十五話 修行、そして、新しい目標
ちょっとだけ強くなります。
多分。
朝...。
なぜかつやつやしている気がする、ドロシーに起こされて目がさめる。
俺の左右には、最近の恒例に成りつつある状況、俺を真ん中にしてサクラとユノスが寝ている、という、男としては嬉しいのだが、起こしにくるドロシーの視線が怖い状況ができていた。
「おはようございます、クレア様...
朝ごはんの時間ですよ...」
しかし、危惧してたことは起きず、ドロシーは、ぞくっとするほど艶やかに微笑むと、部屋を出て行った。
何か、奪われたような気がするんだけど?
気のせいだよね...
朝ごはんを食べた後、いつもどおり地獄の鬼ごっこが幕を開ける。
なぜか、数日前から、追ってくる鬼が二人になったどね...。
母上様の、斬撃をかわしたと思ったら、ユノスが大木をなぎ払えるその膂力が遺憾なく発揮された、爪拳をふるってくる。
どうやら、あの後、爪拳を使って戦うのがお気に入りらしい...。
今も、隠れるのに使用した大岩が、ユノスにスライスされた...。
え?マジで?
と、その切れ味に驚いて硬直していた俺の首筋に、冷たい鋼の感触が...。
「クレア、つかまえたわよ」
...母上様が剣を突きつけておられました。
そんな感じで、修行は終了。
今日は、午後からギルドに小遣い稼ぎに行く予定です。
「サクラはやっぱり、魔力回復量が極端に少ないみたいだね」
今日も、訓練前にお父さんに私の、魔力量を調べてもらっている。あれから、一週間ほど魔法自体の訓練は行わないで、魔法の知識について散々叩きこまれた。
まあ、理解していないと危ない部分も多いし、私の魔力が回復するのを待つといった目的もあるのだが。
いい加減、疲れてきた。
「やはり、そうですか...」
そして、気分もまた少し落ち込んでいる。
「そうだな...、難しいからまだ教える気は無かったんだけど、ある意味サクラにはちょうどいいのかな」
お父さんも、私が落ち込んでいることに気がつかず何か悩んでいる様子です。
「うん、そうだな...」
そして、何か決心するように頷くと、私の顔を見て話し始めた。
「サクラ、とても難しい方法ではあるけど、魔力を少なくする方法、試して見るかい?」
そして、その口からはなたれた言葉は、信じられない言葉だった。
「え?あるんですか?そんな夢みたいな方法?」
その言葉に、お父様は頷くと、いいました。
「サクラ用の魔法を作っちゃおう!」
は?
それは、とても気の長い話ではあるが、今の私にとっては、選ぶしかない道だった。
自分だけの魔法を新しく一から作り出す、それは研磨され洗練された詠唱魔法を捨てて、固有魔法を作り出すといったメチャクチャな方法...
何度も何度も、試行錯誤して魔法を作り出して行く作業。
最初に、お父様と話し合って決めたのは、まず、威力よりも効率を重視することだった。
たとえば、火炎球<ファイアボール>を凝縮して、高速で打ち出すとか、ただし、火炎球にあった追尾機能が消えた。
同じ、魔力量でも、少しでも数を多く作りさせるように、沢山の火炎をイメージして見る。
一個の火炎球から十個の火炎球を作り出せた、まあ、十分の一の大きさだったけど。
でも、これは、まだまだ序の口だ、もっと強くもっと少なく。
魔法を研磨する、自分のイメージを研磨する。
それが、それこそが固有魔法への道らしい...。
と、いかにも私がやったように話しているが、すべてお父様がやったことなのであしからず。
私は、頑張っても火炎球を三個までしか分割できなかった、しかも大きさは十分の一で...
弱くなってるじゃん!!
そんな感じで、今日の訓練が過ぎていく...。
あれ、でも、分割した火炎球をバリスタに装填したら、火炎球一個分で三発矢が撃てるかも知れない?
これは私の第一歩目、まだまだ時間はある、あせらずゆっくり進んで行けばいい。
クレアお兄様やユノスのように、前を歩いて引っ張ってくれる人間が、私にはいるのだから。
成長速度が遅すぎるでしょうか?
でも、二人には子供が成長するように、成長していってほしい。
そんな風に思う、作者でありました。
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