表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/92

雅なる月のごとく 三幕

実は、殴られたクオーツ君


気絶しています。


今回は前半、第三者視点です

数多くの、学生達がその場所を利用し、小遣い、または試験と、長年利用されてきたラグリオンの冒険者ギルド。


そこでは、いま、掲示板前にある酒場のようになっているスペースに、三人の少年と一人の少女が座り込んでいた。


少年達は、魔法士の証である黒のローブを着た蒼髪のうつろな目をした少年、魔法士の黒いローブに良く似た服、相違点は錬金士の特徴色である金色の糸で胸元に秤の刺繍が入っているローブ、を着た銀髪で目元を隠している少年、栗色の髪を短髪にして、剣士科の特徴でもある茶褐色の革鎧を急所だけ守るようにつけた快活そうな瞳をした少年。


もちろん、クオーツとキール・ガイアのことなのだが、今三人は、金の軽くウエーブした髪の利発そうな少女の前で縮こまっていた。


といっても、周りから見てそう見えるだけの話しであり、実際のところは落ち着き無く視線をふらふらさせているガイア、銀髪に隠した目元はどこか虚空を見つめているキール、虚ろな瞳でテーブルを直で凝視している、または突っ伏しているクオーツ。


まあ、簡単に言えばクオーツは、その右頬を真っ赤に腫らしている原因の元となった、少女の右フックによって意識を刈り取られていた。


そして、そんな三者三様の様子を呈している少年達の前で、その状況を作り出した少女がその瞳を怒りに染めて静かに座っているといったわけだ。


「それで、あなた達は、なぜレッドワイナスの討伐なんてやろうと思ったんですの


Aランクの飛竜種といっても、レッドワイナスはやはり飛竜種です、学生の小遣い稼ぎならやめておきなさい」


ずっと続いていた沈黙に、嫌気が差したのか少女が話し始める。


「とー、いってもなー、キール」


「今の時期に、酔狂で飛竜種の討伐依頼を受けるものはいない」


おろおろと、無表情な親友に話を振る栗毛の少年と、淡々と話す銀髪の錬金士の少年。


「つまり、卒業試験というわけですね


ですが、剣士科はCランク以上の討伐依頼、錬金科は同行採取で作った錬金物の提出、魔法科は応用魔法開発だったと記憶しておりますが」


その言葉に、二人は固まった、目の前の高飛車そうな少女がほかの科の試験内容を把握していることにかなり驚いたのだ。


「なぜ、それを知っている?」


そんな、キールの質問はあっさり答えが出される。


「友達から聞いただけですわ


それとも、あったばかりの殿方をグーで殴って気絶させてしまうような女には、友の一人もいないと考えていたのですか?」


その言葉に、あっさりと納得して、二人は首を横に振る。


良く考えれば、相手は貴族、友達かどうかはおいといても取り巻きの一人や二人はいるだろう。


と納得して。


「ああ、そうか、ならクオーツの試験内容を知るわけが無いな」


「そうだねー、アイナ先生のせいで科生がほかに一人もいないからな」


その言葉に、少女は怪訝な表情をする。


「何のことです?格好から『蒼の魔道士』は魔法科の生徒だと思っていましたが」


あー、殿が無くなっているな。と心の中で考えていた二人。


「あー、まあ普通はそうだよな」


「ああ、こいつは少々特殊だからな」


そして、少女は聞くことにになる、六年間この不幸な少年の隣にいた二人の親友から、彼におきた喜劇の数々を。


「そ、それでは、一年の終了式の時に教頭先生のカツラを吹き飛ばしたのは彼だったですか!」


「そう、あれが面白がったアイナ先生の最初の進級試験だったんだよー」


「へー、じゃあ、魔物の森を管理しているフェンリルは」


「ああ、そうだ、魔素を取り込みすぎて凶暴化したフェンリルを落ち着かせるため、三日三晩不眠不休で戦い続けたらしい」


「え、摩訶不思議といわれていたライオネルの生態系を」


「ああ、あれはー」


などなどと、気絶している少年を残して話しは進んでいくのだった。






頬の痛みに引きずられるように、ゆっくりと意識が覚醒していく。


「あら、おきたみたいですわね」


「おはよー、クオーツ」


「起きたか、頬は大丈夫か?」


目の前には、俺を気絶させたであろう少女と和やかに談笑する二人の親友の姿があった。


「俺は、どれくらい気絶していたんだ?」


「ん、そうだな五時間くらいか」


「あら、もうそんな時間ですの?


楽しい、お話をしていると、やっぱり時間が経つのが早いですわね」


楽しいお話し?こいつら、俺が気絶している横で仲良くなってやがったのか、と軽く落ち込む。


まあ、いいか、と気分を切り替えて。


「で、何の話をしていたんだ?」


とりあえず、どんな話をすればこんな気難しそうな女性とこんな、いい雰囲気になれるかが知りたかった。


「クオーツのはなしー」


「アイナ先生の無茶振りだな」


「あなたの、半生記ですわね」


三者三様の答えが返ってきた。

全部、俺関連かよ、流石に俺は自分の黒歴史を話しのネタにする勇気は無いぞ。

と、いうか、人の話で五時間も盛り上がっていたのかよ。


「それで、クオーツ君、私から提案なのですが」


「ああ、目覚めた俺にいきなり提案とは、ずいぶん俺は可哀想な存在にされたようだな」


「ええ、それはもう」


されたかよ、本当に何の話したんだよこいつら。


「ふふ、失礼


それで、クオーツ君、提案というのはですね、一緒にレッドワイナスを討伐に行かないかってことです」


一緒にか、まだ、俺だけは会って間もない状態だからこの少女が、なぜ、そこまで言ってくれるかわから無い。


「すまん、気絶していた俺にとっては、君と会ったのはついさっきのことだ


失礼な質問かも知れないが、そこまで君が譲歩してくれる理由がわからないのだが」


「だから、私の名前はメアリィだと言っているでしょ」


俺の真剣な質問だったのに、なぜか返ってきたのは呼びかたの訂正である。


「おや、今はその君の「メアリィですわ」」


「いやだか「メアリィですわ」」


何だろう、最近は名前で科白をつぶす遊びでもはやっているのだろうか。


泣いてもいいかな?


「わかった、メア「メアリィですわ」」


頼む、勘弁してくれ!


「ふふ、失礼ついあなたの反応が面白かったので


これなら、アイナ先生の気持ちも少しわかるような気もしますわ」


と花の様に笑うメアリィ嬢と、含み笑いを浮かべている左右の男共二人。


帰っていいかな?何かもう布団に包まって羞恥に身を震わせていたい。


「それで、どうですのクオーツ君、この依頼、共同に受けませんか?」


「その前に、ひとつ聞いてもいいか?」


「はい、何でしょうか?」


おれが、ずっと考えていた疑問それは--



「なぜ、君はこの依頼を受けるんだ?」



次回、メアリィ軍団(笑)全員集合


依頼開始です。


依頼編二話の、その後の話を一話書いて多分 外伝 雅なる月のごとく は終わりとなる予定です。


最後までお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