サクラ編 迷宮都市にて2
迷宮都市「女神の膝元」― 二階層
生存するモンスターは、|表面ににごった体液を纏ったゲル状生物だ、確かにプルプルふらふらしている。
ふらふらプルプルふよふよ
こいつらには人を攻撃すると言う概念は無いのかしら?
周りでは、同年代の少年少女達が剣や杖などでぽかぽかとぷるるんを叩いている。
ぷるんぷるん、ゼリー状の身体を揺らしながら、衝撃の方向にぷるぷると転がるぷるるん。
そして、ふと目線を遠くに向けたときそれが見えた。
少し、身体の大きい少年が振るった剣がぷるるんのゲル状の体液を切り裂き、にごったゲル状の奥に切り裂かれたその先にぷるるんのゲル状体液を構成する核の姿が。
結果、少年の攻撃はぷるるんの核を掠めただけにとど待った。
そう、あれがぷるるん達の核のようね...。
と思考をめぐらせている間に、異変が送る。
少年が切り付けたぷるるんが怒ったようにその体液の色をにごった青から薄い赤色変えたのだ。
そして、その色の変化に目を見開いた少年の前で一瞬の膨張の後、ぷるるんが衝撃波を伴ってはじけ跳んだ。
その体液が少年にかかり、苦しそうに少年がうめき声をあげる。
キャシー姉さん達から聞いたどおりの話しだ。
ぷるるんは、怒るとその身体を変色させてから周囲にその体液を撒き散らす、その体液は弱い毒性をもっているらしく、被った少年は結構な苦しみようだ。
そして、ぷるるん達の一番厄介な性質が、始まった。
先ほど爆散したぷるるんが周囲に放った衝撃波。
あれは、攻撃のためでもあり、そして―――――
「うわぁ」
「な、なにこれ!」
周りの少年少女達の口から漏れる驚いたような声。
彼らが見つめる先にあるのは、沢山の赤色に身体を染めたぷるるんの姿。
そう、コレがぷるるんの一番厄介な性質、彼らはそばで徘徊しているぷるるんが爆散した時に起こる衝撃波、コレが彼らの核を揺らし仲間が死んだ事を悟ると。
今のような状況になる...。
「ユノス、アルマ...一気に片を付けるわよ!!」
ユノスが近場にいる赤ぷるるんに踊りかかる。
一瞬の残光、光ったのは爪から放たれた斬撃、あまりにも速いスピードで降られた爪手甲は衝撃波を纏いぷるるんを外観を構成する体液を一気に消し飛ばす。
『飛燕・狼爪撃』
そして、振るわれた腕とは反対のもう一方の爪手甲がぷるるんの核を貫いた。
断末魔の声を発することも無く、ぷるるんは虚空に消えていく。
一方、長物を扱うゆえに少し開けた場所に躍り出たユノスは、片腕で振るう戟の一撃で核ごとぷるるんを葬り去っていた。
『双戟・舞踏演舞』
アルマの言葉として紡がれたわけではないが、彼女の父がアルマの双戟の使いかを見て名づけた技名。
左右に縦横無尽に振るわれる双戟は、その殺傷空間を制圧する。
重い戟の遠心力と、その細身にに宿っているとは思えぬ膂力が引き起こす破壊力はぷるるんの体液を物ともせずに、的確にぷるるんの核を破壊していった。
その光景を一瞥してから、私も右腕に納まっている腕輪に魔力を込める。
<コード・バリスタ>「一式・虹魔弓」
そして、属性魔力を込めることによって、多種多様の属性魔法矢を射出できるクロスボウ「一式・虹魔弓」を展開する。
ぷるるんの体液にもっとも有効なのは剣ではなく魔法、それも体液と同系色の属性魔法だといわれている。
つまり、普段の青い状態なら「青」の属性魔法、つまり水・氷の属性魔法だ。
そして今の状態は赤、ならばここで魔法矢として装填するのは「赤」の属性魔法、火・焔の属性魔法を装填する。
なぜ、反属性では無くと思う人もいるだろう、だがコレで合っているのだ。
つまり、青のぷるるんは純水を纏っている状態、コレならばワザワザ「赤」の属性魔法を打ち込むより核ごと凍らせて仮死、もしくは割り壊したほうが速いのだ。
そして、赤のぷるるんは先ほどの行動を見てわかる通り、体液は弱い毒性と爆発するような発火性を持っている。
つまり、赤のぷるるんを倒すにはワザワザ水をかけるより、引火焼失させたほうが速い。
―「属性矢「赤」・火を装填!」
クロスボウの装填部に赤い魔法矢が装填される。
しかし、それだけでは終わら無い。
詠唱魔法「火炎球」
「火炎球を火属性装填矢と連動展開」
背中に寄生したドライアドが薄く発光し、私の四肢に巻きつくと共に魔力が流れ込んでくる。
―「我が魔力を喰らい、空間に点在せよ」
「火炎球・複数展開」
その魔力を喰らいつぶしながら、多数の火炎球が私の周り中空に数え切れないほど展開されていく。
そして、距離にして数十メートル先にいる赤ぷるるんの一体に狙いを付けて―――
―――引き金を引いた。
放たれた魔法矢が撃ち込まれた赤ぷるるんに引火して、核ごとその身体を焼き尽くす。
そして、その魔法矢を追尾するように放たれた火炎球が燃えている赤ぷるるんの周りに降り注ぎ、引火。
燃えている赤ぷるるんの周りにいたほかの赤ぷるるんを一気に嘗め尽くし。
爆散した。
撒き散らされたぷるるんの体液にまた火炎が引火し、四散した火炎を受けて連鎖的に階層中のぷるるんが焼失していく。
そして、最後に二階層を多いつくすように、爆音を轟かせてから。
その爆音と衝撃波によって気絶した少年少女達を残して、ぷるるんは一掃されていいた。
唯一残ったのは、満足したように爪をしまって手甲の状態に戻している銀糸の少女と。
爆音に少し目を回しているのか、双戟を杖のようにして立っている栗毛の少女。
そして、その爆撃を行った張本人と。
その保護者の役の女性が二人のみだった。
この日、将来冒険者を目指す夢見る少年少女は、意図せずに無常な現実というものを思い知ったそうな...。
「さて、今日は疲れたし一度戻りましょうか...」
目の前で、肯定の頷きを返してくる無口な二人に微笑んでから後ろを向くと。
怖い笑顔を浮かべた鬼が二人。
「「お前ら!!やり過ぎだっていってんでしょうが!!!」」
この日、三人が思い知ったのは...、モンスターよりこの鬼どもの方が怖い。
だった、そうな。
次回は、クレア視点に戻ります。
予定です。




