宿屋で食事
いつも見て頂きありがとうございます。
「おい青葉! うまいぞこれ!」
「うまし!!」
「お前ら感想下手か!」
毎回食べた後の感想が同じ二人に、青葉が初めて突っ込みを入れた。
そう、三人は宿屋の食堂にいた。そこで久しぶりに口にした調味料を使った料理に舌鼓を打っていた。。
出されたメニューは3人がよく目にしていた肉をステーキ用にカットしたものを焼いたもの。
つまり、レッドウルフステーキだ。
それと黒パン。これはフランスパンに近い形状をしているが、生地がフワフワしていた。
最後にスープだ。このスープには見た事もない草が浮いている。
「なんやこれ?」と青葉は疑問に思う。しかし、仮にも宿屋だ。
食べれない物が並ぶはずはないだろうと考え青葉は並んだ食べ物に口にした。
「どうだいあんたら。美味しいだろ?」
「おう! うめーよおばちゃん!」
「うましうまし!」
食事をしている三人のテーブルに、突然宿屋のおばちゃんが出てきた。
大地と檸檬の二人は感想を述べ、おばちゃんは満足そうに微笑んだ。
しかし、出てきた感想はやはりいつもと同じだった。
『うまい!』の一点張りだ。
まぁ、確かに美味しい。
「おばちゃん。このステーキなんやけど、レッドウルフの肉使ってるであってるやんな?」
「そうだよ?」
「やっぱりか、俺らも道中によくレッドウルフの肉を食べてたんやけど、レッドウルフの肉に調味料を加えるだけでこんなにも味が引き締まるとは思えへんかったわ。後、このパンも見た目とは裏腹でフワフワして旨いね。ただ、このスープなんやけど……この、浮いてる草はなんなん?」
「あ、これかい? これは近くで取れる雑草だ! はっはっは!」
青葉は豪快に口に含んだスープを噴出した。
「ぶはっ! ……ごほっ。ぇ˝? まじで?」
「はっはっは! 嘘よ嘘! ヒーリングラスだよ。聞いたことくらいはあるだろ?」
三人は聞いたことないと思った。そしてもう一度考えた。……いや、でも――ないな。
「これは傷を癒す効果や疲れをとる効果があるんだよ。赤髪のその子疲れてそうだったからねぇ」
そう言いながら「はっはっはぁ!」豪快に笑うおばちゃん。
本気で雑草と思った青葉は苦笑いを浮かべながら感謝の言葉を伝えた。
「ところであんたら冒険者だろ?」
「え? 違うよおばちゃん?」
「あら? とぼけるつもりかぃ? その腕輪が証拠じゃないのかい?」
大地の返事に笑いながら答えるおばちゃん。
大地と青葉と檸檬は自分の腕輪を見ながら首を傾げた。
「ねーねー。なんでこれがあると冒険者なの?」
「お嬢ちゃん冗談はおよしよ。冒険者ギルドに登録しないとそれは貰えないのよ?」
檸檬の言葉におばちゃんの顔が険しくなった。
その様子を察した大地が、おばちゃんにここに至るまでの経緯を話した。
それで得心を得たのか、おばちゃんは大きく頷き、そして答えた。
「あんたら転移者みたいだねぇ……」
転移者?なんだそれ?
