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それぞれの正義  ー俺の正義ー   作者: ヨシア
第1章 そのきっかけ
4/12

No.3

    *********



 「……大地変動(グラウンダー)っ。壁だ」

 「はいっ」


 言われた直後、彼女は、地面に手を付けてアスファルトの壁を作り出した。



 それに俺の攻撃は防がれた。鉄球転移+爆発(・・)という組み合わせ。



 なぜか今の俺には、能力が3つも使えている。能力3つ所持者(トリプル)はほんの一握りの人間で、俺は能力1つ所持者(シングル)のはずなのに。


 それに加え、2つの能力を組み合わせることができるようだった。



 使える能力は、自分の【瞬間移動(テレポート)】、静かなる破壊者(バニッシュ)の右手の爆発、大地変動(グラウンダー)の【地面操作(ランドマスター)】だ。



 この共通点は、ここにいる人間。けれど湊の能力は使えていない。使える基準がわからない。


 俺は激昂しているはずなのに、それとは裏腹に冷静な所があった。



 さっき大地変動(グラウンダー)が防いだ鉄球には爆発の要素を組み合わせていた。そのため、作り出した壁が壊れる。


 「何なんですか? あの能力。彼の能力は【瞬間移動(テレポート)】だけじゃないんですか?」


 かなり焦った様子で、静かなる破壊者(バニッシュ)に問いかけている。


 「わからん。が、今は集中しろ」


 よく見ると、彼の右手に凄まじいエネルギーが集まっている。



 これは……やばい。


 「大地変動(グラウンダー)。少し、時間を稼げ」

 「了解です」



 そう言って、アスファルトに手を付けて何かしようとした。あいつらとの距離は25mほど。


 あの能力に対して、湊のそれは相性が悪い。まだ静かなる破壊者(バニッシュ)の方が対抗できたはずだ。



 だったら俺が大地変動(グラウンダー)を相手する。

 何でも来い……。ぶちのめしてやる。



 湊は俺の後ろにいる。

 意識を取り戻しているが、動くのが辛いのか、呼吸がかなり荒い。



 「はぁぁ──っ!」

 少女の足元から、高さ50cmほどのアスファルトの針が、こちら側に連なるように飛び出す。


 「甘いんだよ!」


 俺は鉄球を取り出して転移させた。そして近づく針にぶつけて、あらかじめ爆発を付与した鉄球で蹴散らす。



 「……総司」


 【瞬間移動(テレポート)】で攻める気でいたが、湊の呼び声で一旦踏み止まる。


 後ろを振り向くために鉄球転移を行い、大地変動(グラウンダー)に防御を行わせる。


 「湊! 無理に立つな!」


 フラフラにも関わらず、立とうとする眼鏡を制する。


 「そういう訳にはいかないだろう。()としては。取り敢えず……。応援は呼んでいるのか?」


 湊が一人称に"俺"を使うのは、相当にキレたときだけである。

 それに俺は頷くだけで応じる。



 そのとき、この場において最も強い男が口を開く。


 「残念だが……お前達はここで朽ち果てるんだ」


 静かなる破壊者(バニッシュ)の両手には、破壊のみを求めるエネルギーが収束していた。


  予想よりも完成が早い。あんなのが放たれたら、湊と同時に逃げられない……。今の【瞬間移動(テレポート)】じゃ、飛べるのは1人が限度だ。




 どうする……?



 「はぁ。仕方がないな。()が能力で防ぐからそのうちに【瞬間移動(テレポート)】で接近戦を挑め。どちらから仕掛けるかは……わかっているな?」

 そう言いながら眼鏡を押し上げる。



 俺は唖然とした。こいつは何を?

 「そんなボロボロの身体で、できるのかよ?」


 その言葉に湊は大きな溜息をつく。

 「できる、できないじゃない。やるんだ(・・・・)


 「……わかった」

 こうなったら湊は頑なに譲らない。だったら俺ができることを……ではなくて、やることを考えないと。



 「話は済んだか? なら終わりだ」


 その低い声色には、まるで絶望を具現化したかのような響きがあった。

 右手、左手でそれぞれで異なる能力を使う男が、両手をこちらに向ける。



 その瞬間、奴の前に落ちていたゴミが消え去る。両手からは全く音がしない爆発の火炎が、3mほどの槍のようになってこちらに飛んできた。



 そしてふと思い出す。"vanish"の意味を。


     "突然消える"だ──。




       ────





 湊が俺の前に直立不動で、両手を前に出した。



 「【排斥(リペル)】」


 

 湊が能力を発現させる。

 彼の両手の前の空気がまるで膨張したかのように衝撃波が発生し、静かなる破壊者(バニッシュ)の作り出した槍と激突した。



 「くそっ……」

 湊が呻き声を上げ、両足を踏ん張る。



 頼んだぞ、湊。


 俺はそれを見た瞬間、【瞬間移動(テレポート)】で奴らの右横に移動する。


 「なっ!?」 「えっ!?」


 驚愕が顔に浮かぶ2人。



 そして油断しきった静かなる破壊者(バニッシュ)の顔面に、渾身の力を込めた殴打を右手で繰り出す。


 「ぐっ……」


 「静かなる破壊者(バニッシュ)さん!」


 数m吹き飛び、起き上がって来れないのか、地に伏している静かなる破壊者(バニッシュ)



 ……上手くいったか。あの技は奴にとってかなり高レベルの技だったはずだ。仕留めたと思い込み、油断する。


 だからそこを突く。

 湊の攻撃時の定石の1つである、仕掛けて来た方を攻めるもきっちり履行した。


 遠距離系の能力者は、やはり近距離戦での対応があるはずだ。だからといって攻撃後には隙が出来る。


 湊の方を一瞥すると、攻撃を弾き切っていたが、かなりの疲労が目に見える。



 俺は大地変動(グラウンダー)と向き合う。

 「これで、あとはお前だけだ」


 「……それがどうかしたんですか? 例え、私1人になっても関係ないでしょう?」

 毅然とした様子で返答する。



 「だったら、終わりだ!」


 俺は鉄球に爆発を付与して、【瞬間移動テレポート】させた。


 大地変動(グラウンダー)の目の前にだ。


 「甘いんですよ!」


 それを大地変動(グラウンダー)は予測したのか後ろに跳ね飛び、地面に手を付く。


 俺はそれを見る直前に奴の真後ろに【瞬間移動(テレポート)】した。


 俺の【瞬間移動(テレポート)】は向きを反転出来ない。

 なので振り返りざまに大地変動(グラウンダー)に女だとか関係なしに全力の蹴りをくらわす。


 

 「きゃぁっ!」


 そのまま少しぶっ飛び、そのまま──


 彼女が能力によって作られた壁に激突した。


 頭を打ったのか、地面に伏せ落ちた。



 俺は一つ大きな息を吐いた。




 その後、ようやく来た応援に俺は彼らを引き渡した。


 湊もかなりの怪我で、俺もまったく体が動かない。

 少しの間、入院生活が続くだろう。





 ミッションは終了したが、釈然としないことが幾つかあった。

 静かなる破壊者(バニッシュ)が事件を起こした理由。そして、俺の能力。



       何なんだ?









 それから15分後、奴らを乗せた護送車が襲われ、2人を逃がしたという報告が届く──。







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