十六話 ギルド、夏の依頼
依頼でーす。
良く考えたら、ドラゴンとかの討伐依頼とかやってないので、地味ですね。
でも、この道をつき進みます!
「いらしゃーい、今日はどうしたのかしら?」
ギルドの扉をくぐると、受付から、いつもどおりの笑顔を浮かべて明るい声が降ってきた。
「今日のオススメの依頼はー、ってその子はどちら様?」
一方的に、話を進めようとしていたみたいだが、ユノスの顔をみて不思議そうにするアクア姉さん。
「こんにちは、アクア姉さん」
鏡をみれば、たぶん、呆れた表情をしているだろう俺が、とりあえず挨拶をする。
「こんにちは、アクア姉さま、
ほら、ユノスも挨拶しなさい」
俺の後ろでは、続いて挨拶をしたサクラが、ユノスをせっついている。
「こん...に......ちわ」
そして、たどたどしく挨拶をするユノス、今まで気にしてなかったけど、人見知りなのかな?
ユノスがちゃんと挨拶をしたのを確認して、アクア姉さんの方に顔をむけると。
頬を真っ赤に染めて、両腕で自分自身を抱き締めるようにして、...悶えていた...。
「か、かわいい...、何この子?初心なの?青い果実なの?咲き乱れる前の蕾なの?
おねーさんが、おいしくいただいてもいいかしら!?」
ハアハア、と乱れた息を整えようともせず。
一瞬で、受付のカウンターを飛び越えると、じりじりとにじり寄ってくるアクア姉さん...。
なぜだろう?良く考えたら、俺の周りこんな人ばかりな気がする...。
その後、姉さんが落ち着くまで、三十分かかった...。
ようやく姉さんが落ち着いたのを見計らって、依頼を確認していく。
ちなみに、ユノスのギルドカードは、キャシー姉さん達と行動していたころに、もっていたら便利だからと取得していたらしい。
俺達が、ギルドカードを登録した時の、アクア姉さんの様子を語ってあげたら、心のそこから、とっといいて良かったと、ボソッと呟いていた。
「うーん、今日は討伐系の依頼はないみたいだね...」
と、ファイリングしている依頼も確認しながら、アクア姉さんが教えてくれた。
その視線はファイルの方じゃなくて、ユノスの怯えたような、プルプル震えている挙動をずっと注視していたけどね...
本当に、確認しているんだろうな...
「あ、これなんかどうかな?」
と、その状態でも何かを見つけたのか、それとも、最初から準備していたのか、アクア姉さんが一枚の依頼書を出してきた。
【シルフィの白梅花の採取】
と、その依頼書には書かれていた。
シルフィの白梅花とは、シルフィ草が咲かせる白い花のことであり、夏季の後期の短い期間の間だけ綺麗な花を咲かせるという話だ。
シルフィ草のような回復効果はないが、かなりのリラックス効果がある白梅香の材料になるらしい。
この時期の、新米冒険者の稼ぎにもなるいう話だ。
まあ、シルフィ草の分布地さえ熟知していれば比較的楽に採取できるので、売値の割に依頼のランクが低いといった珍しい種類の依頼らしい。
と、そこまで聞いたところで、ギルドの扉を開けていつものメンバーが入ってきた。
「こんにちは、アクア姉さん」
「こんにちはですわ、アクア姉さん」
「コンニチハ...、アクア姉さん...」
と、クレス、フレス、アルマの順番で挨拶をして?なんでアルマ、片言...?
そして、三人の視線はアルマ、俺、サクラと来て、ユノスで止まる。
その表情は、誰?といっていた...。
「ほら、ユノス...、挨拶して」
三人に気がついて、俺の後ろに隠れてしまったユノスを前に押し出す。
むー、俺を下からにらみつけながらも、
「こん...に...ち...わ...、ユノス...です」
ぺこりと、頭を下げるユノス、そのままピューッと俺の後ろに隠れて、チラチラと盗みみるユノス。
はあ、と、ため息をついてから。
「いい、依頼貰ったから、とりあえず行く?」
説明は、歩きながらするよ...、と言外に言ってから。
俺は、先頭に立って歩き出した...。
おかげで、クレス達はギルドに入った瞬間に出るハメになったのだが...。
どこか、複雑そうな顔をしてアクア姉さんに、挨拶してからギルドを後にした俺達であった。
端的にいえば、白い花を見にピクニックに行く依頼です(笑)
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