大地と檸檬は首を傾げて頭を悩ました。
青葉は大方の予想はつけていた。
ファンタジー小説や漫画でよくある展開。
魔法が使えた時点でほぼ間違いないと思っていたが、おばちゃんの言葉でそれを確信した。
「おばちゃんの言う転移者っていうのは、つまり異世界からこの世界に渡ってきたって事やな……」
「おぉ、なるほど! ……って異世界っておい?!」
「えぇぇぇ~~~~!」
青葉が導き出した答えに驚く大地と檸檬。
それを見て盛大に笑うおばちゃん。
「ま、あんたら明日にでも冒険者ギルドにいって登録してきなさいな!」
食堂には盛大に笑うおばちゃんと、驚愕した表情を見せる大地と檸檬。
そして、現状を把握した頭を抱える青葉がいた。
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食事後の宿屋の一室。大地と青葉と檸檬は今後の予定を立てる事にした。
最大の目標は元の世界に戻る事。3人共意見は一致した。
次に冒険者ギルドへの登録。これについても特に意見が分かれる事はなかった。
なにより青葉が「金の問題と情報収集を同時に出来る」と開口一番に二人に告げた事が大きかった。
そして今、3人が議論している内容が……
「先に武器防具やろ?」
「やだやだっ! 服が欲しいのっ!!」
「いや、俺がなんか作るからさぁ。材料買ってぇや~。頼むわぁ~」
「駄々っ子かお前らは!」
今手持ちのお金を、どのように使うかで揉めていたのだ。溜めると言う選択肢は3人にはなかった。
換金して得たお金は合計22.500R。
内訳は藍晶石1個で20.000R
レッドウルフの牙の残り15個が1.500R
レッドウルフの毛皮が2個で1.000R
ちなみに、宿代が朝食と夕食がついて一人1.500Rした為、4.500R。
それを差し引くと、残りは18.000Rだ。
藍晶石を大地が加工する際に散々失敗した為、残った数が3個しかなかった。
冒険者ギルドの受付嬢から聞いた話では貴重な鉱石のようなので2個は換金せずに手元に残しておくことにした。
青葉は冒険者ギルドに登録する事が決まり、先に提案したのが武器と防具の充実だ。
大地の武器は今ある長剣で間に合うかもしれないが、青葉と檸檬に十分な武器がなかった。
それに防具についても、今までみたいに大きな攻撃があたる心配がない訳ではない。
いつどのような敵と遭遇するかわからない以上、最重要項目として防具の充実を挙げてきた。
一方檸檬は女の子だからだろうか。
また、自身の服が一着しか無い為、早々に自分用の服を欲していたのだ。
一番の問題は下着ではあったが、その問題については大地が先ほど間に合わせ用の物を作成した為、解消できた。それでも、ちゃんとした下着や服を檸檬が欲しがる気持ちは大地にも青葉にもわかる。
しかし、大地の服を気に入って着ている為、大地の服で応用が利くと提案した所
「大にぃの服がなくなるじゃん!!」と言って何故か激怒したのだ。
最後に大地だが。これはただの自己満足である事は言わずがな。
自分で作ってみたい。ただそれだけの理由だった。
しかし、檸檬の服についても材料を渡せば作成しそうなので、選択肢に入らない訳ではないのだが……
このまま話し合っても埒が明かないと判断した青葉は立ち上がり話をまとめる事にした。
「とりあえず、檸檬ちゃんの服が買う事にしよう。それは大地も文句ないやろ?」
「おう! そこは別にええよ!」
「やったぁ!! ありがとぉ!」
「次な、武器と防具を買うか、大地に作ってもらうかなんやけど。大地は材料買ってその日のうちに防具とか作れるんか?」
「無理っ!」
大地はきっぱり答えた。頭を抱えながら青葉は応じた。
「あのなぁ大地……俺ら金ないねん。」
「おう! 知ってるで!」
「すぐ倒しにいかれへんのに、どないするつもりやねん!?」
「ぉぅふ。そこは考えてへんかったわぁ……」
アホの子(大地)の答えに青葉は頭痛を覚えた。檸檬が「なら買っちゃえばいいじゃん!」と告げた事が決定打となり、今あるお金の使い道は決まったのだ。
「お、おれの存在意義が……」とボソッと呟いた大地はスルーする事にした。
どの道、道中で手に入る材料で、今後は大地に武器防具も頼む予定であるのだが、それは今は言うと大地は今すぐにでも狩りに行こうと言い出すはずなので、口に出す事を止めたのだ。
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