41話 最強の騎士団と最弱の俺
野盗達は人数で圧倒的に勝っているせいか、薄ら笑いを浮かべながら向かってくる。
こちらとの距離はもう十数メートル程だろうか。
「ヒャッハー!俺が先陣を切るぜー!」
賊の一人がそんな威勢のいい声を上げながら、先頭のガルドさんへと襲い掛かる。
緊迫した状況なのに「リアルにヒャッハーとか言う人いるんだなぁ」と変な感心をしてしまった。
そんな異世界というよりは世紀末な彼は、ガルドさんの間合いに入ったその瞬間ーー
ザンッ!!
横薙ぎ一閃。正に一刀のもとに斬り伏せられてしまった。
「があぁッ!!」
「馬鹿者が!!なんのために頭数を揃えてきたと思っとるんだ!!」
「チッ!雑魚がサシで勝てる相手じゃねぇだろォがよ!」
ギグスが手にした剣を振り怒号を飛ばし、リドルがガシガシと頭をかきながら吐き捨てる。
どうやらランド兄弟とこいつらは、そこまで連携が取れているわけではないみたいだな。
「お前ら、まとまってかかれ!!」
傍らの大男の一喝で、賊達が一斉に向かってくる。
迎え撃つ騎士団は四人。…早々に一人倒したとはいえ、流石に多勢に無勢ではないのだろうか?
そんな俺の不安をよそに、騎士団は一歩も引かない。エドガーさんがガルドさんの前に立ち、
手にしている盾を構えて迎え撃つ態勢を取る。だが、その盾は片手持ちの小さな盾だ。
一対一の斬り合いならともかく、あの人数を相手にどうやって捌くつもりなのだろう。
「ラムレス!!」
「はい!ーー氷創”シールド”!」
エドガーさんの呼びかけに呼応したラムレスさんがそう唱えると
構えていた盾の周りにピキキと音を立てながら氷の壁が広がっていく。
「オラァ!!」
そんなことはお構いなしとばかりに、賊二人がエドガーさんに向かって一斉に斬りかかる。
しかし斬りかかったその刹那、先ほどまでその身を守るには頼りなかった筈の小盾が
人の丈ほどもある氷の大盾へと姿を変えていた。
ガキィイン!!
つんざくような音が鳴り響き、二つの刃を大盾が見事に受け止める。そしてーー
「【リパルジョン】!!」
受け止めた刃が、まるで磁石の反発のように弾かれる。その衝撃で賊二人も体勢を大きく崩す。
すかさずレイアさんが矢を弓につがえる。しかし、射線はエドガーさんの持つ大盾で塞がれているように見える。
斜め上空に向かって矢が二発、続けざまに放たれる。このままでは敵の遥か上空を越えてしまう軌道なのでは…?
「…ウインドブースト」
レイアさんが弓を構えたまま、無表情でぽつりと呟く。
すると放たれた二本の矢は、エドガーさんの頭上を通過した所で
勢いそのまま…いや、むしろ勢いを増した上でフォークボールのように急激に角度を落とす。
「グァッ!!」「ギェッ!!」
二つの悲鳴が同時に上がる。矢はそれぞれ、体勢を崩した賊二人を見事に貫いていた。
「流石の連携ですね。全く無駄がありません」
「す、凄い…!」
オズワルドさんが顎に手をやりながら感嘆の声を上げる。
サーシャさんはサーシャさんで、目をキラキラさせながらぱちぱちと拍手をしている。
この世界の人達はやっぱり強いや…俺?俺はめっちゃビビってます。早くおうちに帰らせて…。
ようやく入りたかった戦闘描写までこぎつけました。
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それでは、気が向いた時にでもまた読んでやってください!




