42話 激化する戦い。王国騎士団の真価
「だからこんな奴ら使いモンになんねェって言ったんだよ!
ーー喰らいなァ!ファイアーボール!!」
リドルが悪態を吐きながら右手を乱暴に払うと、その指にじゃらりと着けられた指輪が鈍く光る。
そしてソフトボールぐらいの大きさの火球が三つ、空中に生み出された。
その火球は少しの放物線を描きながら、騎士団へと飛来する。
「おっと!!」
エドガーさんが手にした氷の大盾で火球を受け止める。
しかし三つの火球は辛うじて防ぎ切ったものの、その代償として氷の壁を溶かされた大盾は本来の姿へと戻ってしまった。
「火魔法…厄介だな」
「ケヒヒ!自慢の盾も文字通り形無しってかァ!?おらよ、ファイアーボールのおかわりだぜェ!」
今度は左の手を払いながら、再度三つの火球を繰り出した。
ーー駄目だ!あの盾ではもう、火球全てを防ぎ切ることはできないぞ。
「させませんーーアイスニードル!!」
ラムレスさんの周囲の空気がしんと冷たさに満ち、宙に三つの氷の刃を生み出す。
生み出された刃は、火球を目掛け一直線に飛んでゆく。
そしてぶつかり合った氷の刃と火球は、パァン!という破裂音を伴って消滅した。
「チッ!!」
「賊ども、ぼさっとしとるんじゃない!盾は無くなったんだ、畳みかけろ!」
再びギグスの怒号が飛び、騎士団の強さに二の足を踏んでいた野盗達が若干の勢いを取り戻す。
自らを我武者羅に奮い立たせながら、前衛に構えるエドガーさんとガルドさんに次々と襲い掛かる。
「ラムレスさん、また盾を!」
俺はラムレスさんに向かってそう叫んだが、ラムレスさんは首を横に振る。
「先ほどの攻撃で、盾が熱を持ってしまっている…。今氷壁を張っても強度が落ちてしまいます!」
そんな…じゃあ今度はあの人数の攻撃を捌き切れないってことか!?
「盾が無くとも、お前ら如きに遅れは取らん!」
俺の不安を跳ね飛ばすかのように、エドガーさんが吼える。
大振りに振るわれた賊の剣をひらりと躱し、続けざまに斬りかかってきた二人目の剣を、こちらは残った小盾で防ぐ。
そしてそのまま手にしているショートソードで袈裟切りに討って取った。
躱された一人目の男は体勢を立て直し再度エドガーさんに斬りかかろうとするが、レイアさんの弓がそれを許さない。
剣を握った側の肩を射抜かれ、「グアァ」と悲鳴を上げたところでエドガーさんがトドメを刺す。
ガルドさんに襲い掛かった賊達はもっと悲惨だ。
荒々しい雄叫びを上げて斬りかかろうとしたものの、振り上げたその剣を振り下ろす事すら叶わなかった。
横薙ぎしたロングソードの刃は、一人、二人と斬った程度では一切そのスピードを落とすことなく
そのまま三人目の賊の体を切り裂いた。…たったの一振りで三人の賊の屍がいっちょ上がりである。
後方からリドルが援護射撃を試みるが、飛んでくるファイアーボールは悉くラムレスさんの氷の刃が防いでしまう。
「があァ!!めんどくせェ!!」
攻撃が成らないリドルが苛立ちを隠そうともせず吐き捨てる。
「…ギグス。そろそろ高みの見物は止めて、貴様自ら討って出たらどうなんだ?」
「……」
ガルドさんの問いかけに、ギグスは応えない。
ーーつ、強い!!いくら王国騎士団が強力だとはいっても、まさかここまで力の差があるとは思わなかった。




