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第終章:『なごり雪』、あるいは春の風花

 

 電車のドアが閉まり、冷たいガラス一枚を隔てて、海斗の姿がゆっくりと遠ざかっていく。

 ふいに、ホームのスピーカーから、季節外れの、けれどこの街の別れにはあまりに相応しい旋律が流れ始めた。伊勢正三が綴った、風の『なごり雪』だ。


「……汽車を待つ君の横で、僕は時計を気にしてる……」


 その歌詞の通り、私たちはあの日、確かに時計の針が止まった場所から歩き出した。

 窓の外、三月の淡い空から、ひらひらと白い欠片が舞い落ちてくる。それは雪というにはあまりに儚く、けれど春の陽光に溶けて消える瞬間の、最後の輝きを放っていた。


「今、春が来て、君は綺麗になった……」


 掠れた私の喉から、小さな、けれど確かな歌声が漏れる。

 家族を失ったあの冬の日は、この『なごり雪』と共にようやく終わりを告げようとしていた。

 落ちては溶ける雪のひとひらは、かつての私の涙のようであり、これから出会う誰かの微笑みのようでもある。


 私は、座席に深く身を沈め、遠ざかる群青の海に心の中で別れを告げた。

「潮騒」の琥珀色の光、海斗の不器用なピアノ、そして私を救ってくれた数々のフォークソングたち。それらすべてを鞄に詰め込んで、私は「星輝愛」として生きていく。


「……さよなら」


 動く列車の窓に、白くなごり雪が触れては消えた。

 その向こう側には、もう悲しみだけではない、輝くような春の気配が満ち溢れていた。


(完)



この作品はAI40%、筆者60%で書きました。

原案100%筆者。

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