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強敵

 カイヤナイトスパイダーは目の前の光景を不思議そうに見つめていた。

この階層で圧倒的強者にあたる自分に牙を向けるものはいなかった。

同種の者たちでさえ怯え逃げるのだ。即ち自分が待ち構えているテリトリーを犯す事はしないのだ。

しかし、今目の前に現れた青年は骨の剣を構え自分に襲い掛かろうとしているではないか。

別の青年は先ほど感じた魔力を帯びている。おそらく魔法と扱うのだろうと考えた。

その後ろにいる少女は俯きながら何かをしている。何をしているかはわからないが、取るに足らない相手である事は確かだ。

 しかし、カイヤナイトスパイダーは再度骨の剣を構えた青年を見たところで思い出す。

現在、自分は住処を変える為に自らのテリトリーから出ていたのだと――

自身のテリトリー……すなわち巣の中であれば誰であろうと遅れは取らないと自負している

しかし、今いるこの場所は自身の巣ではない。

万が一にも目の前にいる者達が自信を脅かす存在であった場合、苦戦するであろう。運が悪ければ逆に駆逐される。

 そして目の前にいる骨の剣を構えた青年は、巣の中であれば負ける事はないだろうと考えた。しかし今いる場所では負けないにせよ苦戦すると判断した。

ただし、この青年一人だけであった場合だ。そこまで思考した後、来た道を引き返えし巣に戻ろうとした。

 身を翻した直後、骨の剣を構えていた青年が行く手を阻んだ。

逃げる事は困難と判断し、カイヤナイトスパイダーは覚悟を決め、この場で戦う事を決意したのだ。






















                        ◆◆◆


 大地はカイヤナイトスパイダーを目の前にして踏鞴を踏んだ。

目の前にすると思った以上に大きく気色が悪いのだ。

もちろん釣りやキャンプ等が大好きな大地は虫に対して苦手意識はなかった。

しかし、虫を愛でる程に大好き! とまではいかない為、流石に引いていたのだ。

そう思っていると突然カイヤナイトスパイダーが身を翻しお尻をこちらに向けてきた。

蜘蛛はお尻から糸を吐く。そういう認識があった大地は咄嗟に回避した。

そして回避してからカイヤナイトスパイダーに視線を向けるとこちらを向いていた。


 (思惑が外れて頭にきてるんかな? ざまぁみろ!)


――いや、実際には違うのだが、大地はそう思っていた。

そして、大地が骨の剣を構えると、突然カイヤナイトスパイダーは『口』から糸を放った


 (嘘やん! ほんならなんでさっき尻向けてきたねん!)


