十一話 【魔道神経】応用編
ふ~む、もっちりとした弾力から、かめばかむほど抵抗を見せ楽しませてくれる赤身、しかし、その弾力も一定の強さを越えると、あっさりと切れ、口の中にじゅわ~と肉汁を広げる...。
つまり、アリクイの肉はかなりうまかった...。
まあ、こいつの主食は昨日食べたかなりうまい黒鎧蟻だろし、それを食べているこいつがまずい道理はないのか。
一通り、現実逃避と温かい食事を楽しんでから、王牙さんに今日の戦果報告をする。
【魔道神経】が三本まで出せたこと、侵食してアリクイの舌を動かせなくしたこと...などなど。
大体の戦闘は見ていたらしく、特に表情を変えず俺の話を聞いていく王牙さん、そして、一通り話しが終わったあと、
「ふむ、そうか...
見ていて、気がついてはいたがやはり、あれは神経接続だったか...、そっち方面は、はっきり言って苦手なんだよな...」
と、呟きを漏らした。
まあ、俺が思ったより戦えていたのを見たがための、あの帰ってきたときの笑みだったらしいだが、基本力技でごり押しするタイプの王牙さんには、俺が使った神経接続といわれる使い方はできないらしい。
「まあ、そちらの方は、自己鍛錬してもらうとして...
三本出せるようになったのは、正直ラッキーだ、本数が出せるほうが私が教えることができる身体操作も楽だからな」
と、さっさと本題を切り出した。
【魔道神経】による身体操作、まあ、原理としては神経接続と変りはしない、侵食するのか自分の身体を操るのかの違いだけだ。
が、やはり、根本的にベクトルが違うらしく、身体操作が使える王牙も神経接続は使えない。
実をいうと、この会話の後、ためしに俺の身体に神経接続を試みたのだが、一回も成功しなかった。
「それっじゃあ、まあ、神経接続を使ったことで、やり方はある程度わかるだろうし
腹ごなしに、運動でもするか」
と、【魔道神経】―身体操作を使った俺と王牙さんの修行が始まった。
身体操作の修行というなのランニングを終えて、王牙さんがお昼を捕りにいったので。
手持ち無沙汰になった俺は、神経接続の練習をして見ることにする。
ちなみに、身体操作の修行は【魔道神経】を体中に張り巡らせて、血液のように体中に魔力を流しながら走るというものだったのだが。
コレが、意外と難しく、魔力の供給に気を払っていて、樹木に頭から突進することがしばしばあったとだけ言っておこう。
神経接続の練習相手は、お馴染み回収しておいたアリクイの舌。
とりあえず、目標はコレをアリクイと同じレベルで操れるようになることだろうか...。
まあ、第二の舌にするつもりはないが、色合い的に真っ赤ではなく、鈍い鉛色なので、始めて見る人には長い鞭にしか見えない、この森の外なら十分武器に使えるだろう...。
という思惑のもと、この舌を自由自在に扱えようになろうと思ったのだ。
根元にきつく黒い布切れを巻きつけてグリップを作ってから、【魔道神経】を三本、蟻喰い鞭に巻きつくように侵食させていく。
全体に生き渡るように魔力を流してから、右にっと指令を送って見た。
べチ、
っと、力なく飛び出した先端が進行方向にあった樹木にあたり気のない音を出す。
次に、そのまま左に行くよう指令を流す。
その時に、進行方向にあった樹木の幹に巻きつくように指令を出して見る。
結果は、幹に力なくぶつかった鞭が、のろのろと巻き突き、力なくずるずると幹の下にとぐろを巻いただけだった。
「ふう、先は長そうだな...」
と、ため息をついてから、もう少し実験を進めていく。
結果、【魔道神経】に出せる指令は一本に大体一つだということがわかった。
つまり、今出せるのは三本のため、出せる指令は三回。
鞭を狙った方向に射出して、巻きつかせ、俺をひきつける。
まあ、木登りくらいはできそうだ...。
「はあ、まだまだだな...」