三十一話 消えた少年
遅くなりました。
検定のため、少し執筆の方を控えさせていただきました。
楽しみにしていただいている方が、いらっしゃいましたら、大変お待たせいたしました。
終わった...。終わってしまった...。
身体が高ぶる血の匂いも、闘争の空気も全部終わってしまった...。
少し寂しい、結局最後はクレアが片付けてしまったから少し不完全燃焼気味でもあるし...。
とと?
今はクレアだ...。
前の時も黒くなった後はぱたりと倒れてしまったし、今回も一緒ではあるのだが...。
どうも、様子がおかしい?
苦しんでる?
とりあえず、クレアの頭をできるだけ揺らさないように優しく自分の膝の上に誘導する...。
「起きて...、クレア...起きて?」
血の気が無いのか少し青ざめた頬をぺしぺしと叩きながらクレアに呼びかけてみる。
起きない...。
「起きて?...寝ちゃ駄目!」
今度は少し強く叩いてみる。
べしん!べしん!
..............起きない...。
今度は......。
「おい、小娘...けが人を殺す気かい?」
今度は......?何か後ろから声が......。
でも後ろにはアルマしかいないはずだし......。
「おい、聞いているのか?」
気のせいだね...、アルマほーしんしてるし...。
「ちょっと、ねえ?聞いているのか?」
ちょっと涙声になったね?アルマ泣いているのかな?
「おーーーーーーーーーーいぃ!!!ねえ、てばぁーーー!!」
いたい、何か頭殴られた...。
「......何?」
ようやく、後ろを振り向くと、そこにはアルマでは無く小さい獣人の少女が立っていた...。
黄金色の長い髪に尖った獣耳がぴょんと立ち、後ろでは同じく黄金色のふわふわそうな尻尾がフルフルと揺れている...。
年齢的にはクレアと同じ位だろうか?
つまり、五歳くらい?
白いワンピースと、クビから頭の後ろに吊り下げている大き目の麦藁帽子がとってもキューチー...。
「と、クレアなら言うかな......?」
「何を言っておるのだ?おぬし」
白くそれでも健康的な血色のいい肌を太陽に焼きながら、少女は小首をかしげている...。
む、何だろうちょっとムラムラッと...、気のせいかな?
気のせいだよね...?
目を合わせていた少女の瞳に映った、自分の表情がどこかアクア姉さんを髣髴とさせる気がしたなんて...。
...気のせいだよね...。
「それで、どうしたのじゃ、その小僧は?
まあ、周りの惨状を見れば大体予想がつくがな!」
と、自信満々に胸を張る少女、てか、幼女?
「おー......」
パチパチ、すごそうだから、とりあえず拍手。
幼女?は、フフンと鼻を鳴らしてから、
「ずばり、そこの小僧がボコボコにされているのを見かねたおぬしが、そいつらをボコボコ、挙句の果てにギタギタにしたというわけじゃな!!!」
わーーー、ドンドン、パフパフ、え?もういいの?
「幼女?の割には、すごい、どうさつちからだね...」
...と、頭をナデナデしてあげる。
「ふふん、当たり前じゃ!、もっとほめるがいい!
ところで、ちからではなく洞察力ではないのか?」
...ほへ?
「...違うの...?」
「何で洞察が読めて、力が読めぬのじゃ......」
まあ、いいわ、とまたまたふんぞり返る幼女?
「まあ、いいのですよ...、君の答え間違いだし...」
...と、ネタ晴らし?をして見る。
「え?そうなのか?」
あ、ちょっと泣きそう......。
「......そうなのだよ。...本当の所はね...聞くも涙、語るも涙の...」
...あ、もう泣いてるか。
と、ことの顛末を、ユノスはなぜか少女に話し始める。
普段無口なユノスが、なぜ自分がこんなにも話しているのかと、疑問に思うことも無く。
クレアの髪の色の話しの時に、少女の顔がこわばったことに気づくことも無く......。
何時間も、尽きることなく話し続けた...。
あらかた、話し終わると...、疲れたのかユノスは大きなあくびをした。
さすがに、殺し合いは疲れたのかな...。
自分じゃわからないけど...。
目じりに涙を浮かべながら、隣に座って熱心に話しを聞いていた少女も少し疲れたのか眠そうにしているのが見えた...。
そして、少女がこちらを向いて...。
『疲れただろう?もう、眠るといい銀狼の血族』
と、呟くのを最後に、まぶたが急速に落ちて言った。
「楽しい、語らいだったよ、銀狼」
ようやく、目当てのものも見つけることができたしな...。
安らかに眠るユノスを見下ろす少女、その表情には、先ほどまでの幼さがなりをひそめ、どこか儚い雰囲気を感じさせるものに変わっていた。
「おぬしには、悪いと思うが、貰っていくぞ」
そう呟いて、少女は立ち上がる。
その瞬間、少女の前には、二頭の白いユニコーンがひく純白の馬車が現れていた。
その扉を開けると、少女は軽い荷物でも運ぶかのように、ユノスの膝に横たわっていたクレアを持ち上げると馬車に乗り込んだ。
「あやつを殺すためには、どうしても、こいつらの力が必要不可欠なのでな」
『あの忌まわしき想像主を...』
最後に、そう呟いて、少女は馬車の扉を閉じた...。
そして、馬車は現れた時と同じように、何の音も無く虚空に消えた...。
そのしばらくあと、草原に一人の魔法士が現れる...。
が、そこにあったのは、まだ血が固まってすらいない生々しい死体と、木にもたれかかり眠る少女。
そして、まるで誰かを抱きかかえていたかのような体勢で眠る銀糸の少女だけであった。
時は、彼の娘が目覚めてから一時間も立っていない...。
...彼は、全力で飛んできたのだから。
いくら、探し回っても息子が見つかることは無く...、その後、目覚めたユノスも少女の事を覚えていなかった。
ただ、何時間も話していたような、そんな疲労感だけが、ユノスに残っていた...。
えー、急ぎすぎた気もしますが、とりあえずこれで三章は終了になります。
次章は彼女に、突き落とされます...。
予定です。
その前に、外伝と、キャラ説明でも書こうと思います。