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センチメンタルジャーニー ~異世界旅行ツアー~  作者: 華森兎守
始まりの草原
3/27

モニター

 突然見たこともない現象が起き意識が追いつかない二人。

大地はすでに口をぽっかりあけて魂が抜けているのではないか? と思うほど唖然としていた。

青葉はその様子に頭を掻きながら声をかけた。


 「なんか、お前の名前書いてるけど……」


 「せやな……」


 魂が戻った大地は青葉と共に、目の前に現れたモニター覗き込んだ。

大きさ的にはスマートフォン程の薄い赤色のモニター。文字は黒い文字で書かれていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・【火灯(かとう) 大地(だいち)

・【レベル1】

・【スキル】

・【パーティ】

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 二人は上から順に表示されている文字を流して読んだ。

青葉は「ゲームのメニュー画面みたいやな。」と言いながら髪をかき分けた。


 「とりあえず、俺も出せるかやってみるわ。」


 青葉は青い腕輪のプレートに指を当てると、大地と同じようなモニターが現れる。

大地のモニターと違う点は名前と色だった。

青葉が出したモニターの色は薄い青色なのだ。


 「なんやろうなホンマ……」


 大地はすでに理解の範疇を超えた数々の出来事に頭を悩ましながら、モニターに表示されている自分の名前を触ってみた。

するとモニターが一瞬消えて、すぐに少し大きめのモニターが現れた。

大きさ以外には内容も違っていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・ステータス

・名前:火灯(かとう) 大地(だいち)

・種族:ヒューマン族

・特技:なし

・魔法:なし

・スキル:サバイバル

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「いやいや、スキルってなに?サバイバルってなんやねん……」


 「これがゲームなら説明書が欲しいとこやな。」


 「ゲームってなんやねん!」


 「いや、ステータスとか完全にゲームやん。」


 大地は現状に追いつかない苛立ちで、つい切れ気味に答えた。

青葉は冷静に現状を把握しようとした。

念の為、他人のモニターを操作できないかと考え、青葉が大地のモニターを操作してみようとするが、青葉の指は大地のモニターを通過してしまった。


 次に青葉は自身のモニターを壁に押し付けてみた。

壁に押し付けている間はモニターは姿を消して揺らめいていたが、壁から離すとまた現れた。

この事により破壊はできないと判断した。


 そして、青葉は自分のモニターを操作してみる。

大地と同じく表示された自分の名前に指で触れてみた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・ステータス

・名前:(さざなみ) 青葉(あおば)

