廃嫡、追放された元王太子の俺。父王にぎゃふんと言わせるために最強無双(予定)を目指す旅に出る!
【関連短編】
『平民出の可憐な少女を庇ったつもりが、全部勘違いだった王太子の俺は卒業式で詰んだ』
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少し主人公がかわいそうなラストになってしまったので続きを書きました。
「この大バカ者がああぁぁぁぁぁ!」
ノックもせずに部屋へ飛び込んでくるなり、父である国王は俺の腹へ強烈なボディブローを叩き込んだ。
肺の空気が一気に抜け、くの字に折れた体が倒れかけたところへ、間髪入れず顎へ渾身のアッパーが入る。
冗談みたいに体が宙を舞った。
高い天井に届くかと思ったが、当然そんなことはなく、そのまま床に叩きつけられる。
鼻からは、どくどくと驚くほどの血が流れた。
「父さ…いや、父上、いきなり何を…」
「お前は自分が何をしたのかわかっているのか?クラウディア嬢との婚約破棄だと?頭が湧いているのか?」
「そのことですか…。後で報告に伺おうと思っていたところです。彼女とはどうも性格が合わなくて…」
言い終わる前に胸倉をつかまれ、怒りで真っ赤になった父の顔が目の前に迫る。
「お前がそこまでバカだったとはな…。政治的な意味を除いたとしても、彼女ほど将来の王妃として、女性として、そして、バカなお前の相手としてふさわしい人物はいない!それがわからぬほどのうつけ者だったとは!」
突き飛ばされた俺に、父は静かに告げた。。
「お前に王太子の資格はない。いや、もう俺の息子である資格すらない。お前を廃嫡する。そして王都から追放する。もうお前は王族ですらない。ただの平民として、自らの行いを悔いるがいい」
――俺はどうやら勘当されたらしい。
王太子でなくなり、王族ですらなくなった途端、周囲の態度は手のひらを返したように変わった。
あわよくば関係を持とうと近づいてきた女性たちは、今や露骨に距離を置く。
卒業式で婚約破棄を言い渡したクラウディアは侯爵領へ戻り、リリアーナも男爵領へ帰ってしまった。
気づけば、俺の周りには何も残っていない。
わずかな路銀だけを渡され、俺は王城を追い出された。
城下町に降り立つのは久しぶりだった。
いや、前世の記憶が戻る前から、俺はほとんど王城から出ずに暮らしていた。
金髪碧眼のイケメンに生まれ変わり、贅沢な生活を満喫していた。
好き勝手に生きてきたが……それの何が悪かったというのか。
俺が我儘過ぎたのか?
まあ、そうなのかもしれない。
だが、前世で平民だった人間がいきなり王族の暮らしを手に入れたら、誰だって浮かれるだろう。
それに、追放は一時的な処置に過ぎないだろう。
なにせ俺には兄弟はいない。
そう、王位を継げるのは俺しかいないのだ。
叔父などはいるが、国王である父も最終的には息子に王位を譲りたいはず。
しばらく直轄地の別邸で過ごせば、国王も機嫌を直すことだろう。
父上がブチ切れるのも今に始まったことではない。
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか薄暗い路地裏に迷い込んでいた。
人通りはほとんどない。
足早に抜けようとしたその時、数人の男が行く手を塞いだ。
「おい、イケメンの兄ちゃんよ。有り金全部置いてけ。そうすりゃ無事に通してやる」
いかにも破落戸風の男たちのリーダーらしき男が、いかにもありそうな言葉を放った。
武器などは持っていないようだが、いつの間にか囲まれていた。
「おい、俺が誰だかわかって言ってるのか?俺はこの国の王太――」
「知るわけねぇだろ!そんなの関係ねぇんだよ!」
笑いながら、男の一人が俺を舐め回すように見た。
「いい身なりしてるじゃねぇか。金は持ってるんだろ?」
下品な笑い声が響く。
金を出し渋る俺を見て、力づくで奪う気になったらしい。
最初の二人までは返り討ちにできたが、三人目に羽交い絞めにされ、そこからは一方的に殴られ続けた。
おいおい、こんな展開あり得ないだろ…?
元とは言え、俺は王太子だったんだぞ…?