 カイヤナイトスパイダーの糸は大地の服に当たった。

そして、カイヤナイトスパイダーは糸にかかった大地を引き寄せようとした。

直後、大地とカイヤナイトスパイダーを繋いでいる糸に向かって火の玉が飛んできた。

その火の玉はカイヤナイトスパイダーの糸と当たると勢いよく燃え、カイヤナイトスパイダーの糸を焼き切った。


 「お前何してるねん! ていうか何したかったねん! こっちから見てたらあっちいったりこっちいったりしてるだけやったぞ?」


 「いや、だって普通の蜘蛛って尻から糸出すから避けたつもりやったねんって! 口から吐く蜘蛛なんておらんやん!」


 「一匹だけおったけどな…… まぁええわ。もう油断すんなよ!」


 「大にぃがんばれ!」


 「おう! 任せろ!」


 そして、大地は糸が絡まった上着を脱ぎ捨て、再度骨の剣を構えた。

カイヤナイトスパイダーは悔しそうに前足をキリキリ鳴らした。

そして「キシャアァァァァァ!」と咆哮をあげ、前足を大地に向け振りかざした。


 「ちょっ! グゥッ!」


 大地は咄嗟に横っ飛びをして回避を試みたが、カイヤナイトスパイダーの攻撃は大地の左腕をかすった。

大地は地面に足が着いたが力が入らず、勢いを殺せぬまま転がった。


――痛いのだ。


 大地はこの世界に来てから攻撃という攻撃をまともには受けていなかった。

今までの戦闘は毎回レッドウルフだった。そして、戦いは檸檬を助ける為に無我夢中で。二回目以降は一度倒した事とスキルの恩赦により一方的に勝利を収めていた。

しかし、今回は違う。明らかにレッドウルフより強く、そして攻撃も早い。

大地は下唇を噛みながら自身の左腕に視線を向けた。

血が出ていた。それもかなり出血している。

痛みによって左腕の感覚さえないのだ。


 大地はパニックになった。

もちろん、無傷で済むと思っていなかったが、考えが甘かった。

ただかすっただけでこの様だ。

カイヤナイトスパイダーは好機と見て、大地に追撃を仕掛けたとする。


 「強固なる“土”よ! 彼の者を守り給え! 『サンドウォール』!」


 青葉は咄嗟に『サンドウォール』を唱え、寸前のところでカイヤナイトスパイダーの攻撃を止める。

しかし、カイヤナイトスパイダーは砂の壁などお構いなしに攻撃の速度を緩めず砂の壁を攻撃した。

壁は無残に壊れ、その衝撃で大地も吹き飛ばされた。

跳んできた大地を青葉が受け止めて大地の傷口を見た


 「これあかん系やわ。大地! 逃げるで!」


 「いや……三人で逃げるのはキツイな。二人で逃げてや。俺が……俺が止めてる間に二人で逃げてや!」


 「アホか! お前見捨てていける訳ないやろ! それにその傷でどうやって戦うねん!」


 「大にぃ! 成功するかわからないけど、受け取ってね!!」


 会話をぶった切るように突然発した檸檬が何かを大地に受け取れと言ってきた。

言葉の意味が理解できず、二人は檸檬に視線を向けた。その直後、檸檬の手から淡い白色に光る球が現れたのだ。


 「いっくよぉ~! 『ヒーリング』!」


 檸檬が叫びながら手に現れた淡い白色に光る球を大地に向かって投げた。大地は右手を前に出し受け止めようとしたが、それは叶わなかった。

なぜなら、光の球は大地の目の前で弾け飛んだのだ。

その直後、大地の体を先ほど檸檬が投げた光の玉と同じ色の光が覆った。

大地はみるみるうちに左腕の痛みが消えるのを感じた。

すぐさま左腕に視線を向けると、傷が塞がっていたのだ――


 「続けてぇ~、『パワーブースト』!!」


 檸檬はオレンジ色に光る球が現れ続けざまに大地に向かって投げた。

先ほどと同様に大地の目の前で弾け飛び、大地の体を覆った。


 「え? なんやこれ?」


 「回復魔法と補助魔法を覚えたんだよ! 初めに投げたのが回復魔法で、今のが補助魔法! 『パワーブースト』は力が上がるみたいだよ! どれくらいの効果があるかも、効果時間がどれくらい持つかもわかんないけど、ないよりましだと思うよ! ゲーム的に言えば! とりあえず、大ぃも青にぃも頑張って!」