・種族:ヒューマン族

・特技:なし

・魔法:ファイア【火】 ウォーター【水】 ウインド【風】 サンドウォール【土】

・スキル:賢者

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「なんでお前は魔法あるねん!」


 青葉のモニターを覗き込んでいた大地は驚きの声を出した。

魔法や特技の文字は大地にもあったのだが、大地はそこに『なし』と表示されていた。

青葉が得意げに「おぉ、だって俺天才やもん。はは!」と大地の肩をポンポン叩きながら笑った。

大地は小声で「腹立つわ……」と呟いた。

その言葉をさらっと流しながら、青葉はスッと立ち上がる


 「ちょっと魔法使ってみるわ」


 「使えるん?」


 「さー? 多分適当になったら出来るやろ」


青葉はテントのカーテンを押し上げて外に出た。

少し歩いた何もない平原の真ん中に立った。

そして、大きく息を吸い両手を前にかざした――


 「ファイヤ!!」


大声で魔法を叫ぶと1cm程の火の玉が掌から発生し、辺りは火の海に――  ならなかった。

何も起こらず周囲には沈黙が訪れる。


 「できてへんやん。」


 「おかしいなぁ……」


青葉は頭を掻きながらモニターを再度確認した。

そしてすぐに気が付いた。

ファイヤの隣にある『火』の文字だ。


 「ちょっと試したい事あるからあっち行っててや。」


 「了解。」


 大地が離れた事を確認した青葉は軽く咳払いをした。

そして――


 「地獄の業『火』よ、我の呼びかけに応えよ! ……ファイヤ!」


 適当に思いついた詠唱を唱えると同時に青葉は両手を突き出した。

すると、青葉が突き出した手の少し前にボウッ! っと火が付きすぐに消えた。

青葉が自身の体から少しだけ力が抜けた事を確認すると、突然大きな笑い声が聞こえた。


 「ぶっ、わーっはっは! わ、我のよ、呼びかけに、とか――」


 「黙れ! なんでおるねん。」


 「はは……い、いやぁ、ちょっと心配して、ぶっ!」


 青葉の問いに答えた大地は再度腹を抱えて笑い出した。

おそらく他の誰かが同じ事をしても、大地はここまで笑う事はなかっただろう。

しかし、頼んでもこのような恥ずかしい事はしないであろう青葉が一人で勝手に恥ずかしい言葉を発していたのだ。

笑わないでいられる訳がなかった。


 「『水』よ落ちよ。ウォーター」


 バシャン――


 大地の頭の上にコップ一杯程しかないであろう水が突然現れ、そして慣性の法則に従い大地に向かって落ちた。「おまっ! 何するうわっ!」大地が何かを言おうとしているが構わず三度目のウォーターを大地の頭の上に唱えた。



 その後、青葉は魔法について検証をしてみた。

まず魔法を使う為には、それに応じた言葉を使わないといけないようだ。

しかし、ただその言葉を唱えても魔法は発動しなかった。

つまり「『火』ファイヤ」や「『水』ウォーター」等では発動しなかったのだ。

更に検証をした所、その言葉に合わせた文章でなければ発動しない事もわかった。

「潤す『火』を与えよ。ファイヤ」や「敵を焼く『水』となれ。ウォーター」では発動しなかった。

しかし、言葉に応じた文章であれば特に問題はなかった。

例えば「敵を焼く『火』となれ。ファイヤ」や「潤す『水』を与えよ。ウォーター」等の簡単な言葉でも魔法は発動したのだ。


 ちなみに、青葉は別の魔法も試した。。

「唸れ『風』よ。ウインド!」と唱えると突風が吹いたのだ。

ただの突風を呼ぶ為の魔法であった。

大地が「スカートめくりにはもってこいやな」と呟いた。

次に「『土』よ、壁となれ。サンドウォール」と唱えると、突然草原に砂の山ができた。

ただし、足首程の高さ程であったが……

青葉は数回の魔法を唱えた所でかなりの脱力感に襲われた。

魔法を唱える度に、体から何かの力が抜けるのを感じていたのだ。

おそらく、抜けたと感じた力が魔力であると青葉は推測した。


 「いやぁ、怪奇現象みたいですごいねんけどさ……あんま使われへんな。」


 「使い方によるやろうけど便利っちゃ便利やで?」


 「そうか? 俺は頭悪いから使えるとは思えへんけどな……」


 「せやな。とりあえず次行こか」


 青葉はそう言いながらモニターを出した。

「お前、否定してくれよ!」と大地が言っているが、完全に無視をしている。

そして、ステータス画面では確認すべき事はもうないと判断し、次にlevel 1の文字を触ってみる。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・次のレベルまで0/30ポイント

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 青葉は思わず苦笑いをしてしまう。

完全にゲームの世界ではないのか?と考えた。

すでに元の世界でない事は薄々感づいている。

しかし、よくあるファンタジー小説やラノベ等では、ほとんどの場合は誰かに召喚されて異世界に移動するはずだ。

青葉と大地は誰かに召喚されたような様子はない。

だが、ここまで確認したモニターや魔法。そして今ある次のレベルまでのポイント。

総合して考えると異世界に迷い込んだのは間違いないのだと思った。


 「てか、一ポイントの稼ぎ方をまず教えて欲しいわ。」


 「せやな。ゲームとかやと敵を倒したらもらえるけどな。」


 「敵って誰なん?」


 「知らんがな!」


 大地は首を傾げながら青葉に尋ねた。

青葉も敵と言いながら具体的に何が敵かはわかっていないのだ。

そして大地が何も考えずに青葉に質問だけしている事を察してだんだんと腹が立っていた。


 「とりあえず次のスキルいこか」


 「スキルって結局なんなんやろうな?」


 「さー・・・ゲームとかやと魔法使えたり、技を使えるようになるのはスキルの恩赦やったりするねんけどな。」


 「ほな、お前が魔法使えるのは賢者のおかげ?」


 「かもな。でも、スキルほ覚える為にはなにかしら必要で条件やら対価やらが必要やったりもすんねん」


 「なるほど!ゲームせんからよくわからんけど、そのあたりお前に任せるわ」


 「お、わかった」


 大地が疑問をそのまま口にし、諦めたように青葉が答える。

その後すべてを青葉に任せる辺り、大地がどれだけ思考を放棄しているかがわかるのだが……

青葉は大地がすべて任せてくる事は元々予想していた。それでも青葉は少しは自分でも考えて欲しいと願ったのだが――

青葉は諦めたように深いため息を一つ吐き、スキルの文字に指をあてる。

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