十七話 畜生なぜこうなるんだ!
採取依頼だからです!
特に敵も出ずのんびり...。
「へぇ~、ユノスちゃんって、ハーフエルフなんだ」
「すごい、始めて見ましたわ」
「...すごい、の?」
話を聞かせた三人の反応はこんな感じだった。
どこか、納得したような顔で頷くクレス、単純に喜んでいる感じのフレス、良くわかってなさそうなアルマって、感じだな。
ちなみに、一般的な反応はこの三人のどの反応にも当てはまらない。
終戦から、長い年月が経っているとはいえ、長寿なエルフ達にとってはその記憶が風化することはなく、人間達にしても『ハーフエルフ』ときいて、ただの混血のことではなく、ユノスのような『戦闘種』として作られたものを先に思い浮かべてしまうぐらいには年月が経っていなかった。
とりあえず、ユノスについて知っている事を話し終えてから、現在地を確認する。
今いるのは、いつも採取などに来る森の中だった。
いつもどおり、シルフィの効薬草を採取するだけなら森の中の物を適当に摘んで行けばいいのだが。
今回はシルフィ草の白梅花だ、もちろん、森の中ではなく日当たりのいい所にしか群生していない。
つまり、今目指しているは森を抜けた先の草原地帯だった。
この辺では、シルフィ草の花が咲くのは唯一そこだけなので、目指す場所はそこしかないのだが...。
まあ、いつもどおり歩いて行けば一時間もあれば森を抜けることができる、依頼は大体一時から始めたので、行き帰りに二時間かかっても二時間程度は採取時間があるのだ。
そんな事情もあいまって、話しながらの行軍は自然とゆったりとしたものとなっていた。
まあ、ユノスが皆と打ち解けるには、十分な環境だろう。
と、少しだけ返事をするようになったユノスを囲むように歩きながら、森を抜けた。
そして、その光景に目を奪われる。
草原地帯、その全域を埋め尽くすように咲き乱れる白の花。
見渡す限り、白い絨毯に染まった光景は、圧巻としかいいようのないものだった。
夏のこの時期のみ咲き乱れるシルフィの白梅花が視界すべてを埋め尽くしていた。
「そういえば、こんなに沢山群生しているのに、何で効薬草の採取は森の中なんだ?」
皆で、アクア姉さんに渡されたバスケットいっぱいに花を摘みながら、ふと疑問に思った事をクレスに訊ねてみる。
「草原地帯のシルフィ草は花を咲かせることに、すべての養分を使ってしまうから、薬草としての効用は薄いってのいう話しだけど...」
どこか、悩むようにクレスは答えてくれた、そういう話があるのを読んではいたが、実際の所はまだわかっていないらしい。
と、顔をつき合わせて考え込んでいた俺達の背中に、
「そんなことより!みんなの分の花冠を作りましょう!」
と、フレスの嬉々として提案がとんできた。
まあ、女の子が多数を占める集団なのだ、反対できるものがいるはずもなく、なぜか女性陣が花冠を、男性陣がせっせとバスケットをいっぱいにするということで話しは纏まったらしい。
つまり、何がいいたいのかというと、全員が一人一個バスケットを持ってここまであるいてきた。
そして、今俺とクレスはそれぞれ、手元に三つずつバスケットが置かれているということだ。
夕方までに終わるかな?これ...。
そして、何とか無事、バスケット三個いっぱいに集め終わった。
今は、帰り道、ユノスは俺の後ろではなく随分打ち解けたのか、女の子集団と一緒に手をつないで歩いている。
なにか、波長が合うのかユノスはアルマと随分仲良くなったようだ。
まあ、二人ともあまり口数が多いほうじゃないしな...。
そして、四人が皆手をつないでいるということは、余っているのは腕に二本、俺は両腕にシルフィの白梅花がぎっしりと詰まってなかなかの重量になったいるバスケットを抱えている。
ちなみに、俺を含めて皆の頭には花冠が一つずつ。
クレスのはフレスが、俺のは残りの三人が三分の一ずつ作ったらしい。
と、そこまで考えたところで。
「そういえば、さっきの話しだけど」
と、横を歩いていたクレスがシルフィ草について話し始めた。
「花を咲かせた白梅花はね、毎年この季節に遊びに来る<風の妖精>に花に宿った魔力をすべて捧げてしまうため、っていう仮説もあったよ...」
まあ、これは御伽噺の類だけどね、っと笑いながら。
俺の横を歩いていくクレス...。
ねえ、クレスさん...あなた...今、フラグたてたよね。
案の定、採取依頼においてのお約束。
俺のバスケットと、サクラのバスケットのなかから、気持ちよさそうに眠っている小さな風妖精が見つかるはめになった...。
作者としては、剣戟士フレスを作り出すために、戦闘&修行フラグをたてなければと思っているのですが...。
いやはや、うまく行かないものですね。
こういう時、無口キャラは動きづらい(泣)
誤字脱字感想意見お待ちしております。