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雅なる月のごとく 一幕

はい、本編をお待ちの皆さま


外伝が入りました。


しばし、お付き合いください。

「さて、クオーツ君」


「......どうしました?先生」


「卒業試験の内容が決まったよ」


「......今度は何ですか、ライオネルの巣に一ヶ月間こもればいいですか、それともフェンリルと三日三晩眠らずに戦ってこればいいですか、ああ、それとも水魔法の新しい術式を見つけてこいとか?」


「ごめん、......ぼくもやりすぎたとは思っているよ」


「......で、何ですか卒業試験は」


「うん、飛竜を倒してきて」


「は?」


「うん、飛竜を倒してきて」


「......いや、聞こえてはいますよ、ただ自分の耳と、先生の頭の中身が信用できないだけで」


「信用してくれなくてもいいけど、ぼくは本気だよ、君ならそれくらいできるだろうし」


「そんな、信用ほしくないです」


「まあ、がんばって来てくれたまえ、『蒼の魔道士』君」


その言葉と共に、俺が6年間慣れ親しんだ教室であり、目の前でありえない課題を出してきた彼女の研究室の扉は閉じられた。


その扉の向こうにいるであろう見た目十歳、実際年齢十五歳の天才の名をほしいままにする師に、久々に殺意を覚えた昼下がりの午後だった。






学園都市ラグリオン、ラグリオン学園を中心に発展をした都市であり、主要産業が人材の育成といった典型的な学園都市である。


道端を歩くのは年若い少年少女ばかり、時たま壮年の者を見かけても、職業を聞けば7割方は教師と答えるだろう。


ラグリオン学園の校風をあげるとすれば、それは『自由』が一番しっくり来る。


学科も自由、職業選択も自由、そのまま学園の教師に就職するも良し、冒険者となって夢を追いかけるも良し、兵役につくも良し。


学科も、選択性であり、卒業するだけならば一学科、たとえば薬草科で六年間、土を弄繰り回して。学科の教師から出題される進級課題をクリアすれば卒業できる。


と、いった校風である。


学科によっては、先生が六年間冒険者をやってこい、と課題を出して、何しに学園に来たのかわからないといった話もあるくらいだ。


そして、俺が六年間受けた学科もこの例にまけないほどめちゃくちゃなものだった。

本来なら、一学科だけでなく、少なくとも三学科、多いい人なら六学科ほど受けて大体、卒業して行くのだが。


入学時に、『水魔法の応用魔法学』という学科を気まぐれに受けたのが運の尽きだった。


自分の系統魔法を学べるならと、彼女の研究室の扉を開けた瞬間、俺は、自分より一歳年下、見た目的には四五歳年下の少女の、放った実験中の新魔法にぶち当たった。


その魔法は、後に水系統の最上級魔法と呼ばれる「絶対零度」ダイヤモンド・ダストだった。


彼女が、魔法を行使した理由としては、冷えたバナナが食べたかったっという理由だったそうだが。


それによって、俺は一ヶ月間彼女の研究室に冷凍保存されていたそうだ。


一ヵ月後に、学園長が何とか魔法を解除、水系の親和性が高かったおかげで、冷凍保存されても仮死状態ですんだのは良かったのだが。


学科の、仮入科期間は入学から一ヶ月間であり、俺が目を覚ましたときには、彼女の研究室に六年間入り浸るしか俺には選択は残されていなかった。


結果として、歳が近いこともあり、といいうか俺の方が年上だったこともあり、彼女が時たま吹っかけてくる無理難題を、死ぬ気で解決して言った俺には、いつしか色の属性称号『蒼』の名前が与えられるほどの魔法使いになっていたのはまた余談ある。


