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[chapter:2-1]

「なぁお主。未来は知りたくないか?」

「悪質な勧誘はご遠慮願います。」

 

 神名木に見事なまでに玉砕した俺は、なんと、その場で気を失い、保健室にぎまれてしまった。

 そこで「あ・・・知ってる天井だ」と言ったのはまぁ、俺クオリティだろう。


 気絶して目が覚めたら真っ白い部屋でグラサンかけたお姉ちゃんが秘密組織に招待してくれて決戦兵器に乗り込めだの、なんだのと言ってくる事も勿論ない。

 至って普通の学校の保健室で俺は目を覚ました。窓際にあるパイプベッドだが、年季も入っており、ベットで体を少し傾けただけでギギィと劣化したスプリングの音がする。天井も真っ白というより、汚れで少し黄ばみが出ている。勿論、ベットの横には誰も居ない。


「気が付いたか?、フラれ少年。」


 前言撤回、知らん奴がいる。しかもカナリの不届き者だ。初対面で意気消沈している男(十七)が、更に、人生初の勇気を絞って告白した男(十七)に対して『フラれ男』と抜かすかこのガキャァァァァ。


 声質からして相当若い年齢だろう。一言文句を言ってやろうとバサッと掛け布を剥ぎ、上半身を起こして、声の主のほうを振り返る。すると知らない女性いや、小学生か。凛とした態度でにやつきながら腰を手に当てて立っている。


 ・・・えっ、女?


「どうした、キョトンとした顔をしよって。そんなに女が珍しいかえ?」


 ホラ、やっぱり女性だ。一瞬俺の無意識の更に奥の阿頼耶識にまで女についてばかり考えているから、とうとう女の幻まで見るようになったかと思ってしまった。

 背丈は・・・まぁ大きいとはいえないな。小学5年生・・・でも背の順で並ぶと腰に手を当てているのではないだろうか。 目は若干のツリ目。髪は、茶髪か。今時の女子は小学生から染めるのか?緑のワンピースに白のチュニックか。お洒落にも気を使う年頃なのだろう。金のネックレスも付けている。あ、あれはロケットタイプか?


 しかしなんだ、俺にこんな不遜な台詞を吐ける女友達がいただろうか?


「どちらさんでしょう?」

「見て解らんか?妾は神じゃ神。ホラ存分に称えよ。祝え。」


 突然何を言い出すんだ、このちっこいの。

 そんなガッキい神が居るかっての。


「お帰りください。悪質な宗教勧誘はお断りなんで」

「ちょちょちょ、ちょっと待った。妾はまだ新人の神見習いじゃが、ほれ、一応何でも出来るのじゃ」


 なんでも、だと?

 まぁ、あれだ。相手は幼女だ。ネチョい事をやってお巡りさんと仲良くはなりたくない。


「ほほぉ、では何かやって見せてみろよ。」

「ふむ、では、ご期待に沿えて、オホン。」


 そう言うと幼女は、なにやら財布から五百円玉を取り出した。


「よく見とくのじゃぞ?今右手に五百円玉があります。これをギューと握って呪文をかけます、チルミルタミフルアヒャヒャノヒャ!」


 ギューッと懸命に握り締めて呪文を唱える幼女。まさか2枚に増えるとか消えるとか大きくなるとか、神を名乗るのだ。そこらへんと言うことはないだろう。


「すると、ホラ、五百円玉が2枚に増えています!!」


 俺の予想通り。いや、予想をはるかに下回る展開に対して、ドヤァとでも言うかのように満面の笑みを浮べる幼女。成功した!やった!と言った達成感さえ見て感じ取れる。

 まぁ、平成の世でこの手のテーブルマジックはテレビで嫌と言うほど見飽きている俺としては、何ともまぁ、微笑ましいの一言に尽きてしまうのだが。


「わーすごいすごい。よくできまちたねー、ではおうちに帰りましょうか」


 そう言ってこの自称神の襟首をひょいと捕まえる。


「ちょちょちょ、ちょっと待って。えっ、えっ、今の凄くないか?五百円玉が2つに増えたんだぞ?これ結構練習しないと出来ないんじゃぞ?」


 そう言いながら足をジタバタさせる幼女。だがその意思に反し、俺は保健室の出口のドアに手をかける。


「そういう学級会の出し物はおうちの人に見て貰いなさい。それで、後、金輪際、知らない人に胡散臭い事ふっかけないように。いいね?」


 と、幼女を外に出しピシャッとドアを閉める。こういった行為が小学生にまで及んでいるとは世も末だな。


「えっ、えっ、そ、そんな、お主を満足させる事ができぬ出来だったか。スマン。本当にスマン。じゃ、じゃがなじゃがな、こっちは自信があるんじゃ。ほーれ、親友のラッシー君でーす。ホイホイあーよしよし」


 おかしい。そんな訳はない。今放り出した幼女の声が、ドアを正面に見ている俺の後ろから聞こえる筈なんてないのだ。まだ、俺の正面には閉められた保健室の引き戸しかない。


「ほーれよしよしよし、ラッシー君、実はコサック歩きが出来るんです。ほれヒョイヒョイヒョイヒョイーッ」


 では、この後ろから聞こえるロリ声の主は何だというのか。俺はピシャッとドアを閉めたのだ。勢いよく。閉める隙に入るなんて凄い真似出来る訳無いのだ。

1階の保健室だが、窓には防球用の金網がしてあるから、このドア以外から入退室することなどありえない。そもそも引き戸を閉めてから数秒の間に背後に回るなどありえないのだ。

 とりあえず、振り返ってみて真偽を確かめるか。と後ろを振り向くと、

 

 CHU!

 

「おお、やはりラッシー君、お主の事気に入っておるようじゃな。振り向きざまにチュっとする辺り、シンパシーを感じるぞ!」

 

ニッと白い歯を見せて笑う、さっきに神が手品用のイタチかフェレットのような人形片手に宙に浮いていた。

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