[chapter:Ⅱ-ⅰ 神名木サイド]
「で、どうだった?矢平の告白、照れんなって、あたし等の間柄だろ?教えろよぉ」
「付き・・・・合えなかった」
ぼそぼそ・・・と葵は呟く。
「ハァ?振ったのか?アオイ!」
「ううん、ただ・・・うまくいかなかった・・・」
「うまくいかなかった・・・ってどうして?!なんかアオイの癇に障るようなことしたのか、アイツ。」
夕方のショッピングモールのフードコートで、朱美は葵の結果に、目を丸くした。
「朱美、口の中にポテト入れたまま話さないの!はしたない。それはそうと、葵、矢平君、そんなに悪い子だったの?」
沙月も不思議そうにそう答える。
「ううん、悪い人かどうかは、解らなかった。彼、必死だったから。」
葵は軽く俯きながらハンバーガーを齧る。
「で、アオイはどういう回答したの?」
「友達からでもって・・・。そしたら矢平君、卒倒しちゃって・・・で影から出てきた矢平君の友達に担がれてどこかに行っちゃった。私、如何したら良いか解んなくて」
葵はそう自信無さ気に言う。
「そんな、吃驚しなくても。」
「だってさだってさ、初めて告白されたんだろ?」
朱美は不得意ながら話を整理しながらテーブルに乗り出しながら話す。
「うん・・・そうだけど・・・」
耳を真っ赤にしながら葵はそう呟いた。
「どんな気分だった?」
「そりゃ・・・嬉しかった・・・けど」
事実、こんなにも人から好きだと言われることが、幸せなものだと思っても居なかった。
「じゃぁさ、付き合っちゃえばいいじゃん」
「えっ、でも、でも、でも、あっこやさっちー、言ったじゃん。付き合う人は自分のことを第一に考えてくれる人がいい、とか情熱的な人が良いとか、将来性がある人がいい、とかさぁ」
テンパる葵の発言に対し、溜息交じりで二人応じる。
「アオイ。落ち着いて聞いてね?」
「えっ、うん。」
「そんなこと、パッと会っただけでわかる訳ないじゃない。」
「アオイ、そんな出会った人の全てを瞬時に解る程の超能力、持ってたっけ?」
持ってる訳ない。そんな事できたら、どんだけ世界は平和なのであろうか。。
常識過ぎて当たり前のであっただけに葵の時はしばし止まる。
「おーい、アオイー戻ってこーい。あーダメだこりゃ」
朱美は顔の前で手をふるふると振る。が、葵からの反応はない。
「もう、仕方ないなぁ・・・」
と沙月は葵の前に両手を持っていき、
パァン
両手を叩く
「ふひゃぁああぁ」
「どぉ?起きた?」
「ふ、あ、ハッ。あ、うん。起きた。」
「でも、でも、でも、私、友達関係なら良いよって言ったし。うん。大丈夫。」
両手を胸の辺りでギュッと握り締めて自分を落ち着けようとする葵に対し、相方二人はさらに溜息を付く。
「それ、遠まわしにフッてない?」
「そういう・・・もん?」
「そーいうもん。」
腕組しながら朱美はそう答える。
「あうー・・・」
「そういうどっちとも判断付かない時は、『ゴメン、回答保留させてもらっていいかな?来週返事するから!』とか何とか言って切り抜けなきゃ。」
哀れむようにそう答える沙月に、更に葵は項垂れる。
「くにゅぅ・・・」
「うかーっ、矢平も災難だなぁ。意味も解らず振られるなんてよ。」
「私、謝ってくる!」
不意に立ち上がり、今にも駆け出しそうになる葵を、朱美は慌てて静止する。
「チョイ待ち。付き合うって決めた訳じゃないのに謝ったりすると、矢平、今度こそ卒倒して死ぬから。眠りのマロ永眠するから。イヤマジで。」
「そうよ。曲りなりにもフッちゃったんだから。次の恋愛に移るのか、若しくは追っかける行動に移るか。それ位しか葵には選択肢ないのよ。そうしないと、勇気を振り絞った彼に失礼よ」
「じゃ、どうすれば・・・」
困惑する少女達を前に、
「お客様、お水をお入れ致します」
空気を読んでか逆に読まずにか。姦しいテーブルに店員が水を注ぎにくる。
「あ、どうも」
「お客様、伝票落されていましたよ」
と、そっと伝票を置いていく。
賑やかだった三人の間に凍て付くような静寂が走る。そして、重い口を朱美が開ける
「沙月、何だった?」
「『落されていましたよ』よ。」
「伝票は『牛丼の山荷屋』で蝦チリ三九〇円、お持ち帰り。アオイ」
伝票に書かれた文字を読み上げる
「急だなぁ・・・もうちょっとコロッケバーガー食べたかったのに。」
「なぁに言ってんの。仕事でしょ?」
「うぐぐ・・・」
「まー。まー、うちのリーダーそういうオットリしてるとこあるしさ。でも仕事ん時は右に出るものないし。」
「えへへぇ~」
勝手に頭を掻きながら照れる葵を他所に二人は帰る支度をする
「なに照れてんの。置いてくよ?」
「あ、後一個だけぇぇぇ」
「遅れんなよ、リーダー!」
「あっ、待って、待ってよぉ」
三人は席を立つ。