まあ、普通の学科であれば、進級試験に天狼族フェンリルとちょっと三日間ほど不眠不休で戦ってきてなんて無理難題は言わないだろうから。


その進級試験が有名になって、俺には今だ学科の後輩がいないしな。


そんな、ことをぶつぶつ呟いている俺が、今いるのは、俺が六年間下宿に使っている酒場のカウンター席だった。


時たま、小遣い稼ぎにおっちゃんの手伝いなどもしているが、ここは学園都市、稼ぎ方はいろいろある。


ひとつに、ここに通っている生徒が入学時に全員、何らかのギルドに登録しているということだ。


俺のような、魔法使いや剣士科に通っているやつなら冒険者ギルドに、同じ下宿で六年間同じ釜の飯を食ってきた俺の友達であるガイアなんかがそのいい例だ。


そして、ほかのギルドの例を挙げるなら、錬金士ギルドアルケミストなんかがあったり、従士者ギルドなどがあったりする。


従士者って言うのは、簡単に言えばメイドとか執事のことだ。


実際には、かなり高度な教養と、戦闘力が必要な学科であり、人気はあるが従士学科を専攻して卒業できる者はかなり少ないといわれている。


とか何とか、初歩的なことを思い出して現実逃避している俺に、さっきから声がかかっている。


「おーい、クオーツやーい、卒業試験はどうだったー?」


「......」


「おーい、おーい、......おいこら氷の彫像、返事をしろ!」


「もう一度、いってみろガイア」


氷の彫像、それは入学時に俺についたあだ名であった、まあ、一ヶ月間いろいろな方法で俺を溶かそうとした先生が、俺を外に置き忘れて一週間くらい、リアル過ぎる氷の彫刻として軽く恐怖の対象となっていたらしいからな。


「なんだよ、機嫌悪いな、またちびっ子に無理難題を出されたのか?」


「......お前は、どうなんだよ?」


「俺か?、俺はCランク以上の討伐依頼をクリアすることだってよ、ラクショーだぜ!」


「だよな、それが普通だよな」


ちなみに、天狼族フェンリルは幼体でもCランクであり、飛竜種は弱いものでもAランクといわれている。


泣いていいかな?


「あいつは、俺を卒業させる気が無いんじゃないかと最近思うよ」


「は?」


思わずでた、俺の本音に返ってきた返事は心底呆れたような間抜けな声だった。


「おまえ、なに今更なこと言ってんの?」


「何のことだ?」


「知らなかったのか、毎年毎年、お前に無理難題を吹っかけるから、流石に学園長が、アイナ先生を注意したら」


ちなみにアイナとは、お分かりのとおり俺の担当教師の名前だ。


『あの子を卒業させるつもりは、ありませんから!』


「と、おっしゃったそうだ」


って、


「は?」


「その顔をみると本当に知らなかったみたいだな、魔法研究塔あたりじゃかなり有名な話しだぞ」


魔法研究塔、その名のとおり新魔法の開発などを行っている学園の研究室郡であり、俺の教室でもあるアイナ先生の研究室もそこに居を構えている。


そして、いま、数少ない友の証言により、文字通り俺は頭を抱えることになった。


卒業させる気無いって、真剣かあの女!


まあ、そこまで聞けば今回の卒業試験の意味もわかるというものだ。


俺を絶対に逃がさないつもりか。


「愛されてるねー『蒼の魔道士』くん」


「うるせー、勘弁してくれ......」


「で、そこまで愛されているクオーツ君の卒業試験、お題は?ババンといってみよう!」


テンション高いなー、こいつ、俺もこう生きれたら楽なのにな。


「飛竜種の討伐」


「へ、マジ?」


「ああ、本当に卒業させる気が無いらしい」


「愛されてるね......クオーツ」


「やめてくれ、頼むから」


そして、酒場の喧騒とは裏腹に静まり返る俺達。


「なあ、クオーツ」


「なんだ?」


「こうゆうのもさ、......ヤンデレって、ゆうのかな?」


俺には、その質問に沈黙するしか回答が思い浮かばなかった。

と、いうわけで父親の過去編です。


もちろん母上様も出で参ります。


次話で、出てくる予定ですのでー。


またお会いしましょう。


誤字脱字感想意見などありましたら、書き込みお願いします。

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