6話 馬車と浪漫とクエスチョン
スキルについて、ざっとは把握できた感じかな。後はまぁ生活しながら少しずつ理解を深めていくしかないだろう。
そろそろフィゼさんも落ち着いてきただろうし、町への旅路を続けるとしよう。
さっきフィゼさんの言っていた【騎乗】のスキルとやらを俺が持っていれば、道中楽なんだが…一応、探してみるか…。
【スキルオープン】
そろそろこの一連の動作にも慣れてきたな、と。
えーと、騎乗…騎乗…あーもう!!多すぎてスキルひとつ探すのも一苦労だなチクショーめ!!
『ちなそのウインドウ、スキル名で検索できるわよ。』
『そういう説明は先に…いや、いいや。ありがとう。』
騎乗っと…おっ、ヒットした!
『…俺、馬なんて乗ったことないんだけど、なんでこの【騎乗】スキル持ってんの?』
『さぁ?馬に限らず、なにか乗り物に関する仕事でもやってたんじゃないの?』
『あー、一応バイク便とか運送とか、後は送迎のバイトもやってたことがある。』
『それじゃん?』
そうか、あくまで『騎乗』であって、『乗馬』のスキルではないわけだもんな。
「ぱっと見ただけでも便利そうなスキルがあんなに…私なんてほとんど…。」
おいおい、フィゼさん混乱通り越してちょっとナイーブになっちゃってるよ…。
「あのー、フィゼさん?」
「私なんて…私なんて…。」
「おーい、フィゼさーん?」
「あ、は、はい!なんでしょう?」
「さっき言ってた【騎乗】のスキルなんですが、どうやら俺持ってるみたいなので、馬車運転させてもらってもいいですか?」
「え!?【騎乗】お持ちなんですか!?」
「みたいです。ですのでよかったら俺が運転しますんで、フィゼさんはお隣か後ろの荷台に座ってゆっくりしててください。」
「ま、まぁあれだけの数のスキルがあれば【騎乗】ぐらい持っててもおかしくないですよね…。
それではすみませんが、隣に座らせてもらいますね。」
「はい。あ、道案内はよろしくお願いします。」
「心得ました。」
そんなこんなで、俺とフィゼさんは馬車に乗って移動を始めた。うーん、少し揺れるが、楽ちん楽ちん
「そういえば、馬車とか馬とかってこの【騎乗】スキルが無いと乗れない物なんですか?」
「そんなことないですよ。私がちょっと苦手なだけで【騎乗】のスキルが無くても乗ること自体は可能です。」
「あ、そうなんですか。」
「ただスキルを持っていると、懐いてない、懐きにくい動物や経験の浅い乗り物等でも制御しやすくなる、
そういった補助的なスキルになりますね。」
「なるほど。」
そういえば今俺普通に運転してるけど、馬車なんて完全に初見だもんな。
「ただ乗れないと言っても、これだけの荷物、流石に私一人じゃ運べませんからね。重宝してますよ。」
「確かに。」
「御者を雇えばいいのですが、お金がかかりますし…。盗賊や危険な魔物が出てくる地域なら
護衛も兼ねて雇わないわけにはいきませんが。」
「比較的安全な地域なんですね、この辺りって。」
「まぁ低級の魔物ぐらいなら出てきますけどね。そこまで危険なのは出てこないです。」
「げぇ、出てくるは出てくるのかぁ…。え、でもフィゼさんいつも一人なんですよね?危険なのでは?」
「ふふん。こう見えて私、持ってるスキルはその…少ないですけど、ちょっとした魔法なら使えるんです。
低級の魔物程度なら遅れを取りません。」
「おぉ!凄い!」
「ふふん!」
よしよし、フィゼさんのメンタルもリセットしたようで安心した。
…それにしても、魔法…魔法かぁ…。
『なぁエリザ。魔法ってのはスキルとはまた別物なのか?』
『そうね。魔法は魔力を消費して放つ物で、スキルとは異なるわ。自身の魔力だったり媒体を介して放ったりするわね。』
『それはその…俺でも使えるのか?』
『使いたいの?魔法。』
『そりゃ憧れはあるさ。魔法は男の…いや、全人類の浪漫だからな!』
『…残念ながら、貴方はほとんど魔力を持ってないわね。だって魔法の無い世界から転生してきたのだもの。』
くぅー!!スキルは盛られてたのに、そんなところだけリアルでシビアなんだから!!
『そうか…残念だ。』
『まぁ媒体を介した魔法ぐらいなら、ちょっとぐらい使えるんじゃない?強力なものは無理でしょうけど。』
「やったぜ!!!」
「えぁ!?!?」
あ、やべ。テンション上がって普通に声に出して叫んじまった。
『貴方そのうちその子に通報されるわよ。』
『気をつけます…。』
「?????」
あぁ、フィゼさんの頭上にクエスチョンマークが沢山見える…。