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センチメンタルジャーニー ~異世界旅行ツアー~  作者: 華森兎守
始まりの草原
6/27

宇宙人

 「ねーねー。お兄さん達は日本人なの? ここは何処かわかる?」


 首を傾げながら少女は大地と青葉に問いかけた。

青葉は頭を掻きながら答える。


「大地は宇宙人やけど俺は日本人やで? 後、ここか何処かはわからんな。」


「誰が宇宙人やねん!!」


「やっぱりそうだよね……」


「え?何がやっぱりなん!?」


 肩を落とし落胆する。

おそらくここが日本ではない事は薄々気が付いていたのだろう。

日本人かどうかを確認したのも、念の為であろう。

もし別の国の人間だった場合は、地球の別の場所にいると思ったのだろう。

それでも、なぜ見知らぬ土地に自分がいるのかの説明にはならないのだが。

ちなみに、大地はまだ「え? 俺、宇宙人なん!?」と一人で騒いでいた。


 少女は視線を戻し、大地と青葉を見た。

日の光を浴び黄金色に輝く髪を左右に縛った髪

……つまりツインテールを揺らしながら二人に近づいて質問した。


「お兄さん達はどうしてここにいるの?」


 大地が少女の質問に答えた。

朝目が覚めるとテントの外が見知らぬ土地であった事。

その後二人で水を探しに草原を探索していた事を簡潔に伝えた。

少女はふんふんと頷いていた。

見た目は小学生から中学生位である。

理解しているかどうかは定かではないが、食い入るように大地の話を聞いていた。

大地は一通り説明すると、逆に少女はなぜここにいるのかを尋ねた。


「あのね、家で寝てたの。 起きたらね、みんないなくて……」


 思い出したように少女は目に大粒の涙を溜めていた。

服装を確認すると確かに寝間着のような服を着ていた。

黄色の記事に白い花を施した少女の雰囲気によく似合う服だ。

靴はなく裸足であった。

少女はそのまま話を続けた。

気が付くと今の姿のまま草原で寝ていたそうだ。

なにも荷物もなく辺りを見回しても誰もいなかった。

そして、辺りを探そうと少し歩いた所で先ほどのオオカミと遭遇したそうだ。

そこまで話すと少女は突然ポロポロと泣き出した。

現状をはっきりと理解して、不安になったのだろう。


 見かねて大地は「大丈夫やって! ほら、もう俺らがいるやん! 元気だせって!」そう言いながら少女の肩を叩く。

少女は服の袖で涙を拭いた。


「ぐすっ…… うん、赤髪のお兄さんありがと!」


 少女は先程までとうってかわって、ニコッと笑った

頬にはまだ涙の後が残っていた。

しかし、元気になった少女を見てホットした大地は続けざまに提案した。


「俺らのテント少し歩いた所にあるねんけど、とりあえずそこまで行って落ち着こうか?」


「えっと…… 一緒に行っていいの?」


「ええよええよ!」


「やったね! ありがと♪」


 大地の言葉に少女はまたパッと笑顔になった。

先ほどまで一人っきりで不安だったのだろう。

ならば同じような境遇のこの子を連れていく事にしたのだ。

それに、裸足の少女をこのままここに置いては行けなかった。

テントに行けば大地のサンダルがあるので、それをあげようと思っていた。

それから青葉とこの子をどうするか相談すればいいと思っていたのだ。

ちなみにその意図を知らない青葉は、独断でなにもかも決めている大地に半ばもう諦めていた。


実の所、青葉は未知の土地に来た時点で、可能な限り面倒事に関わらない方がよいと考えていた。

しかし、大地と同じくこの子をこのまま置いていくのは流石に出来ないと考えた。

なにより大地は許さないだろう。

それならば、大地にこのまま任せておいた方がいいと思ったのだ。

大地がいる限りは面倒事に関わる機会が今後も増えそうだと思い、頭を掻きながら溜め息をついた。


「あ、帰る前にちょっと待ってな。」


大地はそう言いながら、先ほどまで死闘を演じてたオオカミに歩み寄った。

そして、オオカミの傍でしゃがみこむと、青葉と少女の顔を交互に見ながら

「とりあえず、こいつ後で解体バラすからテントまで持っていくわ。」と提案した。

青葉は驚愕して返答をする。


「……お前解体とかできるんか?」


「やった事ないけどなんとなくできる気がするねん」


「どこから出てくるねんその自信! まぁええわ、やってみてや。」


「おう! 任せてや!」


 そう言いながら大地はオオカミを持ち上げ、三人はテントに向かって歩きだした。













            ◆◆◆


