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女神の不手際で異世界転生! 最弱な俺が目指す『一発逆転』サクセスロード  作者: おといち


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43話 オークスの悲劇ーー高すぎるその壁

騎士団の圧倒的な力を目の当たりにした野盗の下っ端達は、もう殆ど戦意を喪失している。

踏み出そうとはするが、鋭い視線に思わず足が後ずさる。

それもその筈だ。この僅かな時間で、二十人以上いた人数が三分の一にまで減ってしまったーー

対する騎士団は、無傷と言っていい。元より単純な数で圧せる相手ではなかったのだ。


「お前ら、なにしてやがる!攻撃の手を止めるんじゃねえ!」


大男が喝を飛ばすが、それももはや賊達の奮起には繋がらない。


「オークスの頭!あんな化け物の相手、俺達だけじゃ無理です!」

「そうです!頭も加勢してください!」

「なにィ!?」


オークスと呼ばれたその大男は、手下達に囃されるものの明らかに動揺が見て取れる。

奴自身、相手が悪すぎるということを痛感したのだろう。

いくつもの冷や汗がその額を伝う。


「ケヒヒ!どうしたァ?手下達がお呼びだぜ、お頭サン。…ひょっとしてビビっちまったのかァ?」

「グッ…!」

「あんだけ大口叩いておいてこのザマかァ!?なぁ、オークスサンよォ!!」


リドルが執拗に煽り立てる。一見軽い口調だが、その圧がオークスに突き刺さる。

リドルの圧だけではない。頭というその立場も、オークスに前進を強要する。

更なる冷や汗が額を覆う。


「オークス、退くことは許さん。ーーわかっているな?」


ギグスがトドメの追い打ちをかける。これは鼓舞ではない、脅しだ。

逃げる素振りを見せれば、命はないということだ。

その目と剣はオークスを冷たく見据えていた。

残された道は、ただ一つ。


「ク…クソったれがァァァ!!」


観念したオークスは、半ばヤケクソのように馬上から獲物を振りかざす。

手にした武器は、身の丈ほどもあろう大斧。それを馬上という高い位置から振るおうと言うのだ。

その破壊力は計り知れない。


「エドガー、下がれ」

「隊長!」


ガルドさんがエドガーさんを制し、迫りくるオークスの前に立ちはだかる。

小盾ではあの大斧を受け切れない。とはいえ、リーチも長剣以上だ。

しかしそれは、取り回しの良さはこちらに分があることを意味する。

初撃を捌くことができれば、反撃のチャンスは訪れる筈だ。


だがそんな俺の考えとは裏腹に、ガルドさんはその身を落として待ち構える。

その体勢は、迫りくる攻撃を”避けよう”としていない。

なにをする気だ?…まさか、あの大斧と真っ向から打ち合うつもりなのか!?


「ドラァァ!【ハードインパクト】!!」


大斧が巻き起こした風圧が、周囲の草を薙ぎ倒し波紋のように広がる。

その波紋は刃が風を切る音を伴い、遥か彼方まで届く。


ガキィィィィィン!!


重く、それでいて鋭い金属音が辺り一帯に響き渡り、その衝撃が体を震わせる。

俺は思わず目を逸らし、耳を塞いだ。


ーー数瞬の後、恐る恐る視線を戻す。体にはまだ、先ほどの衝撃の余韻が残っている。


「え!?」


その光景に、思わず声が漏れる。

そこには、オークスの一撃を完全に受け止め、尚余裕の表情を見せるガルドさんの姿があった。


「馬鹿な!?」


自らの渾身の一撃が防がれたオークスが、驚愕の声を上げる。

さしものオークスも、まさか今の攻撃を”受け止められる”とは思っていなかったのだろう。

ガルドさんはそのまま力を籠め、受け止めた大斧を勢いよく押し上げる。


「ハァッ!!」


ギャィィンという不協和音が響き、長剣はオークスの大斧を完全に弾き返した。


「どうした?力自慢のように見えたのだが、まさかこの程度なのか?」


汗一つ流さず、涼しい顔でそう言い放つ。

オークスとその手下は、もう完全にその強さに恐れをなしている。


「凄い!オズワルドさん、あれもスキルの力ですか!?」


興奮した俺は、隣にいるオズワルドさんに尋ねる。


「いえーーガルドさんの方は恐らく、シンプルに筋力ですね」

「シンプルに筋力!?」


恐ろしや、騎士団。恐ろしや、ガルドさん。

身体のスペックのみで、武器の質量の差をこれ程までに覆してしまうのか。

戦場は今、先ほどまでの喧騒が掻き消され、嘘のように静まり返っている。


ーー拝啓、エリザさん。俺、この世界で生きていく自信を日に日に失っていってます。

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