二十八話 -強制接続-
そのまま、飛び上がり一番近くにいた、剣使いの顔面を殴りつける。
身体には、鎧を着ているため、いくら力が強くてもダメージを与えることは困難だが。
狙ったのは、顔面。
しかも、三半規管をゆすぶりように顎を殴りつけた。
「ブゴ??」
殴られた男が、何が起きたのかわからないような顔をした後、ゆくっりと崩れ落ちた。
意識までは奪えなかったようだが、しばらくは持つだろう。
そこまできて。
あわてたように、ほかのメンバーも動き出す。
弓を番えながら森に隠れこむおとこの弓使い。
一応、殺すつもりは無いのか、背中に背負った大剣は抜かずに、殴りかかってきた男の大剣使い。
女の魔法使いは、拘束系の魔法の詠唱を始めたみたいだ。
そして、槍を持って穂先ではなく石突の方をこちらに構える、女の槍使い。
最初に狙うべきなのは魔法使いだな...。
拘束系の魔法を使われたら厄介だ...。
いつもの、修行に比べたらスローモーションで殴りかかってくるに等しい大剣使いのパンチをかわしながら、魔法使いの後ろに回りこむ。
「へ?はや...!!」
そのまま、スピードを殺さず、魔法使いの鳩尾に突きを打ち込む。
力が抜けて、そのままぺたんと座り込んでしまった魔法使いを無視して振り向くと。
驚いた表情をした、二人が殴りかかった体勢のまま硬直していた。
俺が、また殴りかかろうとしたことに反応したのは、女の方が槍を構えなおすと横薙ぎに振ってくる。
その、槍をバックスッテップでかわし、そのまま、反動をつけて殴りかかろうとして...。
「坊や!ストップだ
このお嬢ちゃんたちがどうなってもいいのかい?」
と、森の方から、静止の声が飛んできた...。
そこには、ユノスとアルマに弓をつきつけながらこちらを睨んでいる、残りの弓使いの男が立っていた。
「ハアハア、すばしっこいガキだぜ」
その姿を見て硬直してしまった俺は、そのまま、大剣の男に近くの木まで殴り飛ばされてしまった。
ぶつかって、ずるずるとずり落ちながら、それでも男達を睨みつける。
「おお、おう、いい目をしてやがるな!」
「け!殺したくなるぜ」
さっき殴り倒した男も、意識が戻ったのか立ち上がっている。
「ところで、こいつらが、こんな物を持ってたんだが」
と、アルマから取り上げたのか、バスケットを残りの四人に見せようとする弓使い。
「ん~、どれどれ?って妖精じゃねーか」
「かーー!いないと思ってたら、こんなところに隠れてやがったのか」
と、よっぽど嬉しかったのか、やつらは空気を緩めて談笑を始めている。
「ところで、こいつらどうするよ?
もう、はっきりいってさ、ここの領主のことなんか関係なくこのガキをぶっ殺したいんだけど」
「残りの二人はどうするのさ~?」
その質問に、下卑た笑いを浮かべながら、品定めでもするかの様にユノスとアルマを交互に見る男達。
「次の街で、奴隷商にでも売ればいいんじゃねーか?」
「そうだな、妖精二匹と、こいつらなら一生遊んで暮らせるぐらいの金は入るかもな」
俺が、聞こえたのはそこまでだった.........。
「ユノス...」
少年の言葉に、彼が叩きつけられている木の方向を振り向く銀糸の少女。
「もういいぞ」
そして、彼はその一言で少女を解き放った。
森を抜ける前、彼が彼女にかけた、「アルマを頼む」という言葉。
アルマを傷つけぬように、敵に反撃しなかった少女の楔が、その一言で静かに崩れて言った。
そして、少年の楔も............。
-【以心伝心】- 強制接続 -
-ここは、どこだ?
荒れ狂うような魔力の奔流、空洞のような伽藍洞な世界の中心で、熱くたぎるように光の本流を放出し続ける巨大な光球。
まるで、触ってもらうのをまっているかのように熱く震えるそれに、そっと振れる。
流れ込んでくる。
まるで、すべてを包み込むかの様な優しさが。
俺の怒りを否定するわけでもなく、肯定もせず、ただ受け入れてくれる、そんな...。
......暗く甘い光が――――――――。