5話 女神様の楽しいスキル講座
『エリザ…ちょっと、エリザさん?』
『なによ。聞こえてるわよ。』
『話が違うんじゃないか?俺はチートみたいなスキルは欲しくないって言ったよな?』
『だから、チート級のスキルは与えてないわよ?』
『いや、数だよ数。フィゼさんめっちゃ驚いてるじゃん。』
むしろ驚きを通り越して、フィゼさんにドン引きされてる気がするんだが…。
『数に関してはしょうがないじゃない。貴方が前世で培ってきたものをこっちでスキル化しただけよ?』
『んなアホな。』
『こっちのセリフ。貴方一体、どれだけ前世で経験値積んできたのよ。』
俺はただ、若い頃からバイトに仕事に明け暮れた毎日を送っていただけだ。
そりゃやってきたバイトの数で言えば、誰にも負けない自負はあるが…。
『バイト三昧の毎日で、こんだけスキルってのが得られるものなのか?』
『知らないわよ。まぁせっかく転生したのにあんまりスキルがないと可哀そうだから、ちょびっと採点基準は甘めにしてたけど…
そんな睨まないでよ。ほんとにちょびっとだから。』
うぅむ…どうやらその”ちょびっと”とやらが悪さをしたのか?
とにかくスキルがモリモリなのは話が違うが、出鱈目なチートスキルは持ってないらしい。
『…こほん。スキルは大まかに分けて2種類。【常駐型スキル】と【発動型スキル】があるわ。』
唐突に女神様によるスキル講座が始まった。フィゼさんも混乱してるし、ちょうどいいかな。
できれば転生してくる前に済ませておいてくれると、もっと助かったんだが。
『ちなみに隣のフィゼって子に言葉が通じているのが【常駐型スキル】の【異言語理解】になるわね。
これは本当に無いと詰むからオマケしておいたわ。』
『助かる。』
言葉が通じなかったら転生生活を楽しむってレベルじゃないからな。
『【発動型スキル】に関しては、その名の通り発動することにより効果を発揮するスキルね。
さっきの【情報共有】なんかがまさにそれよ。』
『なるほどね。さっきと同じように念じることで発動できるのか?』
『基本はね。他にも条件が整った時にオートで発動するタイプのスキルもあるわ。』
『ほうほう。』
『今やってるこの会話がそれに近しいスキル【念話】ね。使えるのは同じ【念話】を持った相手同士に限るわ。』
あー、これもスキルだったのか。
『で、【発動型スキル】の中にも、生活系スキル・戦闘系スキル・職業系スキルなどなど…
本当に無数のスキルが存在するわね。ざっと見たところ、貴方は戦闘系スキルに関してはあまり持っていなかったわ。』
『わざわざ確認してくれたのか。』
『あまりにも莫大な数だったから、ざっとね…。それでもだいぶ時間がかかったわ。』
『あぁ、だからフォローに来るのが遅かったのか。』
『まぁね。さすがに転生させておいてほったらかしにはしないわよ。』
そういう理由ならまぁ仕方がないか。
『まぁ所持スキルの詳細な確認は後々自分でやってちょうだい。
さっきの【スキルオープン】から知りたいスキルを指で触ると細かい説明が出てくると思うわ。』
『重ね重ね便利なもんだ。』
『スキルは先天的なものから後天的なものまで存在するわ。習熟度によってランクが上がっていくスキルもあるわね。』
後天的…じゃあこれから先、もっとスキルが増える可能性もあるのか…。頭がパンクしそうだな。
『まぁ一口にスキルと言ってもピンキリよ。
ちょっと便利程度なものから、それこを持ってるだけで一流冒険者になれるスキルまで存在しているわ。』
『なるほどね。俺は後者みたいなスキルは流石に持ってないってことか。』
『そうなるわね。……多分。』
『多分て。』
『ない。と思うわ。』
まぁ数が多かったから、まだ確認しきれてないんだろうな…。とにかく話を聞いたうえで、改めてもう一回見てみるか。
えーと、【スキルオープン】
先ほどのように、クソデカウインドウが眼前に広がる。…ん?よく見たらこの莫大な文字、日本語じゃないのか…。
それでもまるで日本語を読むかのように理解できてるのが【異言語理解】というスキルの効果になるのか。
いや、このスキルなかったらマジで詰んでたな。『エリザもたまには気が利くってことだな。
『たまには?』
『いやいやいやなんでもないっすよ?』
『もう!』
やべぇ、名前出したのもあって意識が向こうにいってたか…。
今後は気を付けないとな。だってはじめてなんだもん、【念話】なんて。