スキルレベルアップ
淡い光を全身から放っている青葉は、何故か苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
今自信の身に起きているような事は真っ先に大地がやってしまうような先走りの行動である。
それを自らが率先してしてしまった事を後悔しているのだ。
客観的に思考が出来る立場でなければ青葉は比較的脆い性格をしていた。
青葉は自身の性格も客観的に把握しており、その為大地と行動をしている時は、悪い言い方ではあるが大地を人柱にしていたいのだ。
大地はそれを察しているが、止められた所でやめる理由も思い当たらないので自然と受け入れていたのだ。
そして、普段は冷静で初見の事柄は慎重に行うタイプの青葉。
今回、自身のスキルが非常に優秀でスキルのレベルが上げる事が出来ると知ったのだ。
元々魔法や超能力には憧れはあった青葉。
その為、興奮して冷静を欠いてしまうのは半ば致し方ない事なのだろう。
青葉から放たれた淡い光は1秒程で消えた。
青葉は自身の体を確認して問題がないか確認した。
特に変化はないようだ。
「青葉、大丈夫か?」
「お、大丈夫みたいやわ。」
「ふにゃぁ、よかった・・・」
心配する大地に、無事を伝える青葉。
檸檬も心配しいつの間にか立ち上がっていたのだが、安堵したようでその場にへたり込んだ。
二人の心配をしてくれた様子に青葉は嬉しさを感じながら再度モニターに視線を向けた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・スキルポイント 0
・取得スキル
・『賢者』レベル 2
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ちゃんと『賢者』のレベル上がってるわ。」
青葉は『賢者』のレベルが上がっている事を二人に伝え画面を見せた。
大地は無言で頷き、檸檬は「おぉぉお!」と歓声をあげた。
大地はおそらく何が起きているのか理解が追いついていないのだろう。
青葉はそのまま画面を操作し、ステータス画面を表示させた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・ステータス
・名前:漣 青葉
・種族:ヒューマン族
・特技:なし
・魔法:ファイア【火】 ウォーター【水】 ウインド【風】 サンドウォール【土】 バースト【爆破】 アイス【氷】 サンダー【雷】 アースシールド【岩】
・スキル:賢者
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
予想通り新しい魔法が増えていた。【】の中にある言葉を言えば発動するのだろう。
新しく増えた魔法はバーストにアイス、サンダーにアースシールド。
一レベルにつき一段階上の魔法が一種類ずつ覚えられると考えていいのだろう。
ふと考えていると、二人がモニターを覗き込んできた気配を感じた。
青葉は、結果を二人に伝えながら苦笑いを浮かべた
まだ見てはいないのだが、おそらく大地の目は「はよ試してや!」と言わんばかりに輝いているはずだ。
檸檬も大地と思考回路が似通っている気がするので、おそらく同じような態度を示すだろう。
青葉自身もスキルレベルが上がった事で出来る事が増えているか検証をしたい所ではあるが、テントの外は真っ暗で何も見えない。
外に出て試すような度胸は青葉にはない。
何より暗闇が苦手なのだ。
だからといってテントの中で魔法を唱える訳にもいかない。
「とりあえず、魔法は明日試すか。」
青葉そう言いながら大地に視線を向けた。
大地は予想通り肩を落として落胆していた。
しかし、檸檬は落ち込む様子はなくキラキラとした目を青葉に向けながら「明日が楽しみだねっ♪」と言ってきた。青葉は苦笑いを浮かべながら応じた。
そして、落ち込む大地に青葉はサバイバルのスキル内容を確認するよう勧めた。
思い出したように大地はモニターを操作する。
隣で聞いていた檸檬も同様に慌てて確認をする。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・スキルポイント 2
・取得スキル
『サバイバル』レベル 1【+】
採掘/採取を初め生産スキルを扱う事が出来る
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・スキルポイント 2
・取得スキル
・『魔物』レベル 1【+】
魔物に関する能力を扱う事が出来る
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
大地の持つ『サバイバル』は生産系スキルのようだ。
先刻の赤いオオカミを解体ができたのは『サバイバル』の恩赦であろう。
大地がなんとなく出来る気がしたと言っていたのも、おそらく『サバイバル』によってどの程度が可能か無意識のうちに把握ができたのだろう。
その為、処理が難しい内臓部分などはうまく解体できずに捨てたのだ。
もちろん処理が出来たとして、食べるかどうかは別の話であるが。
一方で、檸檬の『魔物』は説明を見ても考察ができないスキルであった。
「説明文仕事しろ!」と大地が文句を言っていた。
青葉は説明文を見ればある程度どのようなスキルか判断できると考えていたが、予想を反した結果となり、檸檬が持つ『魔物』については謎が深まったのである。
そして大地は突然何かを思い出したように「あっ!」と大声を出した。
「檸檬ちゃん俺らのパーティー入ってないやん! 入っとくやろ?」
「にゃっ! 入りたいな♪」
今更の事を突然大地は言いだした。青葉はレベルの説明中に思い至っていたが、大地の許可なく勧めるのはどうかと思ったので提案していなかった。
しかし、大地は青葉の許可なく提案する。
もちろん青葉は異論がなかったが、なんとも複雑な心境であった。
ともかく、檸檬はそのまま大地と青葉のパーティーに入った。
「やっぱ、リーダーが王冠着くんやな。お前がリーダーとか嫌やけどしゃーないか」と青葉がボソッとつぶやいた。
「で、自分らスキル覚えたり強化したりはせんの?」
「どうしょっかなぁ……とりあえずスキル確認してみるわ。」
大地は自分のモニターを操作ししながらそう言った。
大地はスキル一覧画面で思考し、そのまま剣術スキルを選択した。
特に剣術を選んだ理由はなかった。
ただ単に一番上にあったからだ。
そして大地はモニターに映された内容を確認した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・スキルポイント 2
・『剣術』【+】
・剣術全般を操る事が出来る
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「こっちの画面でもちゃんと説明でるんやな。」
「ホンマやな。突然やったしそこまで考えへんかったわ。」
大地がモニターを見ながら放つ言葉に青葉応える。
大地は「よっしゃ!覚えるで!」と言いながらモニターを操作し始めた。
青葉は「お前もうちょっと考えてからでもええんちゃう?」と遠回しに止めに入るのだが、大地は止まらなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・『剣術』を覚えます
・スキルポイント1消費します。
・実行しますか?
【はい】【いいえ】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
モニターに表示された【はい】を大地は操作する。
すると、先ほどの青葉と同様に淡い光を放つ大地。
先ほどは客観的に見ていた大地は「おー!!怖いなこれ!」と言い笑った。
青葉は深いため息をついた。そして、大地に残りのスキルポイント1をどのようにするか確認をした。
すると。
「残りはとりあえず残しておくわ。今必要な物は特にないし。」
青葉は大地の言葉に驚愕した。
普段行き当たりばったりの大地がスキルポイントを残すと言い出したのだ。
考えられない。
給料も入ったらすぐに使う大地が、スキルポイントを残すのだ。
目の前にいるのが青葉の知る大地ではないのかと疑いの目を向け始めていた。
「レモンはは魔物のレベルをあげまーす!」
青葉の思考を掻き消すように檸檬は大声で宣言した。
そして、その言葉の通りに『魔物』のスキルを上げた。
檸檬も同様に淡い光を放ちスキルのレベルアップを済ませた。
「ほなスキルも覚えたし明日からの事を考えよか。」
大地が檸檬が落ち着くのを待ち、声をかける。
その行動にすら青葉は驚愕した。
大地が自ら明日の事を考えようと提案しているのだ。
もう目の前にいるのは自分が知っている大地ではないと青葉は断言したくなっていた。
しかし、その後の言葉でそれは否定された。
「てことで青葉さんお願いします!」
お決まりの青葉に丸投げが来たのだ。
大地が色々と考えて提案する為に言いだしたと思っていたが、大地はまるで何も考えていなかったのだ。
おそらくスキルポイントに関しても後で質問がくるのだろうと青葉は察した。
大地は青葉の予想通り、考えてもよくわからなかった為、後で良いスキルを聞いてから覚えようと考えていたのだ。
そして青葉は明日からの目標について話し始めた。
本日の目標と決めていたのは水の確保であった。
しかし、檸檬が増え目標を変更した方がいいと青葉は考えていたのだ。
大地と素直に頷いた。
しかし。そんな2人に檸檬がおずおずと話しかける
「ねー・・その前にさ・・・お手洗いはどこ?」
三人の頭を悩ませる新しい課題がここに生まれたのだ。