 「お、おう! ありがとう! ほんで次こそ任せろ!」


 左腕の痛みが消えた大地は檸檬に感謝をした。

血の跡が痛々しく見えるが傷口は綺麗に塞がっているのだ。

それに力も漲っていた。これが『パワーブースト』の効果なのだろう。

実際にどれほど力が増えているのかは確認しようがなかったが、感覚的にはいつもの二倍は力強く感じる。

そして、大地は視線をカイヤナイトスパイダーに向けた。


 大地がヒーリングを受けた辺りから青葉はカイヤナイトスパイダーに対して牽制をしていた。

しかし、『アイス』も『バースト』も何発か唱えたが全てダメージには繋がらなかった。

『アイス』は青い鉱石のようなものに遮られ、『バースト』は避けられてしまう。

カイヤナイトスパイダーも蜘蛛の糸を放ち応戦しているが、青葉はそれを『ファイヤ』で焼き切っていたのだ。


 「大地、こいつさっきから糸ばっか吐きよる。なんか狙ってる気がするねん。」


 「せやな。でもとりあえず、悪いけどそのまま糸焼いといて!」


 「了解! ちょっと攻撃に手を回せそうにないけど、お前はどうするん?」


 「任せろって!」


 先ほどまでの弱気な態度がどこにいったのか。

大地はそう言いながら、カイヤナイトスパイダーに向かって肉薄した。

カイヤナイトスパイダーは大地の気配を察知し視線を向けた。そしてキリキリ前足を鳴らす。


 「この後攻撃するんやろ!? わかってるねん!」


 大地はそう言いながら後ろに飛んだ。

数回の攻防で大地はカイヤナイトスパイダーの癖を見抜いていた。


――前足をキリキリ音を鳴らせた後に攻撃するのだ


 大地の予想通りに大地がいた場所をカイヤナイトスパイダーの前足が空を切った。


 「青葉、今や! こいつに向かって『バースト』や!」


 「はいよ。全てを力の限り"破壊"せよ! 『バースト』!」


 二人の見事な連携で、カイヤナイトスパイダーの2本の右後ろ脚が爆発の被害を上、弾け飛んだ。

すかさず大地がカイヤナイトスパイダーに肉薄し「お返しや!」と言いながら、カイヤナイトスパイダーの左前脚を切り捨てた

 カイヤナイトスパイダーの左前足が宙を舞ったと同時に青葉が『アイス』を唱えた。

カイヤナイトスパイダーの背中に命中したが、やはり青い鉱石のような物に弾かれた。

大地はそれを横目に続けざまにもう一本の左前足を切り捨て後ろに下がった。


 「くそっ! やっぱ足から狙うしかないみたいやな」


 「せやな! 青葉、『アースシールド』はあかんの? さっきのレッドウルフみたいに足止めして『バースト』とかどう?」


 「お前と檸檬ちゃんがいちゃいちゃしてる間に試したけどすぐに抜けてきたわ。」


 「ちょっと! 青にぃ! レモンは大にぃといちゃいちゃなんかしてないよ!!」


 後ろから大声で檸檬が叫んでいるが、今はそれ所ではない為、青葉と檸檬は無視をした。

そして、背中の青い鉱石が硬すぎる為、二人は手分けして足を狙う事に決めた。

カイヤナイトスパイダーはすでに4本の足を失っている。

残りは半分だ。

 大地がカイヤナイトスパイダーに向け再度、骨の剣を構えた。と、同時に――


 「キャッ! なにこれ! だ、大にぃ、青にぃ助けて!」


 突然背後から檸檬の悲鳴が聞こえた。

檸檬に視線を向けると、カイヤナイトスパイダーの糸が檸檬に巻き付いていた。

もちろんカイヤナイトスパイダーとは離れている場所にある糸だ。


 「くっそ、多分これが魔糸操作や! 俺が檸檬ちゃんなんとかするから大地ははよあいつ倒したって!」


 「一人でか?! まぁ、しゃーないわな。 任された!」


 大地はカイヤナイトスパイダーに視線を戻しカイヤナイトスパイダーの左側に肉薄した。

危険を感じたカイヤナイトスパイダーは残った4本の足で器用に大地に方向転換し、大地に向かって糸を放つ。

しかし大地は糸を躱すと、勢いを殺さずに左後ろ脚二本を切り捨てた。

 カイヤナイトスパイダーは体制を崩しながらも先ほど飛ばした糸を巧みに操り、大地に向けて再度飛ばした。大地の足にカイヤナイトスパイダーの糸が絡まる。


 「くそったれ!」


 大地は毒づきながらカイヤナイトスパイダーの腹部に向かって骨の剣を突き刺した。

そして、それがカイヤナイトスパイダーにとって致命傷になったようだ。

キリキリ前足を鳴らしながら、カイヤナイトスパイダーは静かに息を引き取った。

その瞬間、大地と青葉、そして檸檬の体がレベルアップを知らせる淡い光に包まれた。


 「大地! 倒したんか!?」


 「多分やけどな……はぁ、疲れたわ、ってか檸檬ちゃん大丈夫なん!?」


 「だいじょ~ぶい!大にぃ心配してくれてありがと♪ にゃはっ!」


 檸檬はそう言いながら蜘蛛の糸に絡まり埋もれながら、完全に大丈夫ではない状態で大地に向かって笑顔でVサインをしたのだ。

ご意見、感想お待ちしております!

自分で確認した上で投稿はしているのですが、誤字や脱字もあると思うのでもしよければ報告もお願い致します!

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