結局、持っていた路銀は全て奪われ、血まみれのまま路地裏に放置された。
これも訓練をさぼったツケなのか?
指導した騎士団長は才能があると言ってくれていた。
このまま真面目に訓練を続けていれば勇者にも引けを取らない逸材になっていただろうに…とすごく残念そうな顔をする騎士団長が脳裏に浮かんだ。
そして、俺は意識を失った。
「ん…ここは?」
目を覚ますと、見知らぬ部屋のベッドに寝かされていた。
「よかった、気が付いたみたい」
ベッドの横には、見慣れない少女。
黒髪を後ろでまとめ、大きな瞳がよく動く、小動物のような愛嬌のある子だ。
平民にしては上等な服を着ている。
上半身を起こそうとすると、全身に痛みが走った。
「まだ横になっていてください。今、お水を持ってきますね」
そう言って少女は部屋を出て行った。
その直後、廊下から大声が聞こえてきた。
「どうだ、目を覚ましたか?あれはきっと廃嫡され、王城を追い出されたって噂の王太子だ。一度、遠目に姿を見たことがある。なんとしても取り入るんだ。うちの商会をひいきにしてもらえるように。あわよくば、お前が王妃になれるかもしれない。いや、妾だっていいんだ」
「そこまでしないとダメなの?顔がいいだけの頭の悪いバカ王太子って噂じゃない?」
「何を言ってるんだ!だからこそ、つけ入る隙があるんじゃないか!」
…すっごい声量だ。
話の内容が部屋の中までがっつり聞こえていますよ…。
どうやら、王城に出入りしている商会の親子らしい。
人をバカ扱いしているが……まあ、俺の評判なんてそんなものか。
外見はよくなったが、転生後も転生前も俺自身の価値自体は変わっていない。
王族であるかどうか、どうやら周りの人間はそこにしか価値を見出していないらしい。
リリアーナもそうだったのだろうか?
クラウディアはどうだったのだろうか?
まあ、今更考えても仕方ない。
ガチャリとドアが開き、少女が戻ってきた。
渡されたコップの水を飲み干す。
「ありがとう。俺はフェル。君の名は?」
俺は偽名を名乗り、王太子でないと言い張ることにした。
このまま思惑通りに扱われるのも癪だ。
彼女は俺の名前を聞いて、少し迷った後、マリエッタと名乗った。
買い物に出かけた時に、路地裏で倒れている俺を見つけたらしい。
普通、誰とも知れない男を倒れていたからと自宅連れ帰ったりはしないが、おそらく王城の噂に詳しい誰かが傍にいたのだろう。
助けてもらったことには感謝すべきだが、あの会話を聞いた後では素直になれない。
いや、バカ扱いしているのは王城内の噂であって、彼女らの評価ではないか…。
俺は考え直して、素直に感謝することにした。
実際、下心があったとは言え、彼女らはとてもよくしてくれた。
あなたは王太子殿下ではありませんか?と直接聞きたかったとは思うが、ただの通りすがりの遊び人と言い張った俺の言葉を信じるふりはしてくれた。本当に信じていたなら、こんなに手厚く看病はしないだろう。
マリエッタは素直な性格なのか、俺にさりげなく気に入られようと迫ってきたりはしていたが、しぶしぶやっている雰囲気はすごく伝わってきた。
ただ、そんなに悪い気はしなかった。
かわいらしいとさえ思ってしまった。
この屋敷は、王城に武具を納めているゴルディア商会の当主のものらしい。
一週間ほど世話になり、傷も癒えてきたので出ることにした。
我儘を言って武器と装備を頼むと、片手剣と革鎧を用意してくれた。
旅に出ると言ったので、軽装にしてくれたのだろう。
「この恩には必ず報いよう」
と、いかにもな言葉を残して、俺は屋敷を後にした。
行くあてはないが、とりあえず直轄地であるエルドリア領の別邸に向かうつもりだ。
辺境の土地ではあるが、重要な鉱山がある。
そこへ向かいながら、俺自身の価値を高める方法を考えなければならない。
父である国王にぎゃふんと言わせ、お願いだから帰ってきてくださいと土下座させねばならない。
俺の人生逆転、最強無双の旅は――今、始まったばかりだ。
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