の紙を使ったんだ彼女は。


その紙は全てA4の原稿用紙。


作家を目指す彼女はいつもコンクールの締め切り前になると、部屋を今のような状態にしてこもるのだ。


一応学生という立場なので、学校には通うのだが授業は爆睡している。


今回は連休があったので書き終わり、そのまま崩れ落ちるように眠ってしまったのだろう。


学校があれば単位の為に、死ぬほど眠たい体に鞭を打ってでも学校へ行き寝ている。


どの道寝ていることには変わらないのだ。


トントン、と原稿用紙を揃える。


順番は後で本人が揃えればいいだろう。


「ん、んん」


もぞっと彼女が身じろぐ。


投げ出された利き手には万年筆のインクがこべりついていて、ペンだこもできてボロボロだ。


恐らくまだ揺すっても声をかけても起きないであろう彼女。


そんな彼女の頭を壊れ物に触れるように撫でてやり、利き手の指先にキスを落とす。


「お疲れ様」


ゆっくり休めよ、と心の中で呟き、机で眠りこける彼女をベッドへと移動させてやるのだった。

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