 テントに向かう道中に、少女が足の裏を怪我してしまった。

今度は大地が持っていた消毒液と包帯で手当てをした。

治療の際に少女が裸足であった事を思い出した大地は、オオカミを青葉に預けた。

そして、大地が背中に少女を背負ってテントまで歩いて帰ってきたのだ。

その為か、少女は大地に懐いているようにみてた。


 三人はテントに帰ると大地は少女にサンダルを貸してあげた。

少女は嬉しそうに飛び跳ねてすぐにサンダルをはいた。

流石に足のサイズが違うため歩きにくそうであったが、ないよりはマシであった。

青葉はそんな二人の様子を見た後にテントに入り休憩をした。


大地はその後、すぐにオオカミを解体して毛皮や肉、骨と内臓に分けたのだが、初めての割には手際よく作業をしていた。それを食い入るように少女が目を輝かせ見ていた。

数分後、オオカミの解体をすませ、テントから鉄櫛を取り出してオオカミの肉を串刺しにし、それを焼き始めた。

大地が焼く肉の匂いに誘われ青葉がテントから顔を出し、少し遅めの夕飯にする事にした。

ちなみに青葉は元々キャンプ用に買っていた肉を食べたのだが。


 「青葉!これうまいで!」


 「うましうまし!」


 「あっそ。そんな訳わからんもん食えるお前らの神経が信じられへんわ。」


 そうして食欲を満たした頃には、周囲は暗く何も見えなくなっていた。

三人はテントの中に入り、大地がランタンに灯りをつけると、ランタンを中心にするように座った。


 「はーい!今更ですが、自己紹介をしまーす!」


 少女は突然手を挙げ立ち上がりそう宣言した


神庭檸檬(しんば れもん)です! 今年で中学1年生になりました! よろしくお願いね!」


 二人と出会ってから笑顔で元気いっぱいの檸檬がペコっと頭を下げた後に座った。

多少無理をしている気もするが、おそらくこれが本来の彼女なのだろう。


 その後、大地と青葉も簡単に自己紹介をした。

紹介を受け、檸檬は大地を『大にぃ』青葉を『青にぃ』と呼ぶ事にしたようだ。

青葉は自分の呼び方を聞いた時、奇妙な音を立てて追いかけてくる、何処かのブルーベリー色をした化け物を想像したのだが、あえて口には出さなかった。


 「ところで檸檬ちゃんはこんなんついてる?」


 そう言いながら大地は自分の赤い腕輪を檸檬に見せる


 「あ!レモンのは黄色だけどこれかな?」


 檸檬は自身の腕についている黄色い腕輪を大地に見せた。

 大地は頷きながら腕輪のプレート部分に指を指した。


 「檸檬ちゃん、この銀のプレート触ったりした?」


 「いやいや、怖くて触れないっすよ!」


 「ほな、とりあえず、銀のプレート部分触ってみてや」


 「ていっ!!きゃっ!」


 突然現れたモニターに驚き檸檬はかわいい悲鳴をあげた。

大地は笑いながら「びっくりするやんなこれ!」と言った。

檸檬は大きく頷き「ビックリするに決まってるでしょ!」と大声で応えた。


「ま、びっくりしてたの大地だけやけどな」


「お前もビックリとしてたやん!」


「それで、これはなんなの?」


 首をかしげる檸檬に青葉が「何かのモニターやな」っと答える

そして、檸檬は薄い黄色のモニターに視線を向けた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・『神庭しんば 檸檬れもん

・『Level 1』

・『スキル』

・『パーティー』

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 表示される文字を見て首を傾げる檸檬。その様子を見て青葉がモニターを覗き込む。

特に自分達とは変わらない並び順。違いはモニターの色と名前だけだ。

きょとんとしている檸檬を見ながら青葉は言う


「とりあえず自分の名前押してみて?」


「名前? こうですか??」


檸檬は青葉に勧められるまま、自分の名前を先程とは違い慎重に指で押した。

すると、大地と青葉と同じようにモニターにはステータスが表示される。

しかし、その内容を確認して三人は絶句した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・ステータス

・名前:神庭(しんば) 檸檬(れもん)

・種族:ヒューマン族

・特技:魔言理解(まげんりかい)

・魔法:なし

・スキル:魔物

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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