7話 初魔物と初魔法とプリティーガール
町へ向かう道中は、途中俺の奇声でフィゼさんをビビらせたりした事以外は至って順調に進んでいた。
このまま何事もなく到着させてくれよ…。
ガサガサッ
とその時、道から少し離れた茂みの中から”何か”が動く物音のようなものが聞こえた。
「い、今なんか聞こえませんでした?」
「シッ。静かに…魔物がいるのかもしれません。」
しまった、俺がフラグを立ててしまったばっかりに…。
「魔物って…ひょっとしてヤバかったりします?」
「この辺りに生息している魔物ならそれほど脅威ではありませんが、油断は禁物ですね。」
「…急いで逃げた方が?」
「この馬車はあまりスピードは出ません。魔物と決まったわけではありませんから、
とりあえず警戒しつつ先へ進みましょう。」
「了解しました。」
ひぇー!異世界初の魔物とのエンカウントか?脅威ではないと言われてもやっぱり、怖いもんは怖い。
恐る恐る馬車を前に進ませる。
ガサガサガサ
茂みの中の”それ”は確実にこちらに向かってきている。どうやら何かの生物であることには間違いないみたいだ。
頼む、犬とか猫であってくれ…!
「来ます!注意してください!」
「は、はい!」
注意って言ったって…とりあえず身構えるだけ身構えてはみたが、そもそも俺丸腰じゃん…。
えぇいままよ!
ガサッ!!
いよいよ茂みの中から俺達の前方に飛び出してきた”それ”は、とりあえず犬でも猫でもなかった。
緑色の透き通ったゼリーみたいな…生物?サイズで言うなら小型犬とか猫みたいなもんだろう。
…なんか、弱っちそう。というかこいつはもしかして…
「グリーンスライムですね。下級の魔物の中でも比較的弱い魔物ですので安心してください。」
「グリーンスライム。」
やっぱりスライムか。ゲームでお馴染みだな。…いやぁ、本当にいるんだなぁスライムって!
安心していいとのフィゼさんの言葉もあって、俺は思わぬ『スライム』との遭遇に恐怖よりむしろ感動すら感じた。
「どうします?こいつ、なんだか通せんぼしてるみたいですけど。」
「積んでいる食料が目当てでしょう。ちゃちゃっと倒して先を急ぎましょう。」
ちゃちゃっとって。この人意外とわんぱくなところもあるんだな。
「倒すと言いましても、俺実は丸腰でして…素手でもいけます?」
「え!?コースケさん、武器も持たずに町から出てきたんですか!?」
「えぇ、まぁ…なにぶん急だったもので…。」
「私なんかよりよっぽど危険な一人旅してるじゃないですか…。わかりました、ここは私が。」
そう言うとフィゼさんは腰に下げていた短い杖のようなものを手に持ち、先端をグリーンスライムの方に向け…
「エアスラッシャー!」
ズバッ!!
「うぉ!すごっ!」
哀れグリーンスライム君。フィゼさんの持つ杖から放たれた風の刃?で横一文字、真っ二つにされてしまった。
「ふふん。どうです、私の魔法は!」
得意げなフィゼさん可愛い。…というか魔法すげー!やっぱ俺も使いてぇー!
「凄いです!かっこいいです!」
「そ、そんなに褒めないでください。所詮下級魔法ですから…。」
「それでも凄いですよ!」
初めて魔法を見た俺は、もう興奮冷めやらない状態だ。しかも、魔物を真っ二つにした今の魔法が下級魔法?
これで下級ならもっと上の魔法は一体どんな威力なんだ…!?
「ヒュー!ブラボー!」
ぱちぱちぱちぱちぱち
俺の俺によるフィゼさん(とその魔法)に捧ぐ拍手喝采が鳴りやまないぜ。
「えへ…えへへ…。」
なにこの人めっちゃ可